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僕は無双が出来ない。  作者: 朝夜
0.ぷろろーぐだそうです
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身体測定で『合格最低ライン』を掴まないと、何もかも始まらない!

 アルカディア学園とは全世界に多くある魔法学校の中でも名門中の名門で選りすぐりのエリートが集まる場所としても有名である。

 ここはとにかく結果と実力のみが試される学園で、魔法か武道のどちらかに長け、成績をしっかり残さなければたちまち退学となってしまう。

 更にこの学園の最大の特徴は在席人数も多いため一軍ファースト、二軍セカンド、三軍サードと別れて、成績あるいは実力上位者に応じて編成される『トップチーム制度』を使っている事だ。性格や素行に余程の問題が無い限りは、ほぼ実力と成績に応じては配属される。


 学園内での受講内容は魔法や武道などの一般的な講義を初めとして、魔法騎士連盟が開催している他学園との実戦形式の魔法試合や、世界各地に点在するダンジョンに挑戦する実技講習などもある。

 実力が高い一軍に在席していればそれだけ試合に出られる回数やチャンスも増えたり、より高難易度なダンジョンに挑めるが、下位のチームにいればいる程雑用がメインになったり生徒の扱いも粗雑になり、練習の機会すらも与えられないと、踏んだり蹴ったりの環境にたちまち陥る。


 ――しかし、『だからこそ』だった。そんな泣く子も黙る、狭き門のアルカディア学園に双子が強く興味を持ったのは。

 


「すごい人だねーシャル。ルルだと速攻ではぐれちゃいそう」


「ざっと見ても200人近くはいそうだね。小さな子供から中年っぽい人達と随分幅広い年齢層だけど、まさかみんな受験者なのか……」

 


 二人で学園独特の空気を感じながら感想を漏らし、受付で受験手続を済ませて早速中へと入っていった。

 世界各地を旅し、様々な景色を見たであろうシャルルとルルナも、流石にこの狭苦しい人混みは中々にない経験だった。

 そんな物珍しい光景にあちこち目を惹かれながらも『受験会場はこちら』と書かれた目印に従って進むと、少し広めのホールらしき場所に到着した。

 するとホールの中央奥には試験官らしき男性がこっちこっちと手を振っており、その試験官を中心にみるみる人が集まる。程なくして試験官が声を張り上げながら早速説明に入るようだった。

 


「えー本日は我が王都国立アルカディア魔法騎士学園に受験していただきありがとうございます。えー今回は206名受験ですか……。何度もご受験の方も居たりして、聞き飽きている方もいらっしゃると思いますが、一応ご説明させていただきますね。本学園入学試験は『身体能力検査』、『魔法能力検査』、『実戦能力検査』の三つを規定に従って行います。別に難しい事は致しません、あくまで個々の力を試すだけの場ですのであまり気構え無くて結構ですよー」



 皆が皆、心して聞いてるピリピリとした雰囲気の中、淡々と抑揚のない声で説明する気だるげな試験官に、早くもルルナはあくびを出し始めていた。

 そして眠たげな目と一緒に首が下を向き始める彼女に、「流石にそれは不味い」と肘で小突こうとする。

 ――しかし、その肘が彼女に触れる前に試験官はとある言葉を投げ掛ける。



「ただ、その前に『グループ分け』を行いたいと思います。ちなみに最悪これで脱落者がいきなり出るかも知れませんが、そこはご了承下さいね。という事で早速『魔導検知機による能力測定』でグループ分けを行いますよー。えーと男はこちらで女子はあちらからですよー」



 その説明で、急にがらりと周りの空気が一変した。

 初めて聞く内容に愕然とする物。遂に来たかと肩慣らしをしたり、妙にわざとらしく心を落ち着ける者と様々だ。



「えーではでは時間も押してますので早速始めて行きましょー。皆さんそのままの格好でこのゲートをくぐるだけで結構ですので、どんどん入って下さいね。これで皆さんのあらゆる能力を大まかにランク分けしますので。ちなみに上限はSSランクで、下限はGランクとなってますが、総合能力判定がGとなった方は残念ながら『その時点で脱落』となりますのでー。さて、今回はどんな風になるかなー?」



 まるで何かの催しを始めるかのようにワクワクし始める試験官とは対象に、シャルルはある閃きと同時に、ある『一つの焦り』を感じていた。



「あの装置で能力を直接判定するって事は……こりゃちょっと不味いね」

 


 早速緊急事態が発生したと、シャルルはルルナに魔法を介したテレパシーを迷わず送り、思念のみで会話をし始める。

 


(ルルナ。聞こえてるよね? 念のため特別性の【魔法拒絶領域アンチマジックフィールド】を展開してるから誰かに探られる事はないよ)


(うん、どしたのー?)


(あのゲートをくぐるのはいいけど、僕等の力だと恐らくSS基準の判定か測定不能のどっちかになる可能性が高いよ)


(え……それヤバくない? いきなりパパの約束破っちゃうじゃん!)


(そう。……だからちょっと『細工』をしたいんだけども)

 


 シャルルがちらりと試験官を見るのと、彼が口を再び開くのはほぼ同時で――、



「えー、後一応言っておきますけど、魔法やアイテム等による自身の能力向上、つまり『バフ行為は一切禁止』です。会場外で使ったり隠れてやろうと思っても、その辺も魔導検知機はしっかり判別しますので」



 ――互いに懸念していた事は、不幸にも全く一緒だった。

 


(やっぱダメだよね。まあ僕がやろうとしてたのは『デバフ』だけども)


(ああ……ナルホドそういう意味ね?)


(まあこのくらいなら大丈夫だよ。説明してる時間もあんまないから僕に任せて)


(待ってました! 流石嫌がらせの名手!)


(……毎回言うけど、ほとんど褒め言葉になってないよね、それ)



 と方針を決めている内に二人も男女それぞれの列に並び初め、刻一刻と出番は迫って来る。

 ゲートの向こう側では装置が判断した己の能力に喜んだり、あるいは不服そうに文句を並べたりと一喜一憂する人があちらこちらといた。

 

 そして列の進み方からして、先にゲートをくぐるのはルルナが先になりそうだった。

 後ろでシャルルがじっと背中を見つめる位置取りになっている所為で彼女の表情を図り知る事はできないが、内心はかなり冷や汗ものだろう。

 試験官からしたらその汗は無事にクリアできるかという不安から来ている緊張、という風に受け取るだろうが、勿論『そんなチャチ』な不安ではない。

 


(やだやだ。ばれたらお家の中で一カ月生活なんてタイクツ過ぎて憤死しちゃう! シャルル一体何するの早くしてぇ!)


(はいはい焦らないの。いや周りの目を考えたらその方がむしろ好都合だったり?)

 


 なんてシャルルが思っている内に、ルルナの前を歩く人数は五人、四人と確実に減っていく。

 ――残り二人、一人。

 


(ルルナ、普通に歩いてていいから)


(こ、こわいー! 早く―!)


(――ここだ。視覚効果は無しにしてと。――【禁忌魔法・絶望の呪い(ディスパイアカーズ)】!)



 指先からほんの一瞬だけ、シャルルはルルナに対して、全ての能力を大幅弱体化させる魔法を唱える。

 ――それは時間にしたら百分の一秒にも満たない鬼才なる感覚。刹那的に放った魔法には試験官を含めた誰もが気付けず、平常な空気が流れる。


 

(次はあの『装置』――)



 そしてルルナが前足をゲートに対し僅かにめり込ませ――そしてゲートを通り過ぎた彼女の身には、何も起こらなかった。

 


「はいオーケーです。えっとルルナさんは以下の通りですね」



 STR――F判定

 VIT――F判定

 AGI――E判定

 INT――G判定

 RES――F判定

 DEX――G判定

 LUK――F判定

 

 よって総合能力判定――『F』とする。

 


「おー割と危なかったですね。今後大変かも知れませんがひとまず合格は合格です」


(よし――上手くいったかな)


(ど、どゆことー! 説明詳しく!)


(簡単だよ――あの装置そのものに『中和魔法ニュートライズマジック』をぶつけて『僕の魔法を魔法だと識別させない』ようにしてから『詠唱後から一秒間だけ全ての魔法効果を許容するプログラム』にしたんだ)


(な……何それややこし……それでエラーが起きないの?)


(一秒だけだし、それに仕様だからね。あの装置が他と繋がってたりしたら面倒だったけど、単独で動いてるみたいだから案外やりやすかったよ)


(そ、そうなのね。ありがとシャル!)


(……ルルナもいい加減、予想外の事態になるとパニクるのをなんとかしようね。普段は僕と大して変わらない魔法力なんだから)



 続けてシャルルも同様の手段でゲートをかいくぐると難なくF判定を与えられ、最初の関門は問題なくクリアできた。

 そして全ての受験者がゲートを通る頃には30人ほどの脱落者が発生し、試験官に「また頑張って下さいねー」肩をがっくり落とす落第生の背中に語り掛けていた。

 


「えーでは総合判定がB以上だった方は第一グループに。CかDの方は第二グループに。それ以下のEかFの方は第三グループへと別れます。で、ここからの先程申し上げた三つの試験は各グループ毎に分かれて行いますので、第三グループ以外の方はここで私とお別れになりまーす」



 ここでもラッキーだと思ったのはやはりシャルルだった。

 また何か予定外の事態が起こった時に、少しでも試験官の性格、仕草、言動などに慣れていた方がまた小細工しやすいと思ったからだ。

 


「次は流れ的にいけば恐らく『身体能力試験』なのかな?」


「やったー運動に関してならルルにまっかせてー!」


「そうだね。単純な力の制御に関してはルルナの方が上手だしね。ただね、個々の判別になるだろうからね。あんまし僕には関係ないのが残念だね」



 その言葉にがっくりと肩を落とすルルナ。ついさっき悲し気に帰った脱落者達の後ろ姿と重なったシャルルは、不覚にも笑みが零れてしまう。



「あはは。これはルルナにとっては、逆に今までで一番きつい状況かもね」


「きついもきついし、キツ過ぎっ! 昔戦ったどっかの竜なんかより何十倍もツラい! ルルは一体いつになったらここで暴れられるのー!?」


「うーん当分無理じゃないかな?」


「……チキショーパパの鬼ィー!」


「ちょちょっとそんな叫んだら、みんなこっち見ちゃうよ……」

 


 じたばたもがきながらルルナは発狂し声を張り上げるのは、緊張故に自分の力を発揮できない為だと皆が思っていただろう。実際緊張をはぐらかす為に声を無意味に出すのは珍しい事ではない。――が、彼女の場合は理由が超真逆。

 まさか自身の力を『外部から強制的に抑制されてる』が故などとは誰もが露知らず、他の受験者達は勇み足で次の舞台へと移り始める。

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