第十話 異空間にて
あの建物から出て、しばらくの時間がたつ。なんとか人里まで一人でくることができ、飯にもありつけた。
鉄扇もあの後、無理やり懐にしまい両手を後ろに組みながら。人里を歩く。
「さて、これからどうしようかね・・・・・・」
(やることっていたってな・・・・・・結局、博霊の巫女に合っても何も判らなかったし・・・・・・)
「待てばいつかは何事もあっちからやってくる・・・・・・こんなこと昔誰かが言ってたな・・・・・・」
なぜか、ふと思い出したのであった。
「ん・・・・・・?」
いつの間にか、周りから音が全く聞こえなくなっていた。周りを見回すも、誰もいない。
(誰もいなくなった・・・・・・この時間にか?いやいや、ありえない。この時間に歩いている人がいないなんて・・・・・・)
空を見上げる。そこには太陽が・・・・・・
「・・・・・・ない」
そこにあるはずの物がなくなっている。しかし、夜のように暗いというわけではないし、見た目は人里と似ている。
(おかしい・・・・・・ここはさっきの場所とは違う。確かに自分は人里を歩いていたはずだ。じゃここはどこだ・・・・・・?)
何か、違和感を覚える。とりあえず、人を探すことにした。
「・・・・・・あれ?」
見知らぬ場所が続く。いつの間にか迷ってしまったようだ。
「・・・・・・」
いくら歩き回っても、通りにいるのは自分だけ。適当に角を曲がってみるも、人影はない。おかしい気がした。ただ人がいないだけなのに。どこか異質な・・・・・・
「おっと・・・・・・」
何度目かの曲がり角で不審人物と出くわした。あまりにも急だったため素っ頓狂な声が出る。そしてすれ違う。フードを目深にかぶっていて、顔も男か女かもわからない。フードと言っても、パーカーではない。
(こんなのを確か・・・・・・ローブって言ったっけな・・・・・・?)
ファンタジー世界に出てくる魔法使いがよく着てる服だ。狐につつまれたような気分。なんだか悪寒が背中這いずり回る。振り返ると、その人物は離れた位置で立ち止まってこっちをじっと見ていた。
「・・・・・・!!」
何かが飛んできた。急なことにおどろき反応が遅れる。そのせいか頬にかすってしまった。
「ちっ、かすった」
何がかすったかはわからなかったが、雫が頬を伝う。そして、地面に落ちた。それは紅い。血だ。
「・・・・・・なっ⁉・・・・・・血⁉」
昨日した弾幕勝負では、血は出なかった。しかし、今は出ている。それで気付く。
(これは、遊びなんかじゃない・・・・・・)
そんな思っている間に、相手は懐に潜り込んでくる。
「何っ!!?」
腹に一撃入れられ、数十メートル吹き飛ばされる。
「ぐはっ・・・・・・」
吐血してしまった。意識も朦朧とする。
(なんなんだ、あいつは・・・・・・!?)
森であったやつとは違うようだ。ただ一撃が重いのは同じだ。あの男ほどではないが、何度も喰らってれば待っているのは死。
(・・・・・・戦うしかない・・・・・・)
立ち上がった。逃げるという選択肢はない。出口があるのかもわからないこの場所で、逃げ回るのは得策ではない。そう考えたからだ。刀を鞘から抜く。こちらが刀を抜いたのを見て、相手もナイフを取り出す。緊迫した空気の中、二人の距離は少しずつ縮まっていく。先に仕掛けたのは、相手だった。一気に距離を詰めて、ナイフで攻撃を繰り出してくる。それを受け流しながら、反撃をする。しかし、距離が近すぎる。
(くっ、近いと刀が思いっきり振るえない)
有利なのは、完全に相手だ。刀では戦えない。ガキィン。鈍い音を立てて、刀は弾かれる。そして、ナイフが胸めがけて繰り出された。しかし、ナイフが胸を貫くことはなかった。これには相手も驚いたのか、一旦距離を取る。懐を見ると鉄扇がある。あの時、無理やり仕舞っていたおかげで命拾いした。その鉄扇を手に持つ。
(もう、こっちには体力が残ってない、一撃で決めなければ・・・・・・)
再び、相手は襲ってくる。
(まだだ・・・・・・まだ引き付けるんだ・・・・・・)
どんどん距離は縮まる。
(今だ!!)
「鳳凰扇舞!!」
鉄扇を開き、攻撃を繰り出す。横に斬って一撃、タイミングをずらして一撃、突きの一撃、そして最後にもう一撃。合計四撃を相手に喰らわせる。全てをまともに喰らった相手は、膝を折った。
「やったのか・・・・・・?」
すると、相手は目の前から消える。
「ふふっ。また、あそぼうな」
どこからか声が聞こえる。さっきの人物の声だろうか。分からない。
「・・・・・・」
気づいた時には元の場所に戻っていた。沢山の人が楽しそうに暮らしている。
(よかった、戻って・・・・・・⁉)
急に前と同じように眠気が襲ってくる。前回よりも激しく動いたからか、もう意識がほとんどない。
「また、かよ・・・・・・」
自分は意識を失い道端に倒れこんでしまった。




