第四十五話 VS城ヶ崎智美
屋敷の中では霊夢と智美が激しい戦いを繰り広げていた。
「貴方なかなかやるわね」
「あんたこそ、なかなかやるじゃないか」
霊夢のお払い棒と智美の拳が何度も何度もぶつかり合う。
(何なのこいつ、素手てここまで私とやり合うなんて。それに息一つ乱してない・・・・・・何者なの)
「だが、少し勢いが弱くなっているんじゃないのかい!」
智美の重い一撃がお払い棒に直撃し、身体が吹き飛ばされる。
ズドーン!
大きな音をたて、霊夢の身体は襖を何枚も貫いていった。
「あぁー、ちょっとやりすぎたか?死んじゃいないだろうかね・・・・・・今からって所なのに・・・・・・」
智美はゆっくりと霊夢の方へと近づいていく。
「くっ・・・・・・」
流石の霊夢もあの一撃には応えた様で、立ち上がるまでに少しの時間を要した。
「何なのよ、こいつ・・・・・・」
この力は明らかに人間のものではない。
「あんた、本当に人間?」
霊夢は智美に皮肉を込めて言う。
「あいにくだが、私は正真正銘の人間さ。ただ、少し喧嘩が好きなね」
(好きで、ここまでの力を有するなんてね・・・・・・とんだ化物じゃない)
「さて、もう一撃追撃といこうか」
智美は拳を振りかぶる。
(弾幕の使ってこない人間にスペルを使うのは少し気が引けるけど・・・・・そんなこと言ってるだんじゃないわね)
「夢符 二重結界!!」
霊夢の目の前に結界が現れる。智美の拳は結界に勢いよくぶつかった。
「っ・・・・・・なんだこれは・・・・・・?」
智美も少し驚いているようだ。手に痛みが走ったのか、手を何度も振っている。
(流石に、結界は壊せないようね・・・・・・)
「壁みたいなものに当たったんだが、あんたのせいかい?」
「えぇ、ちょっと本気を出させてもらったわ」
「へぇ・・・・・・そうかい」
智美はそう言うとニヤリと笑った。
「それなら、あたしも本気を出さなきゃね」
智美は霊夢と間をとる。そして部屋に飾ってあった薙刀を手に取った。
「とりあえず、外に出てもらおうか!!」
智美は大きな声でそう言うと、霊夢との間合いを一瞬で詰め、霊夢を部屋の外に薙ぎ払った。
「ガハッ・・・・・・」
ドゴォーン‼
大きな物音を立てて霊夢は外に投げ出される。そして体は何度もボールの様に地面の上をはねる。
「立てないとは言わないよな?」
智美は屋敷から降り、ゆっくりと近づいてくる。その間も霊夢は立てないでいた。
(威力が・・・・・・さっきと・・・・・・段違いすぎ・・・・・・)
拳でもあれだけ強かったのだ、それに加えてあのリーチから繰り出される攻撃となると段違いなのもおかしくはない。
「あらあら、立てないのかい?」
智美の攻撃範囲に霊夢が入る。
「まぁ、それだからって手を抜くつもりはないがね!!」
智美が霊夢との間を一気に詰める。そして薙刀の先を霊夢と地面の間に滑り込まさせる。
(‼まさか・・・・・・)
「そぉれッ!」
智美は霊夢を放り投げるように薙刀を振る。霊夢の身体は宙に浮いた。
「それで終わりと思うな!」
智美は霊夢の所まで勢いよく飛びあがってくる。
(しまった・・・・・・‼)
身体が言うことを聞かない以上空中ではなす術はない。
「耐えてくれよ!」
「冥斬封!」
智美は霊夢の身体を斬り刻む。
「もういっちょ!」
そして最後に霊夢の身体を地面に叩きつける。
「ざっとこんなもんか」
「・・・・・・」
(身体が・・・・・・言う事・・・を・・・聞け・・・・・・ば・・・・・・)
意識もだんだん遠くなっていく。
「安心しな、すぐに楽にしてやる」
「・・・・・・」
もう、霊夢は声を出すことすらままならない。
「こいつで終いだ!」
「月下双爛!」
智美の薙刀が霊夢に向かって放たれた。
少し時間は遡る。智美と霊夢が戦っている間、屋敷の別のところでは、三人の人物が屋敷の中を駆け回っていた。
「なぁ、光輝。その智美ってやつはそんなにやばい奴なのか?」
「あぁ、俺の姉だ。組の中では俺と一位を争う強さを持っている。いや、下手すればあいつの方が上かもしれない」
「そいつぁ・・・・・・」
(やばくないか・・・・・・?光輝よりも強いって、自分じゃ対処しきれないぞ)
「だから、急いでいるんだ。博霊の巫女がやられる前につけるように」
「その言い方、霊夢さんが負けるとでも言いたいようですね」
「あぁ、そう言いたいんだ。智美の武器は薙刀、博霊の巫女のお払い棒なんかよりのリーチが長い。そのうえ智美は喧嘩好きだ。薙刀じゃなくても強い。悪いことに博霊の巫女は自らの力を過信し過ぎている。武器相手の智美に最初から妖術を使うことはないだろう。だから、やられるって言っているんだ」
「・・・・・・」
光輝の言葉にさとりも何も言い返せないようだ。
(確かに、霊夢は少し自信過剰なところもあるが、実力も相当あるはずだ。光輝と戦った時だって疲れていたと言うし、負けることはないと思うんだが・・・・・・)
「兄者も負けないと思っているだろう?」
「よくわかったな・・・・・・」
「補足としていっておこう。彼女が強いのは武器を用いた戦いではない。妖術のようなものを用いた戦いだ。武器を用いた戦いに関しては俺らの方が場数を踏んでいる。ましてや兄者なんかは俺よりも場数を踏んでいるだろうよ・・・・・・」
「自分が?それは無いと思うぞ・・・・・・?目覚めたのもつい最近だし、戦いだっていつも逃げ腰だぜ?」
「匂いだ」
「匂い?」
思いがけない単語が出て来た。
「兄者には殺しをやってきた人間特有の匂いがするんだ。兄者も言われたことはないか?」
「なんだそれ、気持ち悪いな・・・・・・さとり、自分はそんなにおいするのか?」
「別に、地霊殿の時もあなたからも変な匂いはしませんし・・・・・・今もしませんよ」
「兄者、そう言う匂いではない。まぁ、何度も場数を踏んでると分かるようになる匂いのことだ。小娘は死合はあまりしたことがないだろう?」
「確かにありません。ていうか、私は小娘ではありません。私には古明地さとりという名前がありますし、姿もこのようなものですが、あなたよりも年上ですよ」
「そんなことはどうでもいい」
きっぱりと光輝が答える。その一言にむかついたのかさとりは文句を言ってきた。
「いいえ、あなたにとってはどうでもいかもしれませんが私にとってはどうでもいいことではありません。大体ですよ最初に会った時から・・・・・・」
「で、兄者そこの所どうなんだ?」
それを遮って光輝が質問してくる。
「ちょっと思い出してみる」
(・・・・・・そう言えば神奈子と戦った時にそんなこと言われたな・・・・・・)
{あんたからは戦場特有の匂いがする・・・・・・血と、鉄と、絶望と、死の匂いだ。}
神奈子の言葉を思い出す。
「一回だけあるな・・・・・・」
「そいつはかなりの手練れだっただろう?」
「まぁ、そうだな」
(諏訪子があいつ昔は軍神だったとか言ってたしな・・・・・・)
「兄者の匂いはかなり強い。手練れでも恐ろしいレベルのものだ。でも戦っている最初は何ともない。最初は」
「最初は?」
「そうだ。途中から兄者の動きは途中から恐ろしくなる。急にだ。さっきまでは何とも無かったのに、何とも無い動きで背中に悪寒が走る。何となく動きも制限されていつも通りに動けなくなるんだ。」
「そうなのか?」
思わずさとりに聞いてみる。
「そうなのかって、私に聞かれたって分かるわけないじゃないですか。私はあなたと戦ったことがないんですから」
「そういえばそうだったな」
「でも、戦ったことがある人が言うんですから、そうなんじゃないですか。てか、あなたも一回戦っただけでよく分かりますね。」
「観察は得意な方なんだ。特に戦いにおいてはな」
「・・・・・・へぇ・・・・・・そうですか」
ドゴォーン‼
轟音
が屋敷一帯に響き渡る。
「この音・・・・・・どうやら智美が本気を出したようだな・・・・・・」
「なんだか、やばい気がするんだが・・・・・・」
「気がするんじゃない、兄者。危ない状況にあるんだ」
「これは急いだほうがよさそうですね。私も霊夢さんのことが少し心配になってきました」
「急ぐぞ兄者。まだ博霊の巫女には死なせるわけにはいかない」
「さっきまでさんざん霊夢さんの悪口を言ってたくせによく言えますね」
「あいつには本気で戦ってもらってないからな。幻想郷最強と謳われる者の本気がどのようなものか知りたいんでな」
「何でもいい。とりあえず二人とも霊夢の所に急ぐぞ!」
「応!!」
光輝を先頭に自分達は音の聞こえた方へと走る。
「いた!おいおい、ちょっとやばいんじゃないか?」
霊夢は地面に倒れていて動く気配はない。その近くには薙刀を持った女が白刃を霊夢に向けていた。
「どうするんですか?ここからじゃ間に合わないですよ!」
「そんなことを説明する暇はない!!」
光輝は刀に手をかける。
「疾風迅雷!!」」
疾風の如く光輝は女まで駆ける。
「こいつで終いだ!!」
「月下双爛!!」
ガキィーン!!!
金属同士がぶつかり合う嫌な音が響く。
「・・・・・・とんだ邪魔が入ったね」
「兄者!博麗の巫女を!」
「分かった!!」
急いで霊夢のもとにかける。かなりの重症だが、まだ息はあるらしい。
「こいつでどうだ!!」
回復扇舞を霊夢に舞う。
「あんた、自分が何してんのか分かってんのかい?」
「無論だ」
「こいつは組への反逆ってにみられる行為にだぞ・・・・・・?」
「生憎だが光という男は死んだ。今ここにいるのは光輝という男だ」
「へぇ〜、そうかい。なんなら手加減成してぶっ潰しても構わないってことか。そいつはいい」
女は不適な笑みを浮かべ、薙刀を握り直す。
「全員あの世に送ってやるよ!!」
女が光輝をなぎ払う。
「くっ・・・・・・」
光輝も攻撃を受け止めはしたものの、数メートル後ろにいた自分達のもとまでさげられていた。
「大丈夫か、光輝!?」
「俺に構うな、兄者。あんたは別の用で来ているんだろう?智美は俺が何としてでも食い止める。その間に兄者は少女を探して来てくれ」
「しかし・・・・・・」
「行くんだ!!」
光輝の大きな声に驚き、身体が震える。
「ここは言う通りにしましょう」
「さとり・・・・・・」
「少しの間、隙を作る。そのうちに博麗の巫女を連れて屋敷へ」
「分かった」
「光輝さん。私も弾幕で少し援護させていただきます」
「すまない」
「では」
「想起 二重黒死蝶!!」
さとりから大量の弾幕が放たれる。
「!!なんだい、これは!!」
「いくぞ!!雷神牙!!」
光輝は弾幕を綺麗に避け、智美に攻撃を仕掛ける。
「さぁ、今のうちです!!」
さとりに手を引かれ光輝の元を後にした。
(死ぬなよ・・・・・・)
「一匹狼だったあんたにも信頼する仲間が出来るとはね。あんたも少しは成長したってわけか。弟の成長は早いもんだね。だが、まだまだ甘い!」
「くっ・・・・・・これでもダメか・・・・・・」
「武器のリーチの時点で勝てないんだよ、お前は」
智美の言葉を聞き、光輝は笑みをこぼす。
「ふん、もとより勝とうなど思っていない!!」
その声とともに再び智美との間を詰める。
「雷釘斬!!」
ドゴォーン!!
『!!』
それを遮るかのように、轟音が響き渡り、二人を砂埃が覆う。
「なんだこれは!!」
思いがけないことだったため、二人とも驚く。その砂埃が晴れたとき二人は目を疑った。
『親父!!』
庭に倒れていた人物それは彼らの父、虎之介だった。
「親父!なんでこんなに!」
光輝はすぐにかけより、虎之介の安否を確認する。
「光か・・・・・・逃げろ・・・・・・お前じゃ・・・・・・あいつには勝てん・・・・・・」
「あいつって、誰だよ!!」
「おやおや、三人全員お揃いで、捜す手間が省けましたよ」
屋敷の方から声がする。
「新島、てめぇ!!」
智美が新島に襲いかかる。
「感情で動くとやられますよ!」
「がはっ・・・・・・」
新島は智美の薙刀を避け、智美の鳩尾に一撃を加える。
「ちょっと油断していたみたいだ・・・・・・」
少しふらつきはしたものの、智美が倒れることはなかった。
「流石ですね。私の反撃を喰らっても倒れないとは、やはり不死身の虎の血は受け継がれる者なんですね」
「貴様、こんなことしてただで済むと思うなよ!!」
「のぞむところです」
「リコを捜すといったって、闇雲に捜してたらきりがないぞ」
「そうだとしてもそれ以外に方法はありませんが・・・・・・」
(光輝の為にも早く見つけたいところだが・・・・・・)
「いや、捜す必要は無かったようですよ」
さとりは部屋の角を指差す。そこには小さく縮こまったリコの姿があった。
「リコ!!」
霊夢を畳の寝かせ、リコに近寄ろうとする。しかし、それをさとりの手が遮った。
「ちょっと危険な状態にあるようですよ・・・・・・」
「ど、どういうことだよ・・・・・・」
「心のほとんどを閉ざしているようです。読めた部分も絶望に満ちあふれています」
「つまり?」
「彼女は生きることに希望を見出だせていません。彼女は自分が再び暴走し、誰かを傷つけることをひどく恐れており、そんなことになるくらいなら死を、と思っているようですよ」
「・・・・・・」
(こんな時に自分は・・・・・・)
どうするべきだろうか。どうすれば彼女の恐怖を拭うことが出来るだろうか。その時、身体は答えが出る前に動いた。リコの身体を自分の身体の近くに引き寄せる。
「えつ・・・・・・」
あまりにも急だったリコも驚いているようだ。
「や、やめて!!そうしないと、あなたが・・・・・・」
自分の腕から離れようとする。
「あなたが、何だ?」
「あなたが、あなたが傷付いてしまう!!」
「なぁに、傷付いたところで何だっていうんだ」
「えっ?」
「お前さんに傷つけられたってなんともねぇよ。大体傷つけられたって何だっていうんだ。自分はお前を恐れをしないし、別に差別もしない。お前さんはお前さんのままでいればいいんだよ」
「で、でも、私はまた暴走して誰かを傷つけてしまう!!」
「そんときゃそん時さ。そうなったら自分がなんとかしてやる」
「・・・・・・」
(おや・・・・・・心の扉が開かれているようですね・・・・・・)
「死にたいとか思うな。いいな、これは自分との約束だ、ほれ」
右手の小指をリコの前に差し出す。
「ほら、早く。指切りだ」
リコはゆっくりと小指を結ぶ。
『指切りげんまん、嘘付いたら針千本飲〜ます。指切った!』
「約束だぞ」
「うん!」
リコの顔には笑顔が戻っていた。
(やはり、この子には笑顔が一番似合ってるな)
{あなたは暴走した私が怖くないのですか?}
{どうして怖がる必要がある?怖がったところで何だってんだ}
{でも、いつか私はあなたを傷つけてしまう}
{お前の攻撃なんかへでもねぇよ。仮にお前が暴走しても俺が正気に戻してやるよ}
{そう・・・・・・ですか・・・・・・}
昔の記憶だろうか。昔にもこんなことがあったのかも知れない。
「凄いですね。まさか、抱き着くとは思いもしませんでしたが・・・・・・」
「まぁな・・・・・・」
さとりが自分の背中からひょっこりと顔を出す。
「!!」
自分以外の人がいることに気づいていなかったのか、さとりを目にしたリコは顔を真っ赤に染め、再び、部屋の角に縮こまってしまった。
「あらあら・・・・・・」
「どうしたんだ、リコ?」
しかし、リコからの返答はない。
(ん?・・・・・・何かリコの頭から湯気が出ているような・・・・・・)
不思議に思ったものの口に出すのはやめた。それを見ていたさとりが自分の方を見てため息をつく。
(この人、乙女心が全くわかっていないようですね。まぁ、この人のおかげで目的は達成されましたし、よかったんですけど・・・・・・ていうか、自分で解決できるなら私は必要なかったのでは?・・・・・・いまさらどうでもいいですが・・・・・・)
「さて、急いで、戻りましょうか」
「そうだな」
「う、う〜ん」
霊夢が目を覚まし、身体を起こす。
「ここは?ていうかあの女は!!」
霊夢は智美を捜そうと部屋から出ようとする。
「霊夢さん少し落ち着いてください。あなたの戦っていた人なら光輝さんが戦っています」
「どこで?」
「今は、外です」
「なら、今すぐに・・・・・・」
霊夢が外に出ようと襖に手をかけたとき、霊夢は腹を押さえて、膝を折った。
「イッタタ・・・・・・」
「無理しないでください!霊夢さんは先程まで致命傷を追っていたんですから」
「でも、レイがあの舞を舞ったんでしょう?」
「霊夢、あれは応急処置に近いものだ。傷は消えても、痛みは少し残る。無理するとその痛み増すぞ?」
「ふん、これぐらい何ともないわよ」
霊夢は立ち上がり、外に出た。
「追いましょうか」
「あぁ、あいつは無理をするだろうしな」
「待って!!」
リコが二人を呼び止める。
「私も戦う」
「戦うって言ったって、武器が・・・・・・」
「武器ならある」
そういうと、地面に手をかざす。すると、地面に紫のスキマのようなものが広がり、その中からあの紅い裁ち鋏が出て来た。
「私も役に立ちたい!!」
「ですが・・・・・・」
「さとり」
「レイさん・・・・・・」
「リコ、ついて来い!」
「うん!!」
リコは元気のよい返事で自分の後を続くように部屋を出た。
「はぁ・・・・・・どうなっても知りませんよ」
溜息を付きながら、さとりが自分達に続いて部屋から出た。




