第十六話 紅魔館当主
咲夜が立ち止まった。
「着いたわよ、ここがお嬢様のお部屋」
そこからしばしの時間が流れた。どちらも扉を開ける気配がない。
「開けてくれないのか?」
思い切って聞いてみることにした。
「それくらい自分で開けなさいよ」
(じぶんは一応、客人なんだが・・・・・・しかし、そんな文句を言えば、否応無しに心臓をグサッて刺されるだろうな)
想像するだけで悪寒が走る。
(そうなるくらいなら・・・・・・)
扉に手をかけ、扉を開く。そこには、椅子に座って偉い態度をとっているレミリアがいた。
「やっと来たのね」
手を組んでこちらを見てくる。
「咲夜、紅茶を入れて頂戴」
「かしこまりました」
咲夜の姿が目の前から消える。どうやら主に命令されれば客人をもてなす気はあるらしい。
(命令の時じゃなくても、もてなしてもらいたいものだな。だが・・・・・・)
「ここにあんまり長居する気はないんだ・・・・・・要件があるならとっと言ってくれ」
(こっちはチルノも探さなきゃならないんだ・・・・・・)
「まあそんなこと言わずにまずは座りなさい」
「いや、結構。立って聞かせてもらう」
「そう」
「お嬢様、紅茶をお持ちしました」
「ありがとう、咲夜」
その言葉と合図としたかのようにレミリアは用件を話す。
「要件はもうないのよ。宴会の時にも言ったはずよ。暇だったら来てと。あなたの強さが知りたかった。それだけなの。怪我を負わせてすまなかったわね」
「そうなのか?それなら自分は帰らせてもらうぞ」
「フラーン。どこにいるんだーー?ここか?」
後ろを振り返ると探していた人物がいた。
「チルノ!!お前どこにいたんだよ」
「ずっと紅魔館でフランを捜していたんだ」
「フラン?フランなら隣の部屋にいるはずだけど」
「隣にの部屋にはいなかったぞ」
チルノは左の方向を指さす。
「フランの部屋はこっちよ」
レミリアはその反対の方向をさした。
「そうなのか?」
そう言うとチルノは右に走っていった。
「コラ、待て!!」
自分もチルノを追いかける。
「あらあら、騒がしいわね」
「いいのですか?妹様外に行ってしまわれますが?」
「フランは絶対に外へ出しては駄目よ。」
「かしこまりました」
チルノを追いかけると、隣の部屋の扉からはチルノと、金髪の少女が出てきた。
「チルノ、やっと見つけたぞ!!」
チルノの襟を掴む。
「何するんだ、レイ!!?」
「お前が勝手に入っていくから、無駄な体力使っちまったじゃないか!!」
「でも、フランは見つかったぞ」
「たとえそうだとしてもだ」
金髪の少女がこちらを見てくる。
「あなた・・・・・・誰?」
怯え切った目でこちらを見てくる。
「自分か?自分はレイ。お前さんこそ誰なんだ?」
「私は・・・・・・」
「妹様、そこまでです」
後ろから咲夜が歩いてくる。すると急に少女が敵意を向き出しにする。
「外に行くのは駄目だといつも言っているじゃない」
レミリアも部屋から出てきた。
「何よ!!咲夜もお姉様もいっつも私だけ!!!!!!」
「私はこの館の主よ。主の言うことは・・・・・・」
「またそう言ってお姉様は私を縛りつけるの!!?もうたくさんなのよ!!!!!!」
「言う事が聞けないのかしら、それならお仕置が必要ね」
険悪な雰囲気になってきた。
(おいおい、なんか・・・・・・)
本能が逃げろと言っていた。
「二人ともそこまでよ!!」
大きな声に皆驚き一斉に声のする方を向く。そこにはパチュリーと小悪魔がいた。
「レミィ、客人の前よ、紅魔館当主たる者が何をしているの?」
パチュリーのその一言で場に張り詰めた緊張感は消える。
「そうだったわね」
「見苦しいところを見せてすまなかったわ」
「いや、構わないさ。それより自分たちはここら辺でお暇させていただくよ。」
窓から外を見れば、空がオレンジ色に染まっていた。
「ほらチルノも帰るぞ!!」
チルノの襟を引っ張り、チルノを引きずりながら玄関へと向かう。
「咲夜、レイを玄関まで送って差し上げて」
「かしこまりました」
咲夜は自分たちの後ろを歩いて追いかけてくる。
「フラン、後で私の部屋に来なさい。これは命令よ」
「・・・・・・」
フランは黙って自室へと戻っていくのであった。
自分たちが門の前に来た時には、空には星が輝いていた。
「あの四人はもう家に帰らせたわ」
「すまない」
静寂に包まれる。
「なあ、あんな対応していいのか?」
「さっきの事?」
「そうだ」
「・・・・・・人には人の事情があるわけよ」
「・・・・・・」
「分かってくれるかしら?」
(事情か・・・・・・)
「分かったよ」
「物分かりがよくて助かるわ」
「じゃあ、自分たちはここで」
門を潜り抜ける。右を見てみると、まだ眠っている美鈴の姿があった。
「はぁ、また寝ているのね・・・・・・」
そう言うと咲夜はナイフを取り出す。
「お仕置よ」
グサッ。
美鈴の額にナイフが突き刺さる。
「イッターーーーーー!!」
叫び声をあげながら美鈴は起きる。
「おはよう、美鈴」
咲夜は不気味な笑顔を浮かべている。
「さ、咲夜さん!!?おはようございます」
「そして、おやすみ♡」
「えっ、ちょっ、まっ、」
咲夜のナイフが美鈴の胸に向って放たれる。
(まあ、当然の報いだな。門番の仕事をしていないあんたが悪い)
「ギャーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
さっきより大きい叫び声が、夜の幻想郷に響き渡った




