第三十七話 四人目と五人目
ガキィ———————ン!!
激しい金属音がホール中に響き渡る。
「くっ・・・・・・・」
一撃一撃が重い攻撃だった。
「魔封針!!」
霊夢の攻撃が二体の化物にめがけて飛んでいく。それは綺麗に二体の化物に刺さった。
「・・・・・・ゥア・・・・・・」
化物達は呻き声をあげる。しかし、ダメージなど喰らっていないかのような身のこなしで攻撃してくる。
「ちっ・・・・・・」
かなり強い、攻撃を防いでいられるのも時間の問題だ。
(フェンルオの槍と自分の鉄扇ではリーチの差が大きすぎる・・・・・・せめて剣でもあれば・・・・・・)
辺りを見回し、何か武器になるものを探す。
「夢符 夢想封印!!」
霊夢がレンに向かって攻撃を加える。その時、眩しい光が目に入ってきた。
キラーーン・・・・・・
何かが地面で光った。急いでそれを拾う。
(これは・・・・・・咲夜のナイフ・・・・・・)
決してリーチの長い武器ではなく、逆に不利になるのは目に見えている。今の状態でナイフは適切な武器の判断とは言いがたい。しかし、咲夜のように使えば遠距離武器になる。
(ナイフで戦ったことはないが・・・・・・やってみるしかない・・・・・・)
地面には大量のナイフがある。
(さて、どう攻めるか・・・・・・)
まだ二体の化物はピンピンしており、倒れる気配はない。どう攻めるか思案した。とは言え、仮にも自分より実力のある相手だ。ナイフを用いた戦いでは、攻撃の「こ」の字さえ知らない自分に勝てるかどうかも分からない。
(どこか・・・・・・とっかかりはないか・・・・・・)
目を凝らす。攻撃場所、攻撃方法などを掛け合わせると攻撃は無限に近い選択肢となる。それらの中からどの方法が正解なのか見極めなければならない。
(ははっ・・・・・・なんでだろうな。こんな感触懐かしく感じるな・・・・・・)
鉄扇とナイフを握り直す。
「!!」
こちらを見ていた美鈴がなぜか驚いた。
「ゥアアアアアアアアアア!!!」
フェンルオが襲い掛かってくる。こちら目掛けて槍が振り下ろされた。それを鉄扇で受け流し、同時にナイフで首を狙う。血は出なかったが、少なからずもダメージは与えられた。一度間合いを取り、態勢を整える。
「ゥアアアアアアア!!!」
今ので敵も怒ったのか、殺気が増した。
「やけにこいつらタフじゃない。前に戦った時と感触が全く違うのだけれど」
「さっきグラシャラボラス《あいつ》が再度魔力を込めなおしたとか言ってだろう。だぶんそれが原因じゃないか?」
「・・・・・・確かに、前戦った時よりも強い魔力を感じるわね・・・・・・」
「弾幕ごっこしている気でいるなよ。これは遊びなんかじゃない」
「殺合だ・・・・・・とでも言いたいんでしょう?そんな事わかっているわよ」
「それなら結構!!!」
ナイフをフェンルオめがけて投げる。しかし、それは避けられてしまった。
(・・・・・・素早い・・・・・・)
身のこなしがかなり華奢である。しかし、怪我をした部分から魔力が漏れ出ているからか、最初よりは動きが遅くなっている。
(・・・・・・数撃ちゃ当たるか・・・・・・?)
地面に転がっているナイフを大量に拾う。
「そらっよ!!」
ナイフが二体の化物に飛んでいく。それと同時に二体の化物に近づいた。
「鳳凰扇舞!!」
弾幕ごっこの技とは違う、殺合の技だ。鉄扇の隠し刃を出し、相手の胴を切る。
『ゥアアア・・・・・・』
流石にすべての攻撃を防ぐことが出来なかったようで、二人とも体制を崩す。
「まだまだ!!」
(リコ・・・・・・技借りるぜ・・・・・・)
「アサルトダンス!!」
ナイフと鉄扇を使った攻撃。
「ついでにこいつもお見舞いだ!!」
ナイフがフェンルオめがけ一直線に飛んでいく。
「一閃!!!」
そして、フェンルオの首を貫いた。そして、一直線上に並んでいた、レンの首まで貫き、首を空高く吹き飛んだ。黒い何かを吹き出しながら、化物達の首は空高く飛んでいく。
ボトッ・・・・・・
首が二つ地面に転がる。
「!!!」
(なんだ!?今のは・・・・・・・・・・・・まさか・・・・・・今のは、首自分の・・・・・・記憶)
一瞬だけ映像が脳裏を過ぎった。その映像は今のように首が地面に転がっている状況で、首の部分から出でいるのは魔力ではなく、真っ赤な液体だった。その液体は地面に大量に流れて出ており、辺り一面が真っ赤に染まっていた。
(・・・・・・おぇぇ・・・・・・)
その気持ち悪さからか、気分が悪くなり、足元がふらついた。
「レイ、あんた大丈夫なの・・・・・・?」
「ああ、心配しなくて大丈夫だ・・・・・・それより、咲夜の方を心配してやれ」
「それもそうね」
霊夢と自分は咲夜に近づく。
「容態はどうなの?」
「まだ、何とも言えませんが・・・・・・パチュリー様の魔法で治療すれば多分・・・・・・」
「じゃあ、さっさと大図書館まで運びなさいよ」
「それは・・・・・・難しいと思います・・・・・・」
「なんでよ?」
「今は止血出来ていますが、動かしたら傷口が開いて大量出血で死んでしまいます・・・・・・」
「・・・・・・それなら・・・・・・レイ!あん時、私に舞った舞を咲夜にしてくれない?あの舞で回復できるでしょう?」
「それは本当ですか!!」
美鈴が期待の眼差しをこちらにむけてくる。
「お前・・・・・・戦闘でボロボロになっている人にそんなこと頼むか?」
「あなたが咲夜を殺した殺人鬼になるなら話は別よ」
「はいはい、分かりましたよ・・・・・・」
「回復扇舞!」
咲夜が光に包まれる。
「これでどうだ・・・・・・?」
力を使い切った自分は地面に座り込む。
「・・・・・・!!!傷がなくなっている・・・・・・」
美鈴は驚きを隠しきれないようだった。
「あら・・・・・・もう戦いは終わっているじゃない・・・・・・」
聞き覚えのある声。
「パチュリー様!!!」
レミィが酷い怪我を追ってたから、治療してすぐ来たのだけれどその必要はなかったかしら?」
「いえ、咲夜さんの容態が・・・・・・」
「咲夜の容態?・・・・・・見た限り大丈夫そうに見えるけど・・・・・・」
「それは、レイさんが回復してくださったので・・・・・・」
「どれくらいの傷だった?」
「どれくらいと言われると難しいですね・・・・・・」
「咲夜はフランのレーヴァティンで貫かれたのよ」
「かなり、酷い出血だったの?」
床の血を見ながら聞く。
「ええ、かなり酷かったわよ。一撃で咲夜が気絶するぐらいだったから・・・・・・」
「・・・・・・おかしい・・・・・・」
パチュリーはこちらを向いて聞いてきた。
「あなたが治療したのよね・・・・・・?」
「まぁな・・・・・・なんだ、失敗でもしていたか?」
「いえ、そんなことないわ。その逆よ。治療は成功している・・・・・・いや、成功し過ぎてるわね・・・・・・」
「なんだよ、その言い方・・・・・・」
「有り得ないのよ・・・・・・出血量から考えて咲夜は致命傷を負ったと推測できるわ・・・・・・」
「だから何なんだ?」
「致命傷なんだからそこらへんの普通の魔法使いが治癒魔法を唱えても、治療出来ない状態だったの・・・・・・私も僅かな時間だけで完全に治療出来るかと言われると何とも言えないわね・・・・・・」
「・・・・・・んんっ・・・・・・」
咲夜が目を覚ました。
「咲夜さん!!」
美鈴が咲夜に抱き着く。
「ちょっと、何するのよ・・・・・・」
「良かったですぅぅぅぅ・・・・・・」
「やめなさいよ、私の仕事着が濡れるじゃない」
「咲夜、あなたフランに刺されたところはもう大丈夫なの?」
「ええ、刺されたのが嘘みたいに痛くありません」
「・・・・・・やっぱり、あなた、何者?」
パチュリーが警戒しながら、こちらを見てくる。
「・・・・・・さぁな、前も言ったろ。分からないってな。知っているなら、こっちが教えてほしいぐらいだ」
「・・・・・・そうだったわね・・・・・・・・・・・・そんなことより、治療してあげるから、早くこっちに来なさい」
「すまない」
パチュリーの治療を受けるため、立ち上がった。その時、
「!!!?」
あの睡魔が襲ってきた。足元がふらつく。
(こんな時にかよ・・・・・・)
必死にあがき、眠らないようにする。
「・・・・・・あら、どうしたの?早く来なさいよ」
「・・・・・・あぁ・・・・・・すぐ・・・・・・行く・・・・・・」
心配させないように平気な振りを装う。
(毎度毎度何なんだ・・・・・・この睡魔は・・・・・・)
もう、体力が限界を迎える。
{抗うな・・・・・・欲に身を委ねろ・・・・・・}
「!!?」
聞き覚えのない声が脳内に響き渡る。
(本当に何なんだ・・・・・・よ・・・・・・)
意識はどんどん深い闇の中に落ちていく。
「・・・・・・・・・・・・」
そして、完全に意識は途切れてしまった。
ドサッ・・・・・・
『!!?』
その音に三人は驚き、音のした方を見る。
「レイ!!」
そこにはレイが倒れていた。パチュリーは急いでレイに近づく。深刻そうな目でレイの容態を見る。
「・・・・・・はぁ、よかったわ。寝ているだけみたいね・・・・・・」
パチュリーは胸を撫で下ろした。
「いったいどうしたのかしら?さっきまでは意識を保てていたのに・・・・・・」
「私、レイが急に倒れるところ博麗神社で見たわよ・・・・・・確か、あの時は魔理沙と弾幕勝負した後のことだったわね・・・・・・」
「戦いで疲れたんじゃないですか?」
「確かに、それも一理あるわね・・・・・・でも、本当にそれだけかしら・・・・・・?」
パチュリーは思案する。様々な可能性が彼女の脳裏を過ぎった。
「・・・・・・考えるのは後にしましょう。咲夜、美鈴。怪我人を部屋に運んで頂戴」
「分かりました!!」
そう元気良く答えた美鈴はリコとレイを肩に担いで、パチュリーの後ろをついていく。
「了解しました」
咲夜はフランをお姫様抱っこをして、パチュリーと美鈴の後をついて行った。
次に目が覚めたとき、自分はベッドの上にいた。
(・・・・・・いつ自分はベッドに・・・・・・?)
疑問を抱きながらベッドから起き上がり、廊下に出てみる。
「うわっ!!」
扉を開けたところには小悪魔がいた。
「うわぁぁ!!」
小悪魔も驚いたようで腰を抜かしていた。
「大丈夫か?」
小悪魔に手を差し出す。
「えぇ、あなたが起きているとは思っていませんでしたからつい驚いちゃって、それよりレイさんこそ起きて大丈夫なんですか?」
「まぁな」
「もう、本当に驚きましたよ。三日も眠っていたっていうのに・・・・・・」
「三日!!?」
(そんなに眠っていたのか!!?)
「ええ、まるで死んでるみたいに眠っていたので死んでしまったんじゃないかて心配しましたよ」
「それはすまなかった」
「あっ・・・・・・そういえば、パチュリー様に起きたら連れてくるように言われてたんだった。ということで、ついて来てもらっていいですか?」
「別に構わないが・・・・・・」
「じゃあ、ご案内しますね~♪」
小悪魔は羽をパタパタ動かし、飛んでパチュリーの元に案内してくれた。
コンコンッ・・・・・・
扉をノックする音が静寂な廊下に響き渡る。
「パチュリー様〜レイさんをお連れしました」
「入りなさい」
その声で、小悪魔は扉を開けた。
「起きたのね」
部屋にはパチュリーとレミリアが紅茶を飲んでいた。
「おかげさまで。レミリアも元気そうでよかった」
「あなたこそ、生きててよかったわ」
そう言うとレミリアは立ち上がった。
「紅魔館一同を代表してお礼を言わせてもらうわ。フランと咲夜を救ってくれてありがとう。あなたのおかげで、大事な妹と従者をなくさないですんだわ」
パチンッ―——
レミリアの指を鳴らす音が響いた。
「お呼びでしょうか、お嬢様」
「フランを連れて来て頂戴。でも、その前にレイに礼を言っときなさい」
「かしこまりました」
咲夜は自分に近づいてくる。
「瀕死の私を助けてくれたんでしょう?本当に助かったわ。ありがとう」
そう言うと、咲夜は自分の目の前から姿を消した。
「レイさん、紅茶をお持ちしました〜」
小悪魔が紅茶を差し出してくれた。
「すまない、頂くよ」
少しずつ紅茶を飲む。
「・・・・・・うん、うまい」
(もうちょい、ぬるめならもっとおいしいんだが・・・・・・)
そうだとしても十分おいしい。
「そうですか!ありがとうございます!ちなみに銘柄まで分かったりします?」
「銘柄ね・・・・・・多分、これはアールグレイじゃないか?」
「正解です!!凄いですね」
「いやいや、飲んでたらわかるようになるって・・・・・・」
「こあ」
パチュリーの声で小悪魔に何か合図を送る。
「あっ・・・・・・分かりました・・・・・・」
小悪魔はそういうと部屋を出た。その直後、
コンコンッ
ノックが聞こえてくる。
「お嬢様、妹様を連れて来ました」
どうやら咲夜のようだ。
「入って来て頂戴」
「かしこまりました」
扉が開き、二つの人物が目に入る。一人は咲夜。そして、もう一人は先ほど戦っていたフランと呼ばれる少女だった。
「・・・・・・・・・・・・」
今の彼女は先ほどの狂気な姿とは打って変わって、大人しそうな子に見えた。こちらを嫌っているのか、中々顔を上げようとせず、ずっと俯いて下を向いていた。
「紹介するわね。私の妹、フランドール・スカーレット」
「・・・・・・・・・・・・」
レミリアに紹介されても彼女はだんまりだった。
「フラン、レイに言うことがあるでしょう?」
「・・・・・・・・・・・・」
「フラン!!!!」
ずっと黙っているのに腹がたったらしい。レミリアはフランに近づくと胸倉を掴んだ。
「黙ってないで何か言ったらどうなの!!!!」
それもかなりご立腹のようだ。
(これじゃあ・・・・・・あん時と一緒じゃないか・・・・・・)
チルノを捜しに紅魔館に来たときも喧嘩をしかけていた。
「まぁまぁ、落ち着けレミリア」
一旦、レミリアを落ち着かせ、席に座らせる。
「レミリアはフランに何をさせたかったんだ?」
「フランに謝らせたかったのよ。何も関係ない貴方を巻き込んで攻撃したことをね」
怒りが収まってないからなのか、レミリアは少し怒り気味の口調で言う。
「・・・・・・・・・・・・」
しかし、フランは黙ったままだ。
「そのことなら別にいいさ。自分は死ぬと思ったが、死んでいないからな」
「それじゃあ、示しが着かないわ」
「示しって・・・・・・」
仮にもレミリアは主。そこら辺のプライドは高いのだろう。
「・・・・・・じゃあ、自分の言うことを一つ聞いてくれるってのはどうだ?」
「あなたがそれでも構わないって言うのなら別にいいけど・・・・・・」
「そうか、じゃあ・・・・・・」
「待った。無理難題はやめてよね。例えば十億円が欲しいとか、幻想郷の支配者になりたいとかはダメよ」
「分かってる、分かってる。そんなことは言わない。自分は・・・・・・」
「自分は?」
「自分は・・・・・・フランと遊べれば十分だ」
『!!!!!?』
部屋にいた全員が驚いた。
「だ、だめよそんなこと!!許せるはずがないじゃない!!」
「まぁまぁ、そんな堅いこと言わないで」
「レイ!!貴方、自分が何を言っているのか分かっているの!?フランと遊ぶって、下手したら生きて帰れないのよ!!?」
「別にいいじゃないか。遊びたくなる時は誰にでもある。なっ?」
フランに近寄り、尋ねる。
「あぁ・・・・・・」
急に聞かれて、テンパってしまうフランだったが、首を縦に振った。
「ほら、本人も遊びたがってる」
「そうだとしても・・・・・・」
「レミリア、あんたはフランを縛りつけ過ぎだ」
「なっ・・・・・・」
「お前はフランが傷付かないためを思ってやっているんだろうが、それがかえってフランを傷付けていることに気づいていないのか?もし気づいていないのなら、お前は妹のことを全然見ていない。姉として失格だ」
「・・・・・・・・・・・・」
(ちょっと言いすぎたか・・・・・・?)
レミリアは自分の言った「姉として失格だ」ということにそうとうショックを受けたようで、今度はレミリアが黙り込んでしまった。
「確かに、私から見ても縛りすぎだと思うわ」
「パチェまで・・・・・・」
「今回のフランの暴走、霊夢から聞いたグラシャラボラスっていう人物の仕業って言うこともあるでしょうが、一番の原因はフランを貴方が縛っていたせいでフランの心に積もった負の感情だと思うわ。多分、グラシャラボラスって男は最後の一押しをしただけ」
「・・・・・・そうね。確かに、私はフランを縛りつけ過ぎたのかもしれないわね。いいわよ、フランと遊んで」
「もう一つ無理言って申し訳ないんだが、どうせなら、外で遊ばせてやりたいんだが・・・・・・」
「それは、だめよ!!!そんなことしたら、フランの体が灰になってしまうわ!!」
外は晴れており、強い日差しが降り注いでいた。
「そこを何とか・・・・・・」
「分かったわ、日光に耐えられるようになる魔法薬を出してあげるから、図書館に来なさい」
パチュリーはそういうと立ち上がった。
「すまない、恩にきる!」
「貴方の為じゃないわ。フランの為よ」
「そんな魔法薬があるなんて知らないわよ!!?」
レミリアは取り乱し、立ち上がる。
「あら、言わなかったかしら?あぁ、あの時は宴会が夜に控えていたから浮かれて聞いてなかったのね」
「そんな・・・・・・」
「これからは人の話を聞くようにした方がいいわよ」
そう言って、パチュリーは部屋を出た。
「ほら、行くぞ」
自分はフランの手を引き、パチュリーの後を追っていった。




