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東方夢幻録  作者: 桜梨沙
第一章 出会いの練習曲1《エチュード》 〜etude〜
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第二十六話 VS謎の剣士

 緑の服を着た白髪の少女。そばには白い何かが浮いている。


(あの左胸にある白い紋・・・・・・どっかで見たことがあるような・・・・・・)


「ここは冥界、魂たちが集う場所。生きとし生けるものが来るべきところではない」


「と言われてもな・・・・・・」


「疾くに顕界に帰るがいい。さもなければ侵入者とみなす」


 自分の言葉は少女に遮られてしまう。


(・・・・・・無視しやがった・・・・・・)


 少女は背中にある刀を抜く。彼女は戦う気満々だ。自分も腰の刀に手を伸ばす。


(・・・・・・・・・・・・ん・・・・・・・・・・・・?)


 手をいくら握っても柄がつかめない。左腰を確認してみる。


「・・・・・・・・・・・・は・・・・・・?」


 刀がない。


(どこで無くした!!?・・・・・・・・・・・・あっ・・・・・・)


 思い当たることが一つだけある。


(リコとの戦闘だ・・・・・・)


 リコの攻撃で鞘は粉々に砕け散り、落花流水を出した後、刀は折れてしまった。しまいのあげくには、リコを背負うのに邪魔だからって道端に捨ててしまったのだ。


「侵入者には死あるのみ」


 彼女は刀を抜き放ち、斬りかかってくる。


「うおっ!!」


 風を切り裂く鋭い音が響いた。


(あっぶっねっ!!斬られたら終わりだぞ)


 後ろにあった石燈籠の上の部分は斬られており、地面に転がっていた。


(とりあえず、逃げる!!後の事はそれからだ!!)


 少女に背を向け、脇目もふらず走っていく。


「あっ、まて!!」


 少女も刀を振り回しながら追ってくる。


(追いかけごっこをしてたらいつかは追いつかれる・・・・・・仕方ない、彼女には少しばかり我慢してもらおう・・・・・・)


 身体を反転せて少女の方を向く。


「斬られる覚悟ができたんですか!!いいでしょう!!一撃で逝かせてあげますよ!!」


 自分を縦に両断しようと刀が振り下ろされる。


(すまない・・・・・・)


 少女の攻撃を避け、少女の腹に蹴りを一撃。


「・・・・・・・っ・・・・・・」


 彼女は膝を折り、腹をおさえ自分から目線を外した。


(今の内に・・・・・・)


 再び彼女に背を向け逃げる。


「あっ、待て!!侵入者!!」


 後ろからそのような声が聞こえた。


(襲われている時に待てって言われて、待つ阿呆がいるか)


 走り続けていると庭のようなところに出てきた。建物の陰に隠れる。


(・・・・・・何とか撒けたか・・・・・・?)


 物陰に隠れながら様子をうかがう。


(問題は彼女と何で戦うかだ・・・・・・何か武器になりそうな物は・・・・・・)


「あった!」


 右腰に鉄扇を指していたことを忘れていた。鉄扇を抜く。


(だが・・・・・・相手は刀だぞ・・・・・・しかも少しだけ長い気がしたんだが・・・・・・)


 つい、空を見上げる


(ていうか、いつの間に明るくなったんだ?)


 階段を上っている時までは暗かったはずだ。そんなことを考えている時、後ろから近付く影があった。


「わっ!!!!」


「!!」


 後ろからの大声に驚く。後ろを振り向くと見覚えのある人物がいた。


「幽々子!!?なんでこんなところに!!?」


「なんでって、私の家がここだから」


「冥界が?」


「正確に言えば白玉楼がだけどね。宴会の時紫が説明していたじゃない。覚えていないの?」


(・・・・・・ああ、思い出した。冥界の管理をやってるとか言ってたな・・・・・・)


「確か冥界の管理をやってるんだっけか?」


「そうよ。と、言ってもそんなに忙しくはないのだけどね」


「ふーん」


「あなたは幻想郷巡りでもしているのかしら?」


「そんなところだ、まあ階段を上り終えてからはなんか刀を持った少女に追われているがな」


「少女?・・・・・・ああ妖夢の事ね。仕方ないのよ、彼女の師が相当な堅物でね、そう言うところ真面目なのよ~まあ、それのあの子の良いところでもあるけどね」


「・・・・・・幽々子、話は変わるが、ここに毎日鍛錬をしている少女がいないか?実は自分はその子と戦いたいに来たんだが・・・・・・」


「いるわよ。ほら」


 幽々子が指を指した先を見る。


「・・・・・・・・・・・・」


 一瞬困惑した。なぜなら、そこにいたのはさっきの妖夢とよばれる刀を持った少女だからだ。


「・・・・・・嘘だろう?」


「嘘じゃないわよ。大体ここにいる少女といったらあの子以外いないから」


「・・・・・・そうなのか?」


「そうよ。ほら、あの子もあなたを探しているようだし、行って来なさい」


「うおっ!!?」


 背中を押され物陰から飛び出てしまった.


「見つけた!!」


 すぐに妖夢に見つかった。


(仕方ない・・・・・・戦うか)


 右腰に差していた鉄扇を抜き、構える。


「さっきのようにはいきませんよ!!」


「まぁ待ってくれ、一旦刀を仕舞ってくれよここに来た理由を聞いてくれよ」


「真実は斬ってから知る!!」


 そう言って彼女は襲い掛かってくる。


「ちょ・・・・・・うぉっ!!」


 何とか避けた。しかし、後ろにあった石灯篭は斬れてしまった。


(・・・・・・おいおい、おかしいだろう・・・・・・いくら刀でも、角度がよくなきゃ斬れないはずだ・・・・・・)


「あっ、避けるな!!」


「お断りだ!!」


「楼観剣の錆にしてやる!!」


「斬れるもんならな」


「妖怪が鍛えたこの楼観剣に斬れぬものなど、あんまり無い!!」


 再び間を詰められ、刀が振り下ろされる。それを反射的に鉄扇で防いだ。


「くっ・・・・・・」


 鉄扇で受け止めたものの、その一撃は重いものであった。


「なっ!!」


 彼女は鉄扇が斬れなかったことに驚いているらしい。


「なかなか良い物を持っているようですね!!」


 ガキィン!!!


 何度も刀と鉄扇が交差し、火花が舞う。


(・・・・・・くっ、リーチが短い分、間合いを取られるとこっちが不利だ・・・・・・何とかして詰めないと・・・・・・)


「なかなかやりますね!!」


「そりゃあどうも!!」


「本気を出した方がいいようですね」


 彼女は再び背中手を伸ばす。


 カシャッ。


 彼女の手にはもう一本の刀が握られていた。


(ん?あの刀・・・・・・もしかして・・・・・・ていうか・・・・・・冗談きついだろ。まさか、二刀流でした、とか言わないよな・・・・・・)


「この楼観剣と白楼剣で相手をしましょう!!」


 二本の刀を構え、襲ってくる。何とか鉄扇で受け止めは出来たものの、そう何度も耐え切れるものではなかった。


(くっ・・・・・・地味に白楼剣とか言う短い刀が・・・・・・)


 さっきよりも戦いづらくなっている。


「これはどうでしょう!!」


 彼女は距離を取ると、構える。


「人智剣 天女返し!!」


 その速さはさきほどと段違いのもので、目で追うことが出来なかった。


「ぐはっ・・・・・・」


 何とか鉄扇を滑り込ませるのに成功したが、衝撃で自分の身体は吹き飛ばされた。


 ドゴォン!!!


 轟音と共にぶつかった建物が壊れる。


「ウ・・・・・・ググゥ・・・・・・ーーッ!?」


 痛みで悲鳴をあげる身体を無視して、蹌踉よろめきながら立ち上がり、鉄扇を構える。


「まだ立ち上がりますか!!いいでしょう!!これで決めます!!」


 そういうと再び刀を構える。


「六道剣 一念無・・・・・・」


「双方、そこまでよ!!!」


 幽々子の声が庭中に響きわたる。


「幽々子様!!何でですか?」


「互いに力を出し尽くし、存分にやり合ったんでしょう?もう充分でしょう。これ以上戦っても負けても遺恨が残るだけよ」


「で、でも・・・・・・」


「妖夢ちゃん。大体、彼は侵入者じゃないわ、私の客よ」


「えっ!!」


 それを聞いた彼女はとても驚いている。


「突っ立っているんじゃなくて、早くもてなす用意をしなさい」


「は、はい!!」


 妖夢は急いでどこかへ消えて行ってしまった。


「大丈夫だったかしら?」


「まあ、大丈夫なんだが・・・・・・なんで嘘を?」


「あなたを殺すのがもったいなかったから」


「はぁ?」


(いやいや、自分はそんな理由で助けられたのか?)


「なんか他の理由はないのか?そんな理由じゃ納得できないだが・・・・・・」


「あのまま妖夢ちゃんの攻撃を喰らっていたら致命傷ではすまなかったわ」


(まあ、そうだろう)


 足もおぼついていた。確かにあのまま攻撃をくわえられ加えられれば死んでいたかもしれない。


「どうせ紫に言われてきたんでしょう?それで殺されるのはちょっとね・・・・・・他に理由があるとしたらこれぐらいかしら」


「・・・・・・」


(幽々子は紫に言われて自分がここに来たってことを言っていない・・・・・・つまり最初から分かっていたっていうことなのか・・・・・・)


「レイ。そんなところにいないで上がりなさい」


(まあ、そんなことどうでもいいか)


 自分は幽々子の招かれ屋敷に上がった。


「座って頂戴」


「・・・・・・」


「まずはここの事を話したほうが良いかしら」


「頼む」


「さっきも言ったけど、ここは白玉楼。冥界の一部。ここで私は魂の管理をしているって訳」


(白玉楼・・・・・・確か死んだ文人が集まる場所では・・・・・・?)


「まあ文人が死んだ場所とかは置いといて・・・・・・」


(心を読まれている!!)


「そんなに驚かなくていいじゃない」


「いや、驚くわ!!」


「それよりあなたが気になるのは妖夢ちゃんの事じゃない?」


「まあな」


「まず妖夢ちゃんが急に襲ったことを許してくれないかしら?彼女は師の教えをきちんと守る真面目な庭師でね」


(・・・・・・真面目か・・・・・・真面目の割には師からの教えを間違っているような気もするんだが・・・・・・)


「ここの庭も管理していてね、妖夢ちゃんがいなくなるとこっちも困るのよ・・・・・・」


(ここのには全部の手入れをしているのか・・・・・・すごいな)


 見た限り、ここの庭は相当広かった。それの手入れを一人でやっているのは本当にすごい。


「別に謝らなくていい。自分が侵入したのも事実だからな」


「あら、そう?でも・・・・・・彼女、真面目ちゃんよ。そんなことで引き下がると思えないわ」


「もし、けじめをつけたいって言うなら、彼女に決めさせるべきだ」


「・・・・・・」


「失礼します」


「あら、ナイスタイミングね」


 妖夢がお茶をもってきてくれた。そして自分と幽々子の前に湯呑を置くと、彼女は自分の方を向いて座る。


「先程はすみませんでした!!」


 急に土下座をした。


「幽々子様のお客様に刀を振るってしまったことどうお詫びすればいいものか・・・・・・」


(何も、そこまでしなくては良いんだがな・・・・・・自分だって悪かったし・・・・・・)


 しかし、なぜだか懐かしく感じた。


(昔こんな奴がいた気が・・・・・・そんなことはないか・・・・・・まあ、まずは・・・・・・)


「頭を上げてくれ魂魄妖夢」


「!!」


 彼女は再び驚いたらしい。顔を見なくてもわかる。


「なぜ、私の名前を?」


「確かに今のは私も驚いたわ。魂魄って言葉使っていないわ・・・・・・さっきの喋り方からすると、紫にも教えてもらっていなかったわよね?」


「・・・・・・その白楼剣を見て思い出したんだ。その刀は魂魄家にしか扱えない刀。そして、その左胸についている紋が魂魄家の物だってことをな」


 妖夢の持っている刀を指さす。


「・・・・・・貴方何者かしら・・・・・・?」


「さあな、わからん。記憶がないんでな」


「フフッ、そうね。記憶がない奴に何者と聞いても答えられるわけないわね」


 ズズッーーーーーー


「ごちそうさん」


 お茶を一気に飲み干す。ちょっと熱かった気がするが美味しかったのは変わりない。


「美味しかった。また来たときに出してくれ」


 彼女はうれしかったのだろう。その言葉を放った後、彼女の顔が少し赤くなった気がした。


「あら、もう行くのかしら?次行く場所のあてはあって?」


「いや、ないが・・・・・・」


「なら、もう少しゆっくりしていきなさい。幻想郷巡りなんて急ぐことじゃないでしょう?」


(・・・・・・まあ、それもそうだな・・・・・・)


「それならお言葉に甘えて」

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