ウィリアムの正論
最後の夜の続き
結局ウィリアムは6週間の滞在を終える前に、我が家を去ることとなった。それは我が家の子どもたちが3日間いないから。彼にとっては「子どものいる家で6週間」という約束だったのに、子どもがいなくなるのなら僕は居なくていい。むしろ小栗家の方が約束を守らなかったのだから、僕は自由にできる、という考えだったようだ。
その時私とウィリアムとあす君しかいなかったこともあり、話しはうまく伝わらなかった。
「だけど私たちはあなたを家族として迎えていたんだよ」
それなのにいきなりどこかへ行くなんてどうなのよ。
「僕の家族は日本にはいない。それに僕はこの家のルールに従って最後の週まで暮らした。ここから先は僕がどこへ住むかを決める権利がある。それに、向こうの家の人は優しくて良い人だ。僕のやることに干渉しないし、鍵ももらえて過ごしやすい。この家にいるのはすごく気を使って疲れる」
それは、正論・・・だよね。
わかるよ。
我が家は真面目だからね。それにあなたは6週間文句を言わずに笑顔で過ごしてくれた。
だけど、ここで向こうの家の人と我が家を比べた事を言う!?
でもこれでわかった。
ウィリアムはこの家は窮屈で嫌だったんだ。彼は元々ただ泊まれるだけの家が欲しかったんだ。それなのに私たちはそれを知らずに彼に構い過ぎた。日本の家族の暮らしぶりを知りたいこともなかったし、日本の家庭料理なんて食べたくなかったし、門限なんてもってのほかだった。
知らなかったとはいえ、私はウィリアムのことを困らせ居心地悪くさせ、そして嫌な思いをさせていたのだ。
ホームステイってこういうものなの?
私たちはほんの6週間でも家族として暮らすんじゃなかったの?
疑問は心の中に湧いては、ウィリアムの正論の前に砕けた。だって彼は私たちを家族として認めてなかったんだから。単なる部屋の提供者だったわけだ。
私が思い描いていた6週間家族は、こうして崩壊したのだった。




