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東方夢幻録  作者: 桜梨沙
序章 鳴り始めた序曲《オーヴァーチュア》 〜overture〜
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第一話 始まり

「ん・・・・・・んぁ・・・・・・」


(うぁ・・・・・・まぶ・・・・・・し・・・・・・い・・・・・・)


 久しぶりに感じた光はとても眩しく、まるで薄暗い部屋で読書をしていて、いきなり電気をつけられたみたいな気分だ。


「・・・・・・・・・・・・」


 ベッドから半身を起こす。窓からは柔らかい木漏れ日が差し込んでいた。


「う・・・・・・う・・・・・・せかいが・・・・・・ゆがんで・・・・・・」


 身体が少しけだるく、動かすだけで物凄い疲労と目眩が襲ってくる。


「なぜ・・・・・・こんな・・・・・・」


 ガチャッ......


「ジ・・・・・・ジ・・・・・・あ・・・・・・あ・・・・・聞こえていますか?」


 急に近くにあった機械に電源が入った。


「これを聞いているということは、あなたが目覚めたって事ですよね。おはようございます。何年間眠っていたかは、私にも判りませんが、この音声はあなたが目覚めたときに流れる仕組みになっています」


(この声・・・・・・聞き覚えが・・・・・・ある・・・・・・)


「時間がないので、いきなり本題に入らせていただきます。目覚めたばかりで本当に申し訳ないんですが・・・・・・頼み事があります」


(頼み事・・・・・・?)


「幻想郷を守ってください」


「・・・・・・・・・・・・ハァ?」


 機械から流れた言葉に驚き、つい思っていたことが声に出てしまった。


「あなたが目覚めるとき、幻想郷に危機が訪れる・・・・・・私の予言そう出ていたんです」


  (いやいやいや・・・・・・意味が判からん。ていうか、自分が目覚めたら幻想郷に危機が訪れるって・・・・・・自分は厄災の類なのかよ・・・・・・)


「この危機は博霊の巫女の力をもっても、喰い止めることは不可能に近いことなんです・・・・・・」


(博霊の巫女?)


 聞きなれない言葉だ。しかし、巫女というぐらいだ。何かの役職であることは理解できた。


「だから、どうしてもあなたの力が必要なんです・・・・・・あなたは幻想郷を救う唯一の鍵・・・・・・お願いです、私達の幻想郷を守ってください・・・・・・お願いし・・・・・・ま・・・・・・す・・・・・・」


 ガチャッ......


  そこで音声は途切れていた。 


(おいおい・・・・・・いくらなんでもそれはないだろう・・・・・・申し訳ないって言われたって、目覚めたばかりで、今の状況すら理解出来ていないのに、幻想郷を守って欲しいなんて、この声の蟲は自分をからかっているのか?それとも無責任なのか?ていうか・・・・・・幻想郷ってどこの事なんだ?)


 頭を回転させ、少し考えるが、結局答えが出ることはなかった。


「まぁ・・・・・・頼まれたんだし・・・・・・なんとかしてやらないとな・・・・・・」


 しかし、複雑な気持ちにだった。声の主は自分のことを信用しているのか、それとも逆に馬鹿にしたいのか、本当に判からなかった。


(だが・・・・・・何をすれば・・・・・・)


「・・・・・・とりあえず、ここを探索してみるか・・・・・・」 


 気力でベッドから立ち上がり、部屋を見回す。部屋には机とベッドしかない部屋だった。まずは、机に近寄り、机の引き出しの中身を確認する。


「・・・・・・・・・・・・」


 木と気が擦れ合う音が部屋中に響く。しかし、何も得ることはできなかった。引き出しを元の場所に戻し、部屋を出る。


 廊下に出た。三つの扉が目に入る。


「ハ・・・・・・ハァ・・・・・・ィーークシュィ!!」


 思わずくしゃみが出た。埃っぽい。何年も掃除されてなさそうだ。


(・・・・・・掃除してぇ・・・・・・ん・・・・・・?)


 首に違和感を感じた。


「なんだこれ・・・・・・」


 首には漆黒の鈍い光を放つ金属のような物で作られた(かせ)がはめられていた。両手両足にも同じ物がはめられている。


(自分は囚人かよ・・・・・・まぁ、今はどうでもいいが)


 枷の事は気にせず、一つ目の扉の前に立つ。


「・・・・・・・・・・・・」


 ドアノブに手をかける。しかし、扉は開かない。


「ふんっ・・・・・・!!」 


 どんなに力いっぱい押したり、引いたりしても扉はびくともしなかった。


蝶番(ちょうつがい)()びているのか?)


 何度も扉を開けようとするも、開く気配はない。


「・・・・・・仕方無い・・・・・・」


 この扉を開けることは諦め、二つ目の扉に手をかける。


「・・・・・・あぁ?」


 この扉には鍵がかかっているみたいだ。ドアノブが回りすらしない。


(これも開かないのか・・・・・・?)


 この扉も開けるのは諦める。三つ目の扉は・・・・・・いうまでもない。当然開かなかった。それどころか、ドアノブすらなかったので開けることすらできなかった。


(なんなんだ・・・・・・この家は欠陥住宅かよ・・・・・・)


「はぁ・・・・・・」


 ため息をつきながら、壁に寄り掛かる。その時、


 ギィィイ・・・・・・


 耳障りな音と共に壁が回転する。


「うおっ!?」


 壁が回転するなんて予想もしていなかったので、危うく体勢を崩しそうになる。


「隠し・・・・・・扉・・・・・・?」


(本当にこの建物は何なんだ?)


「ハ・・・・・・ハァ・・・・・・ィーークシュィ!!」


 この部屋も廊下と同じく、埃っぽかった。


「ん・・・・・・?」


 部屋の中心には台があった。その上には本のような物が載っている。


(なんだあれは?)


 気になったので、台に近付く。その本は大量の埃を被っていた。そして、とても分厚い。埃を払う。すると、あかがね色の表紙と、金色の文字が浮かび上がってきた。


「・・・・・・読めない・・・・・・」



 題名と思われる文字はところどころが(かす)れており、何が刻まれているのかのを判別することは出来なかった。


「・・・・・・・・・・・・」


 とりあえず、適当に何ページかめくってみる。


「!!」


 とあるページに罹れていた単語に目が留まり、手も止まる。


「幻想郷・・・・・・」


 そう書かれた所を指でなぞる。


「幻想郷とは、東の国の山奥の辺境の地に存在する場所。人間や妖怪を始めとする数多くの種族が暮らしている。

 外部とは博霊大結界で遮断されているため、外部から幻想郷の存在の確認、及び侵入はきほんてきに不可能とされている。しかし、幻想郷には外の世界で失われ「幻想になった」ものが集まるとされており、外の世界で減少した生物や、消えつつある道具などが現れることがある・・・・・・」


 最初の部分を読んでみたものの、半分以上は頭に入って来なかった。


「・・・・・・長い・・・・・・」


 この後にも文が続いている。幻想郷について詳しく書かれているようだ。だが、あまりにも長い文だったため、途中で読む気が失せていまった。


(・・・・・・人間や妖怪を始めとする数多くの種族が暮らしているって本当なのか?仮に本当なら、人間ってかなり危ない状態なんじゃ・・・・・・)


 書かれていることはにわかに信じられなかったが、この目で真実を確かめていない以上何も言えない。


(・・・・・・まぁ、考えても無駄か・・・・・・)


 本を閉じ、部屋を出る。この階で調べられそうな場所はないようだ。螺旋階段の方へと足を向け、階段を一段一段下りる。

 下の階には上の階とは全く異なる景色が広がっていた。見た感じはバーだ。カウンターの後ろの棚には、数えきれないほどの酒瓶が所狭しに並んでいる。


「寒っ・・・・・・」


 クーラーが効いているようだ。寝起きの自分には寒すぎる。


(幻想郷を救う鍵とか言われても、いまいちピンとこないしな・・・・・・大体、救ってほしいなら、なにをするべきなのか教えてくれよ・・・・・・)


「はぁ・・・・・・」


 再びため息をつく。


(こんな時は・・・・・・どうすればいいんだ・・・・・・?)


 近くにあった椅子に腰かけ、考える。


(幻想郷を守ると言われても、これだけじゃ情報が少なすぎる。まずは情報収集しないとな・・・・・・)


「それなら・・・・・・人が集まっている場所に向かうべきだな・・・・・・」


 そのためにはまず誰かに会って人が集まる場所を聞き出さなければいけない。しかし、自分にそんなあてはなかった。


「とりあえず・・・・・・外に出るか・・・・・・」


 外へと繋がる扉を見つけた。手ちあがり、扉に手をかける。


「ん・・・・・・?」


 扉に神が貼りつけられている。


「なになに・・・・・・護身用にもっていくこと・・・・・」


 メモ書きと共に矢印が描かれている。その矢印の方向に目線をやる。そこには紅色の鞘に納められた一本の刀が壁に立て掛けて置いてあった。


(丸腰よりは少しはマシか・・・・・・)


 刀を腰に差し、ドアノブに手をかける。


「・・・・・・ん?・・・・・・かっ・・・・・・堅・・・・・・」


 上の階と違って開きはするのだが、この扉も蝶番が錆びているのか、あまり開かない。


「ぐ・・・おぉ・・・・・・」


 ギィギィィィーー


 扉が耳障りな音を立てる。なんとか人が通れるまでは開いた。


「・・・・・・・・・・・・」


 扉を開いた先には、鬱蒼うっそうとした森が広がっていた。その景色に自分は息を飲む。


 ピチピチピチピチ......


 鳥のさえずりが森中に響き渡り、心地良い風が木々の合間を通り抜けていく。


「どこを進めばいいんだ?」


 案内板は見当たらず、道もない。


「・・・・・・とりあえず、適当に進むか・・・・・・そうすればいつか森を抜けて、人と会えるさ」


 そんな軽い気持ちで鬱蒼うっそうとした森の中を進んでいった。



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