第二十二話 鋏少女
レンの妹を捜しに、もうかなりの時間が経つ。いつの間にか空はオレンジに染まって、日も沈みかけており、もう人を捜せる状態ではなかった。
「今日の所は引き上げるか・・・・・・」
(自分は幻想郷のことについてはまだまだ乏しいんだ。夜中に人探しなんてものをすれば自分も迷うのは確実だ・・・・・・)
「フェンルオにもしなくていいって言われたしな」
実はあの後石段を下りた先にはフェンルオが待っていたのだ。
「なんだ?まだなにかあるのか?」
「ええ、リコの特徴について伝えていませんでしたから、それを伝えに」
「そう言えばそうだったな・・・・・・」
その後フェンルオはリコの特徴ついて話す。
「つまり、でかい裁ち鋏を持った少女を捜せばいいんだな?」
「ええ、背丈が博霊の巫女の首ぐらいの少女をです」
「分かった」
「お待ちなさい」
そう言って立ち去ろうとすると、フェンルオが呼び止めてきた。
「なんだ?まだ何かあるのか?」
「決してバッサリ切ってという言葉を言わないようにして頂きたい。特に夜は」
「なぜだ?」
「・・・・・・まあそんなこと気にしないでください。あと夜はリコの捜索はしなくて結構です。流石に夜まで働かせるわけにはいきません。昼の労働分はお金を払います」
「フェンルオ!まだなのか!?」
後からレンの声が聞こえてくる。
「では、私はここで」
そう言ってフェンルオは自分の前から立ち去ったのであった。
(気にするなと言われたら逆に気になるよな・・・・・・)
そんなことをおもいながら家路を歩いていた。
「もう夜か・・・・・・」
人里に着いた時には太陽はもう完全に沈んでおり、代わりに空には月と星々が浮かんでいた。
(少し急ぐか・・・・・・)
速足で人里をぬけた。
一方そのころフェンルオとレンは森の中で何かと戦っていた。
「くっ・・・・・・夜になると強くなるのは少しずるいですね」
戦っていたのは一人の少女。そう、リコだ。しかし、彼女は裁ち鋏を使っていない。二人の攻撃を全て避けている。
「なんだ・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・」
急にリコの動きを止めたかと思うと不敵な笑みを浮かべると二人の前から姿を消した。
「逃げたのか・・・・・・?」
「いいえ、そんなはずがありません。あの状態で戦闘を放りだすようなことはしませんよ・・・・・・まさか!!レン、リコは今どこに⁉」
「待ってくれ。えっと・・・・・・!!やばいぞ!!レイの近くだ!!」
「やはりそうでしたか・・・・・・彼には釘を刺したのですが・・・・・・」
「まさか、あの言葉を言ってしまったのか!??」
「今の状況からそうしかが考えられないでしょう」
「急いで行ったほうがいいんじゃないか?」
「そうみたいですね」
二人は急いでレイの元へ向かった。
一方その頃レイは自分の家のある森の前に来ていた。周りは人どころか動物一匹すらいない。
「ここも判りずらいよな・・・・・・」
入り口はちょっとした向け道のようなところなのだが、判りずらいったらありゃしない。
「ここの入り口も、木をバッサリ切って見やすくすれば・・・・・・」
昼間フェンルオに言われたことを思い出す。
「決してバッサリ切ってという言葉を言わないようにして頂きたい。特に夜は」
言ってしまった。しかも夜に。
「・・・・・・・・・・・・」
ゾクッーー
(この感じ・・・・・・嫌な予感が・・・・・・)
背中で悪寒が走る。
ズシャッ!!
後方からは金属の擦れるような耳障りな音が響いた。恐る恐る背後を振り返る。
「な、なな・・・・・・」
そこには少女が立っていた。しかし、ただ少女が立っていたのだけなら驚くことはない。彼女が持っている物に問題があるのだ。多分彼女が探していたリコ。しかし想像していたのと全く違う。異常なほどに目が赤い。まるで・・・・・・狂気をまとっているかの様に。
(そんなことより問題なのは彼女の持っている赤い裁ち鋏だ・・・・・・でかいとは聞いていたがあそこまででかいとな・・・・・・)
軽く自分の胸の高さまである。
(あんな鋏で挟まれたら全部切れちまうぞ・・・・・・・)
リコはゆっくりと近づいてくる。まるで狙った獲物を逃さないようにするために。
「・・・・・・・・・・・・」
彼女が不敵な笑みを浮かべたその瞬間、彼女は襲い掛かってきた。
「うおっ⁉」
いきなり首を狙ってきた。鋏に捉えられれば一撃であの世行き。
(そんなことこっちからも願い下げだ!!)
刀を抜き、リコの方を向く。しかし、その時にはすでにリコは自分の眼の前にいた。
「!!!?」
ステップで避けようとするも、鋏は鞘を捉え、粉々に砕いた。
「おいおい嘘だろう!!!?」
流石に鋏であんなに簡単には砕ける物ではないはずだ。
(これは結構厄介な戦いになるぞ・・・・・・)
一旦、バックステップで距離を取る。
「・・・・・・な⁉」
彼女の裁ち鋏が二つに分裂した。そのうち刃が分厚い方の先をこちらに向けてきた。
バキューーーーン!!
突然銃声があたり一帯に響く。
「ぐはっ・・・・・・」
痛みで肩をおさえ、膝を折る。彼女の武器の先からは煙が出ている。
(銃だと!!?そんなの聞いてないぞ!!?)
そんなことを考えている間に彼女は距離を詰めてきた。そして分解した武器をまた一つも裁ち鋏に戻し、自分の眼の前に立った。
「・・・・・・・・・・・・」
そして再び不適な笑みを浮かべ、裁ち鋏を首にあてる。
(このままじゃ、確実に殺られる・・・・・・)
しかし、この状態では動けない。死を覚悟する。その時には、二枚の刃は自分の首で合わさろうとしていた。




