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東方夢幻録  作者: 桜梨沙
第三章 兄と友への哀歌《ラメント》 〜Lamento
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四十三話 博麗神社で出会った男

 紫と別れた霊夢は博霊神社に戻ってきていた。


「もう、あいつも面倒くさいことをしてくれるわね」


 文句をこぼしながら石畳の参道を歩く。


「・・・・・・!!」


 本殿の方を向いたとき、人影があることに気付く。年のころは20歳ぐらいだろう。とても痩せている。悪い意味で痩せているんじゃ無い。無駄な肉が無いのだ。その人物の右手には光を反射するものが握られている。


「貴方、何の用なのかしら?」


「あんたが博霊の巫女か」


 霊夢の声に気付いた男は霊夢の方を向く。


「そうよ。依頼って訳じゃなさそうね」


 金髪で顔には痛々しい傷がある。恐らく先程戦ったやくざの仲間であろう。


(こいつ以外には誰も居なさそうね・・・・・・単騎で突っ込んで来るなんでそれだけ腕に自信が有るのか・・・・・・それともただの馬鹿なのかしら?)


「もちろんだ!!」


 男は声とともに霊夢の懐に入り込んで来る。


「!!?」


(速い!!)


 なんとか紙一重の所でお祓い棒を滑り込ませる。


「ふん、なかなかやるじゃないの」


「お前もな」


 互いに距離を取る。


(昨日の奴らとは比べものにならないわね。少し手慣れってことかしら)


 懐からお札を取りだす。


「封魔針!!」


 霊夢から無数の針が放たれた。


「!!?」


 男はそれに一瞬驚いたが、すぐにそれを避ける。


「妖術の類か。しかし、そんなもの俺には効かん!!」


 男は一気に間合いを詰めてくる。勢いが乗ったその一撃は先程のものよりも重かった。


「くっ!!?」


 霊夢はそれをお払い棒でうまく受け流す。


(一旦、空に・・・・・・)


 体勢を整えるために一度、空を飛ぶ。


「それも妖術の類か、しかし、そんなことをしたところで俺からは逃れられんぞ!」


 男はそう言うと地面を力いっぱい蹴る。


「!!?」


 霊夢が驚くのも無理はない。地上から五メートル以上はあっただろう。普通の人間なら跳ぶことが出来ない高さだ。しかし、男は霊夢と同じ高さ、いや、霊夢以上の高さまで軽々と飛びあがってきた。


(本当に何者なのかしら、こいつ!!?)


「これで終いだ!!」


「迅雷風烈!!」


 男の刀は雷を帯び、霊夢の頭上から強力な一撃が放たれる。霊夢はお払い棒で防ごうとしたものの、その一撃の威力は先程のものと比べ物にならないほど強力で、大きな音をたてて身体は地面に叩きつけられた。



 そんなことが起こっている中、こいしと蓬莱と共にさとりと合流した自分は博霊神社の長い階段を上っていた。


「そう言えば、あなたが治したい知人の名前を聞いていませんでしたね」


「そう言えば、そうだったな。リコ。それがあいつの名前だ」


「・・・・・・」


 リコの名前を聞いたとたん、さとりは何か考えはじめた。


「リコ・・・・・・ですか・・・・・・」


「そうだが、それがどうかしたのか?」


「どこかで聞いたことがあるような気がしまして・・・・・・」


「そうなのか?」


「えぇ、でもいつ耳にしたのかは憶えていませんが・・・・・・」


「そうか・・・・・・」


 その時、


 ズドーーン!!!


 博麗神社の方から轟音が聞こえて来る。


「博麗神社の方だ!!」


「急いで向かいましょう!!」


 三人と一体の人形は石段を急いで駆け上がった。



 博麗神社は砂埃が境内一面に舞っており、様子が確認できなかった。


「何があったんだ?」


「!!・・・・・・レイさん、気をつけてください。霊夢さんじゃない誰かがいます・・・・・・」


 さとりが辺りを警戒しはじめる。


「誰かって・・・・・・誰だよ・・・・・・」


「わかりません。私も会ったことがない人物のようです。敵意が感じられます」


 その言葉を聞き、自分も警戒を強めた。段々砂埃が晴れて行く。二つの影が浮かび上がってきた。一人は地面に仰向けになっている状態の影。もう一つは、それを眺めるように立っている影だ。


「!!?」


 それが完全に晴れ、仰向けの影が霊夢、立っている影が見知らぬ人物のものだとわかる。


「霊夢!!」


「霊夢さん!!」


 その声でこちらに気付いたのか、男はこちらを振り向く。


「ほぅ、博麗の巫女にも仲間が居たとはな・・・・・・」


 男の手には刀が握られている。男は殺気に満ちあふれていた。


(霊夢の容態が気になるが、こいつにそれを聞かれたら、真っ先に霊夢を狙うだろう・・・・・・)


 少し考える。


(そうか!!)


 案を思いついた自分はさとりの肩を叩く。


「何でしょうか?」


「自分の心を読むんだ。そうすればあいつには伝わらないで済む」


「・・・・・・」


 さとりは自分の言われるがままに心を読んだ。


(いいか、自分があの男を引き付ける。その間にあんたは霊夢を助け出すんだ・・・・・・)


「そういうことですね。分かりました」


 さとりはそう言って一旦、その場を離れる。


「貴様が相手か」


「そうだ。でも、腕に自信がないもんでね。手加減してくれや」


「ふん、自分で弱いことを認めるか」


「生憎、そんなに自分が強いと思ったことがないものでね」


「面白い。自分が相手してきた中で一番面白い。だが、手加減はできぬ!!」


 その言葉が合図だったのか、男は急に間合いを詰めてきた。


(速い!!?)


 まるで風のようだった。男から一撃が振り下ろされる。


「うぉっと!!?」


 間一髪のところで避ける。


(あっぶっな!!あんなのに当たったら一たまりもないぞ!!)


 男が振り下ろした所にあった石畳が割れている。


(なんでこうも、厄介ごとが続くかね!!)


 鉄扇を懐から出し、構える。


「そんなもので勝てると思っているのか?」


「さてね、どうだろう」


 無論勝てるとは思ってはいない。


(とりあえず、霊夢を助け出す時間を稼げればいい)


「面白い、やってみろ!!」


 再び男は間合いを詰めて来る。


「くっ!!」


 ガキィーーーン!!!


 金属同士のぶつかる嫌な音が境内中に響き渡る。


(重い!!)


 少しでも気を抜いたら吹き飛ばされそうだ。


(こんなのを何度も受けてたらいつかは負ける。だが、どうすればいい・・・・・・)


 ガキィーーーン!!


 何度も何度も嫌な音が響き渡る。


「そちらがしかけて来ないなら、こちらから仕掛けさせてもらうぞ」


 そういうと男は刀を構え直す。


「界雷!!」


 天から無数の雷が落ちて来る。


「うおっ!!」


 あまりにも急だったため当たりそうになる。


(こんなの反則だろ!!)


 こんなの喰らったらひとたまりもない。しかし、文句を言ったところで、何も変わらないだろう。


(とりあえず、反撃の隙を見つけないと自分が死ぬ未来は免れないからな)


 その時、


「どこを見ている?」


「!!?」


 目の前には男の姿があった。すでに攻撃の体勢になっている。


(しまっーーー)


 ザシュ・・・・・・


 鈍い音が響き渡る。


「くっ・・・・・・」


 腕に焼鏝(やきごて)を押し当てられたような熱さが広がり、そして急速に冷たくなってゆく。


(出血が激しかったか?・・・・・・指先の感覚があまりない・・・・・・)


 鉄扇を持っていない腕だったのが幸いだった。なんとかまだ戦える。


「やるな。今のを避けたのはお前が初めてだ。しかし、その傷だ。満足には動かせんだろう」


「そうでもないさ。このくらいの傷、いくらでも受けて来たってものよ」


「ふ・・・・・・そうか」


(グッ、どうしたものか・・・・・・このままじゃすぐにでもやられちまうぞ)


「貴様、名は何という」


「人に名を聞くなら、まずは自分から名乗るんだな」


「そうだな、俺は(ひかる)城ヶ崎(じょうがざき)光だ。」


「・・・・・・レイ」


「面白い。殺す前に憶えておこう」


 そういうと男は再び刀を構え直した。


(本気で殺しに来る気か・・・・・・)


 殺気とは気が違う。こんな身体だったら一瞬で捕らえられて殺されるだろう。


(万事休すか・・・・・・)


 そう思い目を閉じたとき、身体と意識に輝く液体が一滴注がれた。あの時と同じもの。あの時の感覚がまた襲ってくる。男の動きもスローがかって見えた。


(これは・・・・・・あの時と・・・・・・だったら都合がいい)


 一度男と距離をとる。


「よいしょ!」


 その間に舞を舞い、腕の応急処置を行う。なんとか腕の感覚が戻ってきた。


「さて、第二ラウンドといきますか」


 鉄扇を握り直し、相手との間を一瞬で詰める。


「なっ!!」


 さすがに光も驚いたらしく、表情にそれが出ていた。


「いつの間にこんな力を・・・・・・」


「いくぞ、扇撃 烈扇波!!」


 鉄扇で光をなぎ払う。


「くっ・・・・・・」


 相手にも応えたようで、少し蹌踉めいている。


「今のうちに・・・・・・」


 男の刀を持っている方の手を払う。


 カラーーン


 刀は音を立てて地面に落ちる。


「しまった!!」


 男は急いで刀を取りに行こうとする。


「させるか!!」


 二つの手が刀にむけて伸びる。刀を先に取ったのは自分だった。


「よしっ!!」


 ひとまず相手の戦力は削ったはずだ。


(さとりの方はどうなってる・・・・・・)


 境内を見回し、さとりの姿を探す。どうやら、色々しているうちに助けれたみたいだ。十分ほどしか経っていないために、そんな遠くには運べてないはずだ。おそらく、本殿か、母屋のどちらかにいるのだろう。


 それならこいつをここから遠ざけなければならない。


(しっかし、どうすれば・・・・・・)


 光はこちらを睨みつけている。どうやら白旗をあげる気はさらさらないようだ。


(素手で立ち向かって来るか・・・・・・)


 自分にはそこまで戦おうとするのが分からなかった。


「うぉぉぉおーー!!」


 光は素手で殴り掛かってくる。その攻撃を鉄扇で払い、地面に倒し、顔のすぐ側に刀を突き刺した。


「これであんたの負けだ。いい加減降伏してくれ」


 自分がそういうと男は歯を食いしばる。そして、


「殺せ・・・・・・!!」


 大きな声でそういうのであった。


(なっ・・・・・・)


「どうした!!早く刀を動かせ!!」


 そう何度も吠える。


「・・・・・・」


 自分は刀から手を離し、光から離れた。


「待て・・・・・・何処に行く気だ!!」


 光がそう叫んでいてもなお自分は本殿に向かって歩く。


「何故だ!何故、殺さない!俺は勝手に仕掛けた勝負に負けたんだぞ!!」


「すまんな。自分は無防備の人間を殺す趣味は無いもんでね」


「情けをかけるのか!」


「自分は守りたい者を守れた。それだけで十分なんだよ」


「ふんっ、おじけずいたか!」


「そんなに死にたいのか?」


「これはけじめだ!!」


 男は自分の言うことをきこうとしない。


(どうしたものか・・・・・・)


 少し考え込む。


「・・・・・・それなら・・・・・・その命、自分にくれ」


(こんな奴が仲間になってくれるならありがたい)


「なっ・・・・・・」


「城ヶ崎 光という人物はここで死んだ。今ここにいる男は全く光とは関係の無い人物。名を・・・・・・そうだな、光輝(こうき)、光輝なんでどうだ・・・・・・」


「・・・・・・ふっ、はっはっはっはっはっ・・・・・・面白い。面白い男だ。殺そうとした男を助けるとは。わかった。我が命、貴様にくれてやろう」


 光輝は立ち上げり、刀を腰にしまう。


「何とかなったみたいですね」


 さとりが母屋から出てくる。


「さとり。霊夢の方はどうだ?」


「気を失っているだけのようです。すぐにでも目を覚ますでしょう」


 その言葉に安堵する。


「まさか、仲間にするとは思っていませんでしたがね・・・・・・」


 光輝の方を見てさとりは言う。


「何だ、こいつは」


「・・・・・・」


 さとりは静かに光輝の方を見る。


「・・・・・・へぇ、あなたヤクザの若頭のようですね」


「!!」


「名前は城ヶ崎 光。戦闘が趣味で、負けたことが無い」


「何故、そこまで知っている」


 光輝はさとりの方を睨む。


「まぁまぁ、落ち着け光輝。こいつはさとり。能力でお前の心を読んだんだよ」


「能力・・・・・・」


「そうだ、お前も雷を操っていただろう?あれと同じだ」


「・・・・・・そうか」


 物分かりは良いようですぐに納得したようだ。


「しかし、気分の良いものではないな」


「・・・・・・」


 さとりはそれに何も返すことができなかった。場の雰囲気が悪くなる。


「まぁまぁ、とりあえず霊夢が目を覚ますまで光輝が霊夢と戦っていた理由をきこうじゃないか」


 とりあえず、二人の背中を押し、母屋へ向かった。


「で、だ。光輝、何故お前はここに来た?」


「博麗の巫女という者がどれだけの強者か知りたかっただけだ」


 思ってた答えが光輝の口から出て来た。


「じゃあ、昔の素性を教えてくれ」


「・・・・・・先程、この女が述べていたようにヤクザ、城ヶ崎組の若頭。数日前、急に家ごとこの幻想郷に来たのだ」


「新参者ってことですね。ですがどうやってここの名を?」


「強者を求めてこの場所をさ迷っていた時にだ。その時に博麗の巫女の存在も知った。幻想郷最強は博麗の巫女だとな」


「それでここに来た、というわけか」


「あぁ」


「しかし、面白い者に会えた。博麗の巫女の力は期待ハズレだったが・・・・・・」


(それが、自分ということか・・・・・・)


「言ってくれるじゃない」


 襖が勢い良く開かれる。


「霊夢!」


「霊夢さん」


「私が期待ハズレですって。よく言うじゃない、人が疲れているときに戦いを挑んどきながら」


「本気じゃないと言うか。そうか、それならばいつかまた手合わせをしようじゃないか」


「暇なときね。それより、あんた城ヶ崎組の一員って本当かしら?」


「本当だったらどうする」


「叩き潰すまでよ。最近、あんた達のせいで幻想郷中から依頼が来てるんだから」


「しかし、それでは組を完全に潰せないのでないか?俺がいなくなれば根城の場所が分からないのではないか」


「確かに、そうだけど・・・・・・なんであんたがそんなこと言うのよ」


「すでに城ヶ崎 光は死んでいる。今ここにいるのは光輝という名の男だけだ」


「あっそ。まぁ別に良いのだけど、とりあえず組の場所を教えなさい」


「・・・・・・」


 しかし、光輝は霊夢の質問に答えようとはしなかった。


「なんか言いなさいよ!!」


 怒って光輝の胸倉を掴む霊夢。


「何故、貴様の言うことを聞かねばならん。貴様に負けた憶えはないぞ」


 火に油を注ぐ光輝。


「キィーーーーー!!」


 案の定、霊夢の頭には火が付いた。


「まぁまぁ、落ち着け霊夢。光輝もそれぐらい教えてやってくれ」


「兄者が言うなら教えよう」


(・・・・・・兄者・・・・・・?自分の聞き間違えか?)


「ていうか、あんた達、リコのこと知らない?」


「リコ?見ていないが・・・・・・どうしたのか?」


「さっき全部の部屋を見て回ってたんだけど、何処にもいないのよね」


「そういえば、確か俺が屋敷を出たとき、一人の少女とすれ違ったぞ。」


「それってどんな容姿だった!!」


「ちょうど俺の胸ぐらいだったな」


「!!」


 その背丈はリコのものと一致していた。


「リコだ!!」


「何故、そんなところにリコが?」


「これは俺の推測だが、博麗の巫女を潰すきっかけを人質でつくろうとしたんだと思う」


 光輝が考えを述べる。なかなか、頭の回る奴のようだ。


「そこまでしてまで私たちに勝ちたいのかしら、でもそれよりもリコのことの方が心配だわ」


「確かにそれはそうね」


 スキマが開き紫が出てくる。


「あの子は強大な力を持っている。彼女を死なせてはいけない」


「あんたがそんなこと言うなんて、よっほどリコは必要な存在みたいじゃない」


「必要な存在よ。最悪の場合、重要になってくるわ」


「とりあえず、リコを取り替えしに行くぞ!」


 自分は立ち上がり、母屋を出る。


「私も行きましょう。実際に患者を見てみたいですからね」


 さとりもそれに続く。


「兄者がいくなら俺も付いていこう」


 さとりの後に光輝が母屋を出た。


(・・・・・・やっぱり、聞き間違えじゃないよな・・・・・・)


 そう思いながら博麗神社を後にするのだった。























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