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東方夢幻録  作者: 桜梨沙
第二章 狂った六重奏《セクステット》 〜sextet~
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第三十八話 初めての外と六人目

 初めて外に出たフランは目をキラキラと輝かせていた。


「うわぁ―――――——!!」


 外を見るなり、フランは勢い良く中庭へと駆け出していく。その後ろを自分と紅魔館メンバーがついていった。


「妹様、転ばないように気を付けてくださいねーー」


「はーい!」


 元気よく返事をするフラン。それは、まるで無邪気な子供の様だった


(まぁ・・・・・それもしょうがないことか・・・・・・)


 吸血鬼には数多くの弱点が存在する。太陽の光も弱点の一つだ。理由はわからない。だが、昔こういう話をきいたことがある。『太陽は生命の根源』と。元々吸血鬼という存在はこの世ならざるものである。これは自分の勝手な考察だが、だから生命の根源である太陽の下には出れないのだろう。


「あの子ってあんな笑い方をするのね・・・・・・」


 パチュリーはフランを見ながら言った。


「知らなかったのか?」


「ええ、フランの笑顔をみるのは初めてだから・・・・・・」


「確かに狂気的じゃない笑顔を見るのは久しぶりね・・・・・・」


 レミリアも続けて言う。


「レミリアは見た事あるのか?」


「ええ、だいぶ昔の話よ。まだお母様とお父様が生きてた頃の話。ざっと400以上前じゃないかしら」


「400年・・・・・・」


「でも良かったじゃない。あなたも久しぶりにあの子の笑顔を見れて」


「そうね・・・・・・もう、見られないって思ってたわ・・・・・・」


 レミリアも影の外に出ようとする。


「駄目よ!!」


 パチュリーはそれを止めた。


「なんでよ?」


「あなたは魔法薬を飲んでいないでしょう?太陽の下になんか出たら、灰になってしまうわよ?」


「じゃあ、私にもフランに飲ませた薬を頂戴」


「それは無理ね。あの薬はもともとあなたの為に作ってただけだから一つしかないの」


「じゃあ、誰がフランについていくのよ?」


「そんなのレイ決まっているじゃない」


「自分は遊ぶとは了承したが、保護者になる気はさらっさらないぞ」


「何言っているの?レミィは太陽の下には出れない。咲夜はレミィの護衛とメイドの仕事。美鈴は紅魔館の門番、そして私は喘息持ちで運動が出来ない。こあは大図書館の本の整理。みんな出来ないのよ。そう考えるとあなたしかいないじゃない。大体、フランを外で遊ばせたいって言ったのは貴方でしょう?責任はあなたが取るべきよ」


「そうだな・・・・・・だが、何かあった時の責任は取れな・・・・・・」


「妹様に何かあったら、わかっているわよね・・・・・・」


 冷たい何かが首筋に当たる。恐る恐る後ろを振り向いてみると、いつの間にか咲夜が後ろにいた。


「あなたの首がどうなることやら・・・・・・」


 咲夜のその言葉は背筋を凍らせた。


「咲夜、やめなさい。一応、レイはフランの事を面倒を見てくれるのだからそんな事しないの」


「お嬢様の命令とあらば・・・・・・」


 咲夜はそう言うとナイフを下ろした。


「レイ、あなた急がなくていいの?もう、フランは先に行ったけど」


「まじか!!」


 辺りを見回す。確かにフランはもう居ない。


「早くしないと、はぐれるわよ」


「分かった!じゃ」


 自分は紅魔館の門をくぐり向け、急いでフランを追う。


「あっ、レイさん。お帰りですか?」


 美鈴が話しかけてくる。


「まあな。今日は寝ていないんだな」


「今日はって、いつも寝ないように頑張っています!!」


「そうなのか?自分には寝ているようにしか見えないんだが・・・・・・」


「大丈夫です。寝ている間も気の流れを感じていますから」


「気の流れ?」


「はい、気感ていうのを高めているんです」


「へぇ・・・・・・寝ているだけって思っていたが、なんかすごいことしているんだな」


「そうなんですよ。それなのに、咲夜さんはいつもナイフで私を攻撃するんです」


(それは門番として実際役に立っていないからじゃないか・・・・・・?)


「まぁ、頑張れ。自分はフランを追いかけないといけないから」


「妹様をですか?」


「あぁ。パチュリーから対日光の薬をもらってはしゃいでいるんだ」


「そうなんですね」


「驚かないのか?」


「えぇ、妹様は外で遊ぶことが長年の夢でしたから」


「ずっと閉じ込められていたからか?」


「それもあるとは思いますが・・・・・・」


「が・・・・・・?」


「・・・・・・この話はレイさんが時間のあるときにしましょう。そうしないとレイさん、妹様を見失ってしまいますよ」


「確かにそうだな。じゃあ、また今度その話を聞かせてくれ」


「分かりました。いつでもお待ちしています」


 美鈴に別れを告げ、急いでフランを追った。



 フランに追いつけたのはかなり走った後だったが、何とか人里に着くまでに追いつくことが出来た。


(よかった・・・・・・人里の中だったら自分が迷子になるところだった)


「あっ、お兄さん。何して遊ぶの?」


「そうだな・・・・・・」


 腕を組み、考える。


(そういえば・・・・・・前に紅魔館に行った理由はチルノ達がフランと遊ぶ為だったな。そのあと結局遊べていなかったよな・・・・・・)


 ポケットから懐中時計を取りだし時刻を確認する。針は3時を指し示していた。


「なぁ、フラン。自分とだけじゃなくて、皆で遊ばないか?」


「うん!!」


 元気の良い返事が返ってきた。


「よし、じゃあ寺子屋に向かうぞ!!」


「おーー!」


 自分とフランは元気良く人里の中を歩き始めた。



 しかし、その元気が続いたのは少しの間だけだった。理由はただ一つ。自分が方向音痴だと言うことである。そのせいで、何度も何度も同じ道をさ迷ったのだ。


「ねぇ、お兄さん。この道、さっきも通ったよ・・・・・・」


「そうだったか・・・・・・?」


 フランからは最初のような元気は感じられなくなっていた。


(さすがに歩き疲れたか・・・・・・?・・・・・・仕方ない)


「あそこの団子屋で一旦休憩しよう」


「・・・・・・うん・・・・・・」


 元気の無くなったフランと共に団子屋に入る。


「いらっしゃいませ〜」


 聞き覚えのある声が店内に響く。声の方を向くと、そこには見知った顔があった。


「雲雀!!」


「!!・・・・・・何のようですか」


 客が自分と分かった瞬間、態度を変える雲雀。


「冷やかしなら返ってください」


「冷やかしじゃない。こっちは客として来ているんだ。なのに何だその態度は。それが客にとる態度なのかよ」


「客として来ているなら、どこでもいいんで席に座って待っていてください」


 雲雀の言葉にむかついたが、ここで喧嘩を売ると、前みたいに刀で切り殺されそうになるのでそれはやめた。


「フラン、どこでも座っていいぞ」


「は〜い」


 フランが座ったところのテーブルと同じ場所に座る。


「で、注文は何でしょうか」


 雲雀が伝票を持ってくる。


「じゃあ、自分はみたらし」


「そっちの子は?」


「フラン?お前はどうする?」


「う~ん、分かんないから、お兄さんのと一緒のやつで」


「みたらしね。じゃあ、少しだけ待ってて、すぐ作るから」


 雲雀はそう言って調理場へと向かっていった。


「ねぇ、お団子ってなぁに?」


 フランの発した言葉に耳を疑った。


「フラン、まさか知らないのか?」


「うん」


 その言葉に自分は唖然とした。その時、新たな客が店に入ってきた。それも聞き覚えのある声。どうやら探し人達があっちから来てくれたようだ。自分は立ち上がり、彼女達に近づいていく。それを見たフランも立ち上がり、自分の後ろに隠れた。


「で、さぁ、けーねからその後頭突きされたんだ。そのせいで今も頭痛いんだ」


「それはしょうがないよ。チルノちゃんが宿題を忘れたりするから」


「でも・・・・・・」


「よっ、チルノ」


 チルノの前に行き、声をかける。


「レイ、なんでこんなところに?」


「少し、休憩しようと思ったからだ」


「ふ~ん、じゃあ、この後、暇か?」


「まぁな」


「じゃあ、一緒に遊びに行かないか?」


「その誘いなら、自分じゃなくて、こいつを誘ってくれ」


 後ろに隠れていたフランを彼女達の前に引っ張り出した。


「お、フランもいるのか?」


「フランちゃん!」


「フランじゃないか」


「フランなのか〜」


 四人は驚いた。


「前、紅魔館に行ったとき遊べなかっただろう?」


「確かにそうだけど・・・・・・」


 リグルが不安そうに言う。


「レミリアさんが怒りますよ」


「そこんところは大丈夫だ。ちゃんとレミリアの許可は取ってある」


「本当ですか?」


 大妖精が聞き返してきた。


「あぁ、だから、咲夜も追って来てないだろう?」


「確かに・・・・・・」


 とりあえず納得したようだ。


「まぁ、とりあえず遊んでやってくれ」


「別に構わないぞ」


 チルノのその一言で、フランの顔が明るくなる。


「よかったな、フラン」


「うん!!」


 これまで以上の元気な声で返事をした。


「はい、注文の品のみたらしです」


 さっきまで座っていた場所のテーブルに二つの皿がおかれる。


「さて、団子を食べて遊びに行くとしますか」


『おーーー!!』


 チルノ達もその後に、団子を頼み、フランを交えた5人で楽しく団子を食べていた。


「そういえば、ミスティアはどうしたんだ?」


「みすちーは、お店の準備をしないといけないから、後で博霊神社で待ち合わせをしてるんです」


「そうか、じゃあ、このあと遊びに行くのも博霊神社か・・・・・・」


「はい」


「そろそろ行くか?皆食べ終わったようだし」


「そうだな」


 チルノはそういうと立ち上がり、店を出た。それに続いて4人が店を出る。それに続いて自分も店を出ようとした。しかし、雲雀に引き止められる。


「勘定が済んでいませんが」


「そういえばそうだったな」


「代金は1200円です」


「じゃあ、万札から」


「はいよ」


 万札を奪い取るように取った後、お釣りをテーブルの上に置いた。それをポケットにしまい、店から出る。もう、フラン達は先の方を歩いていた。皆、笑いながら話している。


(ちゃんととけ込めたみたいだな・・・・・・)


 そう感心しながら見ていると急に突き飛ばされた。


「えっ・・・・・・」


 突き飛ばした相手は雲雀。刀を持って、自分の向いていた方向とは逆の方向を向いていた。その時、何か後ろから飛んで来る。それを雲雀は、刀の鞘で受け止めていた。


「あら、もうちょっとで()れそうだったんですけどね。また、邪魔が入りましたか・・・・・・」


 聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきた。急いで後ろを振り向く。


「グラシャラボラス!何でお前がここに!!」


「上からの命令ですねレイさん、貴方を消せと言われたんです。奇襲して、消そうかと思ったんですが、そこのお嬢さんが邪魔をしてくれたことですから・・・・・・一撃で()り損なっちゃいましたよ」


 急に声色が変わるグラシャラボラス。


(もう、遊びじゃない・・・・・・)


 この殺気は生死をかけた戦いの時のものだ。神奈子と戦ったときに感じたものと全く同じものを感じる。それを理解したのか、雲雀は刀を抜き放つ。自分も鉄扇を抜き放ち、構える。


「では、こちらから行かせてもらいますよ!」


 その言葉とともに、目の前からグラシャラボラスの姿が消える。


「よそ見をしてはいけません・・・・・・よっ」


「!!!」


 後ろからグラシャラボラスの声が聞こえたと思ったときにはグラシャラボラスの強烈な蹴りが炸裂しており、自分は民家の方に蹴り飛ばされていた。その重さは今までの戦いの比ではなく、民家に身体が勢いよくたたき付けられた。


「ガハッ・・・・・・」


 思いがけない一撃に吐血してしまう。


「キャーーーーー!!!」


 里の人達は急に何が起こったのか分かっておらず、パニック状態になっていた。


「もう一撃、いきますよ!」


 グラシャラボラスの拳が自分に近づいてくる。


(よけな・・・・・・けれ・・・・・・ば・・・・・・)


 これをもらえば確実に死ぬ。しかし、さっきの一撃で身体が言うことを聞かない。


(くそっ・・・・・・)


 もうすぐそこまで、拳は迫って来ている。そんな状態なのに、身体は動かなかった。死を覚悟する。しかし、攻撃は自分に当たらなかった。


「・・・・・・厄介なことをしますね・・・・・・貴方」


 手を押さえながら雲雀の方を向く。グラシャラボラスの手からは血が大量に出ていた。


「師匠からの命令なので、嫌いですけど、守らせていただきます」


 余裕の表情を見せる雲雀。


「その威勢はいつまで続くでしょうかね」


 いつの間にか、グラシャラボラスの出血は止まっていた。


四十雀(しじゅうから)!!」


 雲雀が技をしかける。目にも止まらぬ速さで攻撃が繰り出された。しかし、グラシャラボラスはそれを軽々と避ける。その間に自分は回復扇舞を舞い、回復する。


磊嵬(らいかい)!」


翳纏(かげまとい)!」


「花惑い!」


 雲雀から連続して技が繰り出されれる。さすがにグラシャラボラスこれをすべて避けるのは辛かったようで、肩や、足を斬られていた。


「貴方も、中々やりますね・・・・・・」


「これでどうだ!!」


桜襲(さくらがさね)!!」


(これなら・・・・・・いける・・・・・・)


 自分もそう確信した一撃だった。しかし、雲雀の刀はグラシャラボラスではなく、空を斬っていた。


「なっ!?」


「しかし、遅い」


「!!!?」


 いつの間にかグラシャラボラスが雲雀の背後を取っていた。雲雀も自分と同様に蹴り飛ばされる。その時、刀を手から離れ、地面にころがった。


「雲雀!!」


「さて、今度は貴方の番です、レイさん」


 グラシャラボラスはゆっくりと近づいてくる。


(どうやったら勝てる・・・・・・考えろ・・・・・・考えろ・・・・・・)


「彼女のようになりたくなければ、大人しく降参することです」


 その時、雲雀の刀が目に入った。


(刀で一撃入れれば勝機は・・・・・・)


 あるのだろうか。


(なかったとしても、かけるしかない・・・・・・)


「残念だが、死にたくないもんでね。大体あんたは、負傷してる。そんな身体で勝てるのかい?」


 会話をしながら、グラシャラボラスの注意を刀からそらさせる。


「ハンデですよ。貴方にはこれくらいあった方がいいでしょう」


 少しずつ、刀に近づく。


「それなら、これも喰らいな!!」


 鉄扇を投げつける。


「最後の悪あがきですか、しかし、そんなことしても無駄ですよ」


 グラシャラボラスは投げた鉄扇を手で払い除けた。その間に刀を拾う。


「行くぞ!!」


「落花流水!!」


 グラシャラボラスとの間合いを一気に詰め、攻撃を叩き込む。飛び上がり追撃。


「これくらいで私を倒せるとで・・・・・・!!?」


 グラシャラボラスの動きが止まる。


「ふっ、効いてくれて助かった。そいつは麻痺毒。身体が痺れるだろう?」


「いつの間に!?」


「こいつで、終いだ!!!」


彩花(さいか)!!」


 グラシャラボラスに強烈な一撃が入る。その攻撃で、グラシャラボラスは倒れた。


























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