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東方夢幻録  作者: 桜梨沙
第三章 兄と友への哀歌《ラメント》 〜Lamento
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第四十七話 謎の医者

 空間の裂け目をくぐり霊夢たちは謎の場所にたどり着いた。どこかの屋敷の中だと言うことは全員が分かった。両側は壁になっており、屋敷の中は草や薬の独特の匂いが充満している。


「あ、そうそう、そこの智美って人、あなた達のお父さんは先に治療しているから安心しなさい」


 急に漢服の女は振り返る。


「本当か?」


 その言葉を聞いた智美は、安堵の表情を見せる。


「本当よ。しかし、あなた達、父親の事を少しぐらい気にして戦ってあげたらどうかしら?ほったらかしにされているお父さんが可哀そうだったわよ。それに、途中で死んでいたらどうするつもりだったのかしら

 ?」


「すまない。余裕がなかったんだ・・・・・・」


「でも、あなた達にとって大切な人なんでしょう?」


「・・・・・・」


 女に言われたことに智美は何も言い返すことが出来なかった。


「大切な人がいなくなって後悔するのはあなた達。あなたには守るということが出来るのだから、守ってやりなさい」


 先程まで特別何も感じなかった女の言葉だったが、その言葉だけは、どこか重たかった。まるで彼女自身が経験したかことがあるかのように。


「今後は気をつけることにするよ」


「その光輝って男にも言っておきなさい」


 そう言われると、智美は、霊夢の背中にいる光輝を見て、


「わかった。この馬鹿な弟にはちゃんと伝えておくよ」


 と、漢服の女に言葉を返した。


「さて、着いたわ。治療の必要な者をこの部屋で寝かせて頂戴」


 霊夢たちはレイ、智美、光輝をベットに寝かせる。


「リコ、あなたは寝なくていいの?」


「私は一撃受けただけだし・・・・・・」


「攻撃を受けたなら治療を受けるべきよ。あの女がどういう意図で治療してくれるのかはわからないけど、してもらえるうちにしてもらうべきじゃない?」


「・・・・・・わかりました」


 霊夢の言葉で、ベットの上に座り込むリコ。


「お話は終わったかしら。じゃあ、治療の必要ない人は私についてきなさい」


 女は部屋を後にする。それに続いて霊夢たちも部屋を出た。


「あなたは大丈夫なの博霊の巫女さん?」


 廊下を歩いていると急ん女が話かけてきた。


「私は何ともないわ。レイ(あいつ)が待ってくれた舞のおかげでね」


「・・・・・・そう」


 霊夢の答えを聞いた女は一言そう言った。


「ねぇ、あなたは何者なの?私たちを助けてくれたけど、どうして?」


「別にいいじゃない、何者だって。気にすることはないわ」


「聞き方を変えるわ。私達を助けた目的は何?」


「別に彼と一緒に居たから。それだけよ」


「あんた、紫と似てるわ。そのはぐらかし方」


「あらそうなの?」


「えぇ、いかにも何かを隠しているような言い方」


「でも、別に理由なんてないのよ、本当に。あなた達を助けたのは単なるついで。彼と貴女達が行動を共にしていなかったら、確実に見殺しにしてたわ」


「・・・・・・」


「何なら今殺してあげてもいいけど」


「ふんっ、やれるもんならやってみ・・・・・・」


 霊夢が女に挑発を仕掛けた瞬間、二人は嫌なものを感じ取った。その時、女は霊夢の目の前にいた。霊夢の首には冷たい刃がぴったりをくっつけられている。


「あまり、軽はずみな言動はしない事ね、博霊の巫女。いつかその身を滅ぼしかねないわよ」


 彼女の放った殺気は恐ろしかった。先ほど戦った新島よりも強い殺気だったかもしれない。


「殺合ではあなたより私の方が腕はあるわ。白兵戦に慣れていないあなたとの力量と私の力量とでは月とすっぽんって所かしら」


 女は霊夢の首に当てた短剣を下ろす。そして再び、霊夢たちの前を歩き始めた。


「・・・・・・」


 霊夢はすっぽんと言われたことが気にくわなかったのか、唇をかむ。


「霊夢さん・・・・・・」


 そんな霊夢にさとりは何の言葉もかけてやれなかった。



 そのまま三人は屋敷の廊下を歩き続け、一つの部屋に案内された。そこには四つの椅子とラジャの張られた机がある。その机には何かが四か所にまとまって積まれていた。


「さて、あなた達には治療費を払ってもらわなくちゃね」


「はぁ?」


 霊夢たちには女が言っていることが分からなかった。


「治療費も何も、私たちは何もしてもらっていないじゃない」


「ここにいるあなた達は何もしてもらってないかもね。でも彼は治療したわ」


「はぁ?・・・・・・まさか、わたしたちからあいつらの治療費をふんだくろうって気⁉」


「全額とは言わないわ。少しだけよ。流石に彼だけに払わせるのはちょっと気が引けるのよね」


「でも、怪我したのは・・・・・・」


「先にあなたがクロインを倒しておけばよかったんじゃないのかしら、博霊の巫女さん。そうすれば彼が怪我することはなかったのだから。大体幻想郷の平和を守るのが博霊の巫女の役目。それなのにあなたが先にやられて、彼が倒したのに、彼の治療費を払わないってのもおかしいと思わない?」


「でも、それはあいつが勝手に・・・・・・」


「勝手にしたことでも、彼が幻想郷の平和を一時的に守ったことには変わりないでしょう?」


「・・・・・・」


 女に何も言い返せない霊夢。


「まぁ、あなた達からはあんまり取らないから安心しなさい」


「・・・・・・いくらよ・・・・・・」


「そうね・・・・・・大半は彼に支払わせるからいいんだけど、五百万ずつって所かしら」


「そんなの無理に決まっているじゃない」


「あら、彼に比べたらましよ。彼には九千万ふかっけるつもりだから」


「きゅ、九千万?」


「えぇ、まず彼の治療費で五千万、あの少女の治療で一千万、そしてあの姉弟の二人合わせて四千万。本当は一億だけれども、あなた達が一千万払うから、計九千万よ。それに比べたら安いでしょう?」


「いくらなんでも・・・・・・」


「私のやり方に口を出すのかしら?いい私だって遊びでこの仕事をしているわけじゃないし、慈善団体の一員でもないの。私はね、仕事はちゃんとするわ。それに見合った対価というものが必要なのよ」


「・・・・・・」


「まぁ、でも、それじゃ、ちょっと詐欺師っぽいから、一つチャンスをあげるわ」


「チャンス?」


「えぇ、そこに雀卓が置いてあるわよね?」


「あの机かしら?」


 霊夢が指を指す。


「そうよ。麻雀でどちらかが条件を満たせば、治療費はチャラでいいわ」


「あいつにも同じことするわけ?」


「いいえ、流石に九千万はチャラには出来ないわね。大体、彼を相手にして()ったら話にならないんだもの」


「・・・・・・やるなら、ちゃっちゃとやりましょう。長引くのはごめんだわ」


 霊夢はおいてあった椅子の一つに腰かける。


「そうね。でも、ルールはお分かり?」


「少しは分かります。昔、こいしとお燐とお空でやったことがありますから。霊夢さんは大丈夫ですか?」


「やっとけば何とかなるでしょ」


「あら、そう。それじゃあ説明はしなくていいわね」


 女は霊夢の正面に座る。さとりは霊夢の右隣に座った。


「三人でやるの?椅子、もう一つあるけど」


「もうすぐ来るわ」


「お待たせしてすみません」


 少し時間が経った後、雲雀と呼ばれていた少女が部屋に入って、空いていた椅子に腰かけた。


「四人でするなんて何時ぶりかしら・・・・・・確か最後にしたのは・・・・・・」


「五百年前でしたよね。もうその話は何度もうかがっています」


「そう!楽しかったわよ。あの緊迫した中での麻雀は。ほんとに汗握る戦いで」


「四人、皆が譲らぬ戦いだったんですよね。それも何度もお聞きしています」


 雲雀は女の扱いに慣れているようで、女の気を悪くしないように話を聞き流していた。


「さぁ、始めましょうか。今回は持ち点は30000点でしましょう」


 女の合図でゲームが始まる。部屋には静寂が訪れた。牌をきる音だけが部屋にこだましている。


「ねぇ、さっき言ってた条件って何なのよ?」


 霊夢が女を睨みながら言う。


「あぁ、それは簡単よ。あなた達が私から一万点取ればいいだけ。でも・・・・・・」


「でも?」


「あなた達は私から25000点ずつ取られたら負け。二人合わせたら、五万点ね。そんなに悪い条件だとは思わないけれど、どうかしら?」


「リーチ」


 雲雀の声が部屋にこだまする。


「ねぇ、10000点ってどうすれば取れるのよ?」


「そんなに難しくないわよ」


「師匠、ロンです。立直、混一色、平和、ドラ。跳満、18000点です」


「あら、今日も速いわね」


 雲雀が言った言葉に驚く霊夢とさとり。


「ねぇ、10000点ってそんなに・・・・・・」


 霊夢は思わず女に聞いた。その質問に女は落ち着いた声で答える。


「高い点数ではないわ。初心者でも何回か上がればできると思うけど・・・・・・」


 牌をかき混ぜながら女は言う。


「さて、親は誰だっけ?」


「私です」


「あらそうだったわね」


 親の確認が終わると、また四人は牌をきり始める。緊迫した空気が辺りには漂っていた。


「リーチ」


 今度は霊夢が立直をかける。


「それよ、ロン」


 雲雀のきった牌で霊夢が牌を倒す。それを見た三人は驚いていた。


「まぁ、驚いた」


 霊夢の牌、それはさっき上がった雲雀を全く同じ牌だったのだ。


「これ、跳満とか言う奴なんでしょう?」


「えぇ、12000点ね」


 雲雀は点棒を霊夢に渡す。


「なんでこいつより点数が低いのよ」


「あぁ、それはね、あなたは今、子の上がったからよ。さっき雲雀は自分が親の時に上がった」


「だから、なんだっていうのよ」


「親の時に上がれば、点数は子の1.5倍。だから雲雀はあなたの1.5倍の18000点なのよ」


「ふーん、まぁ、別にどうでもいいわ。でも、どうせならあんたから点数をもらいたかったんだけど」


「それは残念ね。まぁ、まだゲームは続くから、私に放銃出来ることを祈っているわ。さて、お次はあなたが親よ」


 牌を掻き混ぜて四人が再び積む。そして再び牌を積む音だけが部屋に響く。


「ロン」


 さとりが女のきった牌に放銃をした。


「混一色、中、南。満貫、8000点です」


「あら、やるわね」


「よくやったわ、さとり」


 笑みと安堵の表情を浮かべる霊夢。しかし、牌を掻き混ぜている時、さとりの口角は上がっていなかった。


「あと、2000点だからって油断はいけませんよ、霊夢さん。麻雀はどんなに持ち点が低くても逆転できるのですから」


 さとりが牌をきる。それと同時に女が口を開いた。


「確かに油断は禁物よ」


「別に良いじゃない」


「そんなのだから殺合でも冷静に対処できないんじゃないのかしら?」


 そう言いながら手牌を倒す女。


「ロンよ、覚り妖怪さん。清一色、対々和、ドラは・・・裏ものってドラ5。数え役満32000点」


「くっ・・・・・・すみません、霊夢さん」


 さとりは不承不承と点棒を女に渡す。


「さて、親は私ね」


 女は不適な笑みを浮かべる。


「さて、次はあなたの番かしら」


 霊夢の方を見つめる女。


「そう簡単にはやられるもんですか」


「せいぜい頑張りなさい」


 女が牌をきる。


「あと、覚り妖怪さん。能力使っても勝てないわよ。博霊の巫女と雲雀の出す牌が分かっても、私の出すはいが分からないのだから」


「知ってたんですね・・・・・・」


「当たり前じゃない、あんなに的確に安牌きってるんだから。相手の待ちを読める人間は、長い間牌に触っていた人間。触っていても読めないことだってあるわ。ましてや、少し打っただけの人間が出来るような芸当ではないもの。さっきのはそれのペナルティーみたいなものよ」


「あなたも私と同じことをしているんじゃないですか?」


「さぁ、それはどうかしらね・・・・・・」


 さとりの質問の答をうやむやにして霊夢のきった牌で、手牌を倒す。


「ロン。清一色、ドラ3。倍直よ博霊の巫女。24000点」


「なっ・・・・・・」


 霊夢まであとが無くなってしまった。その時、


 ビービービー!!


 部屋中に警告音が響き渡る。


「どうやら、侵入者がいるみたいね。四人で打てなくなるのは残念だけれど、対処をお願いできるかしら、雲雀?」


「分かりました。では、ここで失礼します」


 壁に立てかけて置いてあった刀を持って雲雀は部屋を出て行った。


「この勝負どうするのよ?」


「心配無用よ。少し待てば、入ってくれる人が来るわ」


「・・・・・・」




 気がつけば、ベッドの上にいた。真上には見覚えのある天井がある。


(ここは・・・・・・)


 だんだんと意識がはっきりしてくる。


「雲雀がいた場所?」


 恐らく、そうだろう。部屋の中には見覚えのあるものがある。


「あ、起きたんだね」


 半身を起こすと、隣のベッドにいたリコが声をかけててきた。


「あぁ、まあな」


「傷の方は大丈夫なの?大分新島にやられて怪我してたけど・・・・・・」


 リコに言われて、怪我したことを思い出す。怪我の確認をしようと身体の至るところを触ってみたが、傷らしき者は無かった。


(傷が消えてる・・・・・・)


 新島との戦闘時の記憶は曖昧だが、怪我を受けたのは確かだ。


「大丈夫だ。今はあの時の痛みが嘘のように痛くない」


(確かに、あの時、激痛と大量の出血をしたはずだ。。。。。。なのにどうしてだ?)


 少しの間考えたものの答えは出なかった。


「とりあえず、雲雀とあの女を探しに行くか」


 ベッドから立ち上がり、背伸びをする。


「どこか行くの?それなら私も行く」


 リコもベッドから立ち上がった。


「寝てなくて良いのか?ここにいるってことはあの女の患者ってことだろう?患者は黙って寝ていた方がいいんだよ」


「そしたらレイも寝とかないといけない」


「自分は良いんだよ、大人だからな。お前さんも早く怪我を治しな」


 リコの頭を撫で、リコが寝ていたベッドに戻す。リコは不満そうな顔をしていたものの、自分の言うことを聞いて、ベッドで寝た。


(さて、前行った場所はどこだったっけ・・・・・・)


 廊下に出る。廊下には以前と同様にたくさんの障子があった。


(片っ端から開けるか・・・・・・)


 そう思い立つと、以前と同じように一つ一つの障子に手をかけて行った。


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