レイドモンスターとは旧知の仲!
――クエスト出発10分前――
学園から少し離れた場所に4人が着いたのは、どこか別の場所へと繋がる『転移陣』と呼ばれる特殊魔法陣だった。
そしてそこには既に、20代後半に見える容姿の二人の男女が待っていた。
「待っていたわ。魔法騎士序列第98位の一軍在席の『リラ』よ。今回はよろしくね」
「――同じく、魔法騎士序列102位の一軍在席『レックス』だ。宜しく頼む」
双子は早速挨拶をかわそうと二人に駆け寄るが、ふと双子が振り向くと、そこには妙に呆気に取られていたティナとラディンの姿があった。
「マジすか!? よりによって序列100位以上の人にしか称号が与えられない『エースオブアルカディア』の人達が一緒なんすかァ!?」
「残念だが俺は102位だからその称号には当てはまらないけどな」
「レックスだって90位くらいに入った事はあるから、似たようなモノでしょう。さて、時間も惜しいし早く行きましょうか」
その二人の貫禄ぶりにさっきまでのラディンの威勢のよさは何処へやら、ひょこひょことついていく彼の後ろ姿が妙に印象的に映った双子なのであった。
(人付き合いって大変そうだねーシャル)
(力ある者は、より力ある者に叩きのめされる世界らしいからね)
などとボヤキながらも早速6人は新入生歓迎会名目の下に、ダンジョンへ向かう事になった。
* * *
――ガザ地底火炎湖・中層(ダンジョンランク『C+』)――
◆ミッションクエスト:『サラマンドラの討伐』
「うわーなつかしーねシャル!」
「ば、ばか……」
(あ……ヤバ)
いきなり大失言をかますルルナ。もちろんその発言に全員が食いつくが、『図鑑が好きなのね』など『本物を初めて見る気分はどーだ?』などと勘違いしてくれたのがとても幸いだった。
何故なら――まさか幼少の頃に連れられてとっくの昔に攻略済。などとは口が裂けても言えなかったから。
「じゃあ私とレックスで前衛を務めるからティナさんとラディン君は背後からの奇襲警戒をお願いするわ。シャルルちゃんとルルナちゃんは真ん中にいて頂戴」
「はーい、ありがとうございます!」
「手厚い援護に感謝します」
「あら、てっきりもっと怯えるかと思ったけど、随分度胸のある子達ね」
「なに。モンスターを前にしたらそんな口も聞けなくなるさ。じゃあ君達には回復アイテムを預けとくから、万が一にでも傷を負ったら迷わず使ってくれ」
老人の介護でも受けたような手厚い歓迎っぷりに、二人は逆に戸惑うばかりだったがこれまた運よくペーペーの新入りっぽい雰囲気が出てたお陰か難なく前に進むことができたのだった。
――――それから、ダンジョン内を進むことおよそ15分。
道行く脇からは溶岩の湖が形成されており、その場所をじっと見ていたルルナはいち早く『その気配』に気づいた。
(ねえシャル。モンスター来るけど親切に言った方がいいのかなー?)
(そんな事したら僕等の勘の良さを疑われるでしょ……)
(あっ……そっかぁ)
それからして約20秒。前を歩いていたレックスがモンスターの襲来を察知する。
(うーん気付くのがちょっと遅いかなー?。このパーティだと多分最下層は潜れないかなー)
(いや僕等がちょっと特殊なだけで、これくらいが普通だからね……)
普通とはなんだと、ルルナは自問自答しながら眼前に現れたファイアーリザード3匹をのんびり見つめる。
――が、もう少し緊張感を持った方がいいとティナに軽く注意され、ルルナは『仕方なく』しばらくの間怯えていた。
「あの……僕達も少しは戦った方がいいんでしょうか? 見ているだけじゃ申し訳ないというか」
「バッキャロー! 何新入りが出しゃばってんだよ! お前等序列何位だよ! 大人しく先輩様達の戦いを見て学習しやがれってんだ! 死んだら蘇生料取られるんだぞ!? 蘇生アイテムは高いんだぞ!? お前らそんだけの金出せんのかよ、ああッ!?」
――シャルルはとんだ地雷を踏んでしまったと、後悔した。
同時に、通常の人間達は日々こんな世界で生きているのかと、深く学習した日でもあった。
その間に既にモンスターは倒し終わり、再び前を進む一行だった。
「もう少し進めばこの一帯の主でもある『レイドモンスター・サラマンドラ』の住処に着くわ。レックスも二軍の二人も準備は万全にね」
「おっけーすよリラさん! 丁度俺の新技を試すには持って来いの相手ですから!」
皆が準備をする中で相変わらず何をしたらいいか分からない双子だったが、取り敢えず緊張感のある顔をしとけばいいと思い、更に足取りも重くして『誰がどう見ても怖がってますアピール』をするのだった。
――そして一行は奥地に到達する。
中央にある円形状の溶岩池からぶくぶくと音を立てて飛び出したのは――先ほどのファイアーリザードを更が肥大化した巨大な火トカゲ『サラマンドラ』だ。
「あ――あれ、なんだか俺が前見た時より、妙に迫力がないっすか?」
「今日は『火』の曜日だからな。火属性の恩恵を最も強く受ける日だぞ」
「全く……二軍にいるんだから、それくらいチェックしないとダメよ?」
注意の矛先は今度はラディンへ。
しかしその矛先はいつ何処へ向けられるのか完全に読めない双子は、今度こそ油断せずに構えるのだった。
つんざくサラマンドラの雄叫びが6人を耳に伝わり、いよいよ戦闘の幕開けとなる。
鞭を持ったリラと大剣で切り込むレックスが積極的に前衛を張り、隙あらばティナが支援魔法を唱え、ラディンが死角から片手剣で氷属性の技を叩き込む。
そして注目の双子はと言えば――
(やっほーサラマンドラ。久しぶりだねー元気してたぁ?)
『げ、見た事あると思ったらやっぱりルルナ嬢ちゃんですか! おおっとシャルル様も! 嬢ちゃんは10年経って増々可愛くなられましたねぇ!』
(あまり褒めるとルルナはすぐ調子に乗るからその辺にしてね。最下層にいる『マザーサラマンドラ』も元気かな?)
『おふくろも変わらず元気ですぜ! 折角来たんですから、顔を出してやったら喜ぶと思いますよ』
(そうしたいんだけどねー。ルルナ達今日からアルカディア学園に通う事になったから、気軽に来れなくなるかも)
『そうですかー残念です。マリス様もお変わりないですかね?』
(母さんは相変わらずだよ。今度会ったらサラマンドラ達が会いたがってたって言っとくから)
『おーそうですか、そいつはありがてえです! いやはや、平和になったのはいいんですがそのお陰であっしらが火属性モンスターの代表格に勝手にされてしまって、今じゃ特訓用モンスターとして戦わされてる始末ですぜ。毎日こいつらの相手するのも疲れるんですよ!』
(まあ最下層まで行けるのなんて、普通の人間達じゃ一握りくらいだしね……)
『そうなんですよ! だからマリス様になんとかお伝えくださいよー! 引退したとはいっても、まだ魔王としての発言権はあるんじゃないですか!? このままじゃアッシら過労死してしまいやす!』
(わ、分かったから……。そっちもそっちで大変だね)
『全くですわ。――じゃ向こうもそろそろ終わらせたいみたいなんで』
(時間が空いたら今度二人だけで来るから! そしたらちゃんと『遊ぼー』ね!)
『じょ、嬢ちゃん達と遊ぶのはとっても疲れるんで、アッシはこうやって話すだけでいいですわ……』
――などと、10年ぶりにあった魔王の配下。即ち双子にとっては旧知の間柄となるモンスターとの再会に喜びながら、必死で戦闘を繰り広げる4人そっちのけでしばらく懐かしんでいたのであった。
(モンスターでも人付き合いってあるんだねー大変!)
(うーんこの場合は付き合いというか何というか……)
お互いに思いを忍ばせる頃にはいつの間にか戦闘も終わっていた。




