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6週間家族  作者: marron
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お寿司づくり


 ウィリアムは日本食の勉強に来ている。

 買い物に行ったとき、魚屋さんの前でジーッと魚を見ているウィリアムが

「僕は寿司が好きだ」

 と言っていた。

「じゃあ、来週作ってあげようか?」

 と私が聞くと、

「僕が作るよ。寿司の握り方習ったから」

 ということで、ウィリアムに寿司を作ってもらうことにした。魚を買う関係で、早めに日にちを決めておいた。

「じゃあ、今度の金曜日にね」

 今度の金曜日は、ウィリアムの握ってくれるお寿司だ。とても楽しみにしていた。


 しかし、その“今度の金曜日”までちょっと時間が空いてしまったため、ウィリアムは当日の朝、

「僕、今日は遅くなります」

 と言って出かけて行った。

「行ってらっしゃーい」と見送ってから、やっと脳内に届いたウィリアムの英語。

 うん?今、遅くなるって言った?お寿司は!?

 ウィリアムは前から行きたいと思っていたカフェに行くといって出かけて行った。金曜日の夕方だし、ゆっくりしてきたいよね・・・とは思うけど、約束はどうしよう。

 悪いと思ったけど「今日の夜、お寿司にしようって決めたよね?どうする?」ってメールをしたら、「早く帰るよ」と返事が来た。

 うわあ、カフェを我慢して帰ってくるんだー。

 悪いことしちゃったなあ。

 彼は普段からかなり我慢している。ウチは門限があるし、せっかく日本にいるのになかなか思うように外出したり外食したりができないのだ。

 お寿司は明日にしても良いよ、と言ったけれど、彼は「大丈夫」と言って、帰ってきてくれた。


 そして夜、寿司酢を作り、シャリを作り、お刺身をマイ包丁で切るウィリアム。とっても真剣で、丁寧で綺麗な作業だった。

 寿司を握りはじめると今度は楽しそうで、それでもとても几帳面な仕事ぶりだった。せっかくなので握り方を教えてもらった。

「へえ~、お寿司ってこうやって握るんだ」

「もっと優しくね。ギュウって強く握っちゃダメだよ。このくらい」

 私は決して手が小さいわけではないけれど、ウィリアムは細身のわりに骨格はかなり大きいので、同じ寿司を握っているようには見えない。むしろ、大きな手のウィリアムのほうが握りにくそうなのに、実にうまく握っていた。

 二人でお寿司を握るのはとても楽しかったけれど、シャリ作りから握るまで全てを作業したウィリアムはヘトヘトに疲れていた。

 うわあ、ごめんよ、ウィリアム。

 でも、お寿司はとっても美味しかった。


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