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東方夢幻録  作者: 桜梨沙
第一章 出会いの練習曲1《エチュード》 〜etude〜
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二十九話 守矢神社にて

「着きましたよ。頂上」


(やっとか・・・・・・)


 妖怪の山の頂上についた頃、足はパンパンになっており、立つことすらままならなかった自分は、その言葉に救われた。木の棒を杖の代わりにしながら文の後ろを追って行く。


「・・・・・・」


 そこには思いもよらぬものがあった。


「・・・・・・なぁ、文・・・・・・なんで、こんな山の上に神社がある・・・・・・」


 守屋神社と書かれた看板が石で作られた鳥居に付いている。


(わざわざ何でこんなにも参拝しづらい所に・・・・・・)


 しかし、なぜだか博霊神社よりは信仰が集まってそうだ。


「さぁ?私達にもわかりません。幻想入りしたときにここに来たそうですよ」


「こんな所で信仰が集まるのか?」


「集まるんじゃないですか?実際に博霊神社よりも大きくて立派ですから」


(霊夢には悪いが言えてる・・・・・・)


「そんなことより・・・・・・また階段なのか・・・・・・?」


 守屋神社へと続く階段。これを上らなければ幻想郷を一望することは出来ない。


「そうですけど・・・・・・大丈夫ですか?」


「見ればわかるだろう」


「大丈夫そうですね」


「いや、全然大丈夫じゃない!どうやったらそう見えるんだよ!!?」


「意外と体力がないっと」


「メモするな!!」


「しょうがないですね・・・・・・では、バンザイしてください」


「こ、こうか・・・・・・?」


 言われた通りバンザイをする。すると、文は飛んだ。そして自分の手を掴む。


「そのまま動かないでください、落としかねませんから」


 身体が地面から浮き上がり、空を飛んだ。


「お・・・・・・おっ・・・・・・?」


 どんどん上昇していく。その時風が吹きどこからか紙が飛んできた。


「ひゃっ!!」


 急に文が変な声を出す。どうやら紙が顔に張り付いたようだ。左手を自分の左手から離し、紙を取る。


「おい・・・・・・ちょっ・・・・・・まっ・・・・・・」


「なっ、何ですって!!?これはスクープです!!」


 紙に書かれていることに夢中になっていて、自分を持っているということを忘れているようだ。


「文さん・・・・・・?・・・・・・」


 しかし、自分の声など聞こえてないようだ。


「今すぐに確かめにいかなければ!!」


 右手が離れた。それと同時に体が落ちていく。


「嘘だろう!!?おい!!?死ぬぅぅぅぅぅぅ~~~~~~!!!?」


「あっ」


 落としたことに文が気付いた時には自分は背中を強く地面にぶつけていた。


「ツゥーー痛テテテ・・・・・・」


 落ちたのは先程の守屋神社の境内の中。


「すみません・・・・・・大丈夫ですか?」


 文が下りてくる。


「大丈夫じゃねぇよ!!死にかけたわ!!」


「こんな昼間から誰が騒いでいるんだ?せっかく人が気持ちよく寝てたのに」


「!!?」


 本殿の方から声が聞こえてくる。声がした方を向くと、金髪で青と白を基調とした壺装束つぼしょうぞくを着た女性が出てきた。


「こんにちは、諏訪子さん」


「何の用だい、文?早苗なら、今人里で神奈子と一緒信仰を集めに行っていないよ」


「いえ、今日はレイさんに幻想郷を一望したいと頼まれたものですから・・・・・・」


「レイ?隣にいる男か?・・・・・・私達よりも新参者かい?見たことがないが・・・・・・」


「まあ、そんなところだな」


「私は洩矢諏訪子。この神社の神様をさせてもらっているよ。よろしく」


「こちらこそよろしく」


「一望したいなら好きにしてくれ」


「すまない。ありがとう」


 適当に境内をうろつく。そこからの景色は、先程の空を飛んだよりかは劣っていたが、素晴らしい景色だった。


「すいません、レイさん。私、急用ができたのでここで・・・・・・」


「さっきの紙に書いてあったことか?」


「はい!特ダネですから、花果子念報かかしねんぽうに取られる前に取り上げないといけないので・・・・・・」


「そうか。分かった。ここまで案内してくれてありがとう、文」


「いつか、取材して書かせていただきますね、レイさんの記事」


「別に構いはしないが、変なこと書いて、余計な噂を立てるなよ?」


「もちろんです!清く正しい文々。新聞はそんなことは絶対しませんから!!」


 そう言って物凄いスピードでどこかに飛んで行ってしまった。


(そう言うのが一番信用ないんだが・・・・・・)


「速っ!もう見えなくなったぞ」


「幻想郷一の速さをの名乗っているのは伊達じゃないって事さ」


「へぇ・・・・・・そうなのか」


(・・・・・・あの後ろ姿・・・・・・どっかで・・・・・・)


「そんなことより、あんた何者なんだい?」


「・・・・・・判らん。むしろこっちが知りたいぐらいだな」


「記憶喪失?」


「多分そうだ」


(時々記憶が蘇る時があるからな・・・・・・)


「しかし、幻想郷を一望してみたいなんて、あんた相当酔狂だな」


「何をすればいいのか全く分からないもんでね。暇だから幻想郷巡りをしているのさ」


「ふーん」


「ここは風が気持ちいな。うちの周りとは少し違って」


「そうかい?そう言ってくれると嬉しいねぇ。ここに建てて良かったって思うよ」


「静かでもあるしな」


「いまは、他の神がいないからね。いつもはもっと五月蠅いんだよ」


(他の神?普通一つの神社に一柱じゃないのか?)


「諏訪子様ー!ただいま戻りました!」


「諏訪子ー!帰って来たぞー!」


 境内に元気な声が響く。


「噂をすれば、帰ってきた」


 声のした方を向くと、霊夢と同い年位の緑髪の青と緑を基調とした服を着ている巫女と、青紫の髪を持つ、赤と青を基調とする服を着て、背中にしめ縄を背負っている女がいた。二人ともこちらに近づいて来る。


「諏訪子様、人里でお団子を貰ったんです。今から食べませ・・・・・・その方は?」


「彼は私の客人さ。ちょうどよかった、団子を貰ってきたんだって?じゃあその団子で彼をもてなそうか」


「判りました。では、食べれるように準備してきますね」


「頼んだよ、早苗」


 少女は本殿の中へ消えていく。


「で、そいつは誰なんだ?」


「彼はレイ。新参者さ。暇つぶしに幻想郷一望しに来たらしい」


「・・・・・・」


「レイ、こっちは神奈子。そして、本殿の中に入って行ったのが早苗さ。よろしく頼むよ」


「準備できましたよー!早く来ないと全部食べてしまいますよー!」


「諏訪子、先に行っといてくれないか?私は、こいつと二人で話したい」


「・・・・・・判った。でも、早く来ないと私達が全部食べてしまうよ?」


「判ってる」


「・・・・・・」


 諏訪子が本殿に向かうとき、肩に手を置いて耳打ちをしてきた。


「・・・・・・また、会えればいいな・・・・・・」


 その意味はすぐに理解出来た。神奈子の殺気が意識しなくても感じ取れる。


「あんたみたいな匂いを持った奴がほとんどいないから、こんな気分、久しぶりだよ」


「どういう意味だ」


「あんたからは戦場特有の匂いがする・・・・・・血と、鉄と、絶望と、死の匂いだ。」


「・・・・・・」


「千、いや万を超えるの命を奪ってもこんなにも強い匂いにはならないだろうよ。」


「悪いがそんなことした記憶がないもんでな」


「記憶の有無なんて関係ない。その匂いが証拠だ」


「・・・・・・」


「そんなことより、早くろうじゃないか」




「あれ?諏訪子様、神奈子様とお客様は?」


「まだ、外にいるよ」


「もういつまで待たせるんですか、あの二人は?せっかくの煎れたてお茶が冷めるっていうのに。ちょっと呼んできますね」


「待つんだ、早苗!!」


 立ち上がった早苗は、諏訪子の声に驚く。


「何でですか?」


「感じるだろう?物凄い殺気を」


「確かにさっきから感じますけど・・・・・・」


「それは神奈子のものだよ」


「えっ・・・・・・でもこんなにも殺気を出している神奈子様は見たことありません」


「私はあるよ。一回だけだけど。神奈子が私に戦いを挑んできた時だ」


「それって・・・・・・」


「神奈子が本気を出しているってわけさ」


「・・・・・・神奈子様に本気を出させるなんて、あの人何者なんですか?」


「さぁ?私に聞かれても困るよ。私だって初めて会ったんだし」


 諏訪子はのんきに団子を食べる。早苗は心配そうな顔を見せながら団子を食べ始めた。




 神奈子の後ろに御柱が数十本現れる。


「さぁ、私を楽しませてくれ!!!」


 御柱が自分目掛けて飛んできた。


「うおっと!!」


 意外と速い。


(・・・・・・どれだけ自分の力が神に通じるか、だな・・・・・・)


 鉄扇ごときで御柱を防げるとは思わない。


(どうする・・・・・・)


 考えている間にも御柱や弾幕は自分に向かって放たれる。


(・・・・・・魔理沙と戦った時みたいに・・・・・・)


 あの時みたいに身体と意識に輝く液体が一滴注がれれば勝機はある。


(だが、問題は・・・・・・それをどうすれば出来るのか、だ・・・・・・)


 あの時は、運がよかった。だが、今それが出来るかと言われれば、不可能に限りなく近い。


「そこにいると危ないぞ!!神祭 エクスパンデット・オンバシラ!!」


「!!!?」


 段々と御柱で逃げ場を制限される。


「そっちばかり気にしているのはいけないな」


 気付いた時には遅かった。目の前には自分にめがけ飛んでくく御柱があり、逃げることも出来ず、直撃した。そのまま、御柱は身体ごと斜め上に上昇する。


 ドゴォン!!!!


 大きな音と共に、身体は、鳥居と御柱でサンドイッチになる。


「ぐはっ・・・・・・」


 その衝撃で吐血してしまう。高いところから落下するときよりも痛かった。段々と気が遠のいていく。


〔貧弱、貧弱!!貴様、弱くなったんではないか!!〕


「!!」


 頭の中に神奈子とは別の声が響く。


(貴様に変わってこの俺様が戦ってやる!!貴様は安心して身を委ねるがいい!!)


(・・・・・・誰なんだ・・・・・・)


 しかし、それを考えることなど出来なかった。


(・・・・・・意識が・・・・・・とおのいて・・・・・・・)


 意識は少しずつ薄れていき、そして完全になくなった。





「あんたの力はこんなものなのかい!!?」


 倒れているレイを見ながら挑発してくる神奈子。


「・・・・・・」


 しかし、返事は返ってこない。


「・・・・・・なんだもう終わりかい。残念だね・・・・・・」


「終わったのかい・・・・・・」


 諏訪子と早苗が本殿から顔を出す。


「ああ、私の勝ちさ。もうちょい骨があると思ったんだが・・・・・・私の見当違いだったようだね」


「・・・・・・」


 早苗は目の前で起こっていることが理解できていないようだ。


「お客様は・・・・・・」


「多分、死んだよ」


「でも・・・・・・」


「あそこの死体を見ればわかることじゃない・・・・・・!!?」


 神奈子が早苗に説明しようと指を指した方向、そこに先程まであたはずのレイの死体がなくなっていた。


「神奈子!!下だ!!」


「遅い、遅い!!」


 神奈子が下を見た時、そこにはレイの姿があった。レイのサマーソルトが綺麗に神奈子に入る。


「くっ・・・・・・油断したね・・・・・・」


 レイの動きはさっきの動きと全く別のものになっていた。


「こんな奴に負けたのかあいつは」


「気が変わった、口調も・・・・・・本気で来るって事かい・・・・・・でも、あんたは私に勝てない!!」


 神奈子は再び御柱と、弾幕をレイに向かって放つ。しかし、レイは、それをステップやバク転を使って避けた。


「一筋縄ではいかないって事かい。面白い、やってやろうじゃないか!奇祭 目処梃子乱舞!!」


 無数の御柱が、空から降ってくる。さっきのエクスパンデット・オンバシラの強化番スペルカードのようだ。弾幕が新たに追加されている。だが、レイにはかすりもしなかった。


「やはり、私の目に狂いはなかったようだね!!もう一発だ!!神秘ヤマトトーラス!!」


 無数の弾幕が左右から放たれる。しかし、それもレイには当たらなかった。


「遅い、遅い!!そんなんでこの俺様に勝てると思っているのか!!?」


 その瞬間、一気に間合いが詰められた。


「くっ・・・・・・」


 その一撃一撃は重かった。人間が出せる物ではない。


「秘術 グレイソーマタージ!!」


「!!」


 神奈子から放たれる弾幕とは別の弾幕が横から放たれたことに驚き、間合いを取るレイ。


「神奈子様、大丈夫ですか?」


「助かったよ、早苗」


「今、回復をしますね」


 早苗がお祓い棒を掲げると、神奈子の傷が癒えた。


「私も加わった方がいいようだね」


「そうだな・・・・・・」


「私も戦います!!」


「足手まといになるんじゃないよ!!本気でかかれ!!」


「おう!!」


「はい!!」


「ほう?三人でかかって来るか。懸命な判断だ。褒めてやろう」


 三対一。勝機は確実にこちらにある。しかし、いくら攻撃加えてもレイには当たらなかった。


「弱い奴が何人集まっても俺様には勝てない!!」


「蛇符 神代大蛇!!」


「風神様の神穂!!」


「開宴 ニ拝ニ拍一拝!!」


 三枚のスペルカードの弾幕が重なり合いながらレイに向かって放たれる。さすがにこれは避けきれなかったようだ。レイに当たると同時に、砂埃がレイを隠した。


「・・・・・・や・・・・・・ったんですかね・・・・・・」


「さすがに、あれを避けることは出来ないだろうよ・・・・・・」


「・・・・・・いや、まだのようだね・・・・・・」


 砂埃の中に一つ影があった。


「何者なんだ、あいつは!!?」


 その言葉が出てしまうのも仕方なかった。こっちは三人の全力で戦っているっていうのに、攻撃を与えられているという手応えがなかったからだ。


「もう、さすがに無理です・・・・・・」


 砂埃が完全に晴れた。そこには、シールドに囲まれたレイがいた。


「爪が甘い、甘すぎる!!ハチミツよりも甘い攻撃だぞ!!」


「シールドまで使えるのかよ・・・・・・」


「少し、本気を出させてもらおう。それも一興というものだ!閃絡 フラッシュ・オーバー!!」


 その瞬間、レイから閃光と共に、熱が放たれる。勝負は一瞬でついた。


「・・・・・・」


「ぅ・・・・・・」


「くっ・・・・・・」


「ハッハッハッハッァ!!貧弱、貧弱!!この程度で俺様に勝てるとでも思っていたのか!!?」


 辛うじて意識は保った諏訪子だったが、戦える状態ではない。他の二人は自分よりも酷く負傷しているようだ。そんなこと関係無しにレイはゆっくりと近づいて来る。


「ここまで・・・・・・なのかね・・・・・・」


 次の攻撃をもらえば確実にられる。しかし、いつまでたっても次の攻撃は繰り出されなかった。


「チッ、時間切れか。しょうがない元に戻してやろう・・・・・・」


 レイはそういうと何かが身体から抜けて行ったかのように身体を崩す。どうやら気を失っているようだ。


「・・・・・・どうやら命拾いしたようだね・・・・・・」


 張り詰めていた気持ちが緩んでその場に座り込む。


「・・・・・・負傷者を運び込むかね・・・・・・」


 諏訪子は一人、境内に負傷者を母屋に運び込むのであった。

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