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東方夢幻録  作者: 桜梨沙
序章 鳴り始めた序曲《オーヴァーチュア》 〜overture〜
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第二十四話 永遠亭にて

 リコが倒れたのを確認した後、すぐにフェンルオとレンの状態を確認する。


「・・・・・・こりゃあ、ひどいぞ・・・・・・」


 レンの方はリコの銃弾の、鋏にも切られていないし、少量の出血だから大丈夫だろう。しかし、問題はフェンルオの方だ。出血がひどい。回復手段をもっていない自分にはどうすることも出来ない。


(っ、どうする?・・・・・・このままじゃフェンルオは死ぬぞ・・・・・・)


「お困りのようね、レイ」


 目の前にスキマが開いた。


「紫!!霊夢!!ちょうどよかった」


 二人は辺りを見回した。


「何があったのかしら・・・・・・と、問いたいけれども今は事を聞いている場合じゃないわね」


「医者は幻想郷にいないのか!!?」


「安心しなさい。ちゃんといるわ。すぐに永遠亭に運びましょう。藍、橙、聞こえてるかしら。」


「はい、紫様」


「はい、紫しゃま」


「レンとフェンルオを永遠亭まで運んで頂戴」


「はい」


「はい」


 二つの返事が聞こえた後スキマの中から九狐と化け猫が出てきた。


「その二人は?」


「藍と橙の事?ああ、そう言えば紹介してなかったわね。この九狐、藍の方は私の式。で、化け猫、橙の方が藍の式よ」


「レイさんですね。紫様からあなたの事は聞いています。どうぞよろしくお願いします。ほら橙も」


「橙です。よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしく」


 そう言って二人は自分に対してお辞儀をすると、レンを橙が、フェンルオを藍が背負いスキマの中へ消えて行った。橙の方は足元がふらついていたが・・・・・・。あと、倒れているのはリコだけ。しかし、霊夢も紫もリコを背負う素振りを見せない。


「・・・・・・リコは誰が運ぶのか?」


「あなたが運びなさい」


「は・・・・・・?」


 思いも寄らない返答だったため、聞き返す。


「だから、あなたが運ぶのよ」


「いやいや、なんでだよ!!?普通女の霊夢か紫が持つのが普通だろう!!?」


「つべこべ言わずに運びなさい」


 どうやら、何を言っても無駄なようだ。


(・・・・・・仕方がない・・・・・・運ぶか・・・・・・)


 リコを背中に背負い、スキマをくぐった。


「ここは・・・・・・?」


 出たところは竹林。そして、目の前には屋敷があった。・・・・・・と言っても平安時代の豪邸っぽいが・・・・・・。


「永遠亭よ」


「永遠亭?」


「医術の天才がいる所よ」


(天才・・・・・・)


 賢者から天才と呼ばれるのだから、相当の腕なのだろう。


「こんな夜中に何の用かしら?」


 声が聞こえたかと思うと、屋敷の門が開く。そこには、赤と青の服を来て、赤十字の描かれた青のナース帽を被った白髪の女性が立っていた。


「あら・・・・・・今日は人が多いわね。沢山知らない人がいるのだけど」


「それは後で説明するわ。それより急患よ」


「・・・・・・分かったわ、連れてきて」


 そう言うと屋敷の中に入って行った。それに続いて紫、藍、橙、霊夢が入り、最後に自分が入る。そして彼女の言われた通りに三人をベットに寝かせた。


「この子が危ないわね・・・・・・」


 彼女はフェンルオを見ながら言う。


「ほかの二人は打撲程度でしょうけど、彼だけは撃たれた傷がある・・・・・・それも妖力、いや違う、これは神力・・・・・・どちらにしても治療が厄介なことに変わりはないわ」


「能力だ・・・・・・」


 レンが目を覚ました様だ。上半身をベットから起こす。


「能力?誰の?」


 彼女は聞き返した。


「リコだ。断ち切る程度の能力が付与された攻撃を喰らったんだ。筋肉、血管、神経などを全て切り離しちまうんだ」


「じゃあ、その能力を無効かしなければかれは治せないのね・・・・・・そんな薬作れるかしら・・・・・・」


「大丈夫だ、その必要はない」


「その必要はないって・・・・・・!!?」


 レンが腕をフェンルオの方に伸ばす。するとフェンルオの腕からは紅い糸が出てき、フェンルオの傷口を縫っていった。それに皆、驚いた。


「これで傷は塞がった。すぐに目を覚ますだろう」


 レンはベットから立ち上がり、リコの寝ているベットの傍に行く。


「あなたの能力ってところかしら・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・」


 女性の質問にレンは無言でいる。


「そろそろ私たちの事を話した方が良いでしょう。」


 目が覚めたフェンルオがベットから上半身を起こし言う。


「フェンルオ、起きたのか」


「ええ、おかげ様で助かりました」


「無理するなよ」


 ベットからフェンルオは立ち上がろうとする。しかし、まだ完全に治ったわけじゃないようだ。足元がおぼついている。それを支えるようにレンが駆け寄る。


「さあ、レン。私にかまわず」


「・・・・・・わかった・・・・・・」


「俺たちは数百年前に幻想郷入りしたものだ。俺と、妹のリコは神として、そしてフェンルオは俺たちを護る守り人として・・・・・・」


「あらそうなの?あなた達の姿はここ数百年見ていなかったのだけど」


「それは当たり前だ。俺たちは幻想郷から切り離された空間で生きていたからな」


「切り離された空間?あなたたちが幻想郷に居られない理由があったのかしら?」


「リコが縁切りの神だったからです」


「縁切りの神?」


「はい、リコは縁切りの神、そしてレンが、リコと対をなす神。いわゆる縁結びの神です」


「それの何が問題があるのよ?」


「願いですよ。人々の」


「・・・・・・・・・・・・」


「最初の方は良かったんです。悪いことから縁が切れますように、病気から縁が切れますようになどの不幸や災いから縁を斬ってほしいという願いだけでした。しかし、いつからかそういった願いは消えていき、その代わりにあいつとの縁が切れますように、そしてあいつが不幸になりますように、あいつを殺してほしいなどの不幸や殺人を願う者が増えていったのです」


「・・・・・・その願いはどうしたのかしら・・・・・・?」


「叶えなくて良い俺は思っていたが、心優しいリコはそう思わなかったようでな、全ての願いを叶えたんだ。だが、それがいけなかった」


「そんな感謝もされない復讐まがいの願いを叶えていくことによってリコは少しずつ変わっていきました」


「変わっていたって・・・・・・どんなふうに?」


「無差別で生物を殺し始めたんだ。まあその時はある男が俺たちと一緒にリコを元に戻す手伝いをしてくれたおかげで一件落着となった」


「そして身を隠していた・・・・・・と」


「そう言うことです」


「じゃあ、なんでまた幻想郷に戻って来たのかしら?」


「戻る気なんてさらさらなかったさ。しかしな、ある日不気味な男がやってきてリコに何かまじないをかけやがった」


「そのせいでリコは暴走。そして幻想郷に入ってしまったということです」


「そしてレイさん。あなたと出会った」


「最初はあなたを助けて、幻想郷の事を聞こうと思っていたんですが、逃げられてしまいましてね」


「手合わせして私たちが勝って幻想郷の事を聞き出そうとしたんですが、返り討ちに合ったということです」


「あの朝、レンは昨日も戦いたくて仕方がなかったんだっていったのは・・・・・・」


「その男に逃げられてしまったからです」


「じゃあ、レンが見つけたって言ったのは・・・・・・」


「あんたがその男に似てたからだ」


(・・・・・・やっと話がつながった・・・・・・)


「こんな状態で申し訳ないのですが、博霊の巫女と妖怪の賢者、そしてレイさんに折入ってのお願いです、その男を捜しだしてもらえませんか?」


「俺からも頼む、そいつは何があっても許せないんだ、頼む!!」


「捜すって言ったって、容姿が分からなきゃ探しようがないじゃない・・・・・・」


 霊夢は腕を組みながら言う。


「その心配はありませんよ」


『!!!!!!??』


 聞き覚えのある声が外から聞こえてきた。


「あいつだ!!」


「行きましょう、レン!!」


 フェンルオとレンは支えながら、そしてその後ろを自分たちが付いて行った。


「仲が良いことですね・・・・・・」


 庭の月を背景に一人の男が立っている。迷いの森で会ったあの男だ。


(・・・・・・蟲の音が消えた・・・・・・)


 蟲たちのこの男を警戒しているようだ


「またお会いしましたね、レイさんとでもお呼びすればよいでしょうか?」


「またあんたか・・・・・・」


 ほほ笑んでいるのが少し不気味だ。


「先程の戦い、見物でしたよ。素晴らしい。やはり、あの時殺さなかったのは正解でしたね」


「あなた、何者かしら?」


 紫は鋭い眼つきで男を睨む。


「おお、怖い怖い。そんな顔をなされては、美しい顔も台無しですよ、妖怪の賢者」


 男が紫の真後ろに急に現れた。


「!!?」


 それに驚いた紫。瞬時に手に持っていた扇子で男を払う。しかし、男にそれは当たっておらず、気が付けば男は自分の目の前にいた。


「私の名前はグラシャラボラス。以後お見知りおきを」


「何を企んでいるのかしら?」


「それをわたしが言う事ではありません」


「・・・・・・後ろに何か居るって訳ね・・・・・・」


「そう言うことです。あくまで私はあのお方の配下。私が出来ると言えばアドバイスをすることぐらいですかね・・・・・・」


「アドバイス?」


「はい。まあアドバイスと言ってもそんな大したものではありませんが・・・・・・・・気を抜くと、死人が出るかもしれませんよ」


 さっきまでほほ笑んでいた顔が一気に怖くなった。


「冗談はよしなさい」


「ではこれで」


「待て!!俺たちの話が終わってない!!」


「ああ、貴方達ですか確か・・・・・・レンさんとフェンルオさんですっけ?何か私に話すことでも?・・・・・・ああ!!妹さんの事ですね!!今は安心してもらって結構です。妹さん、次、目を覚ました時には、正気を失っていた時のことは夢のようにさっぱりと忘れてしまっていますよ」


 そう説明すると


「では」


 と、言って自分たちの目の前から姿を消した。


「おい、待て!!」


「・・・・・・相当厄介な異変になりそうね・・・・・・」


「心して異変に臨まないといけないわよ」


「判っているわよ・・・・・・」



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