念願2
流石に最近の若い子は、情報を得るのが上手い。日本に来たばかりのアメリカ人だというのに、表参道に行く電車からお店への道順まで全てウィリアムにくっついて行く私たち。
まあ、話題のパン屋さんは、なんていうか、ああ、話題なんだな、って感じだった。
パン屋さんでちょっと不思議なパンを食べたのが12時くらい。
「お昼どうしようか」
パンを食べてしまったので、お腹がいっぱいである。この後の予定も決めていない。
「じゃあ、みんなで中野へ移動してそこで何か探そうか」
と、当初の予定通り中野へ行くことにした。
実はプリクラは末っ子の念願ではあったが、私はそれが目的ではなかった。中野はウィリアムのようなゲーム好きなオタク観光客の好きそうな場所なのである!ぜひそこにウィリアムを連れて行きたいと思っていたのだった。
なので中野に移動して、初めのうちは「なんだここ?」的な感じで歩いていたウィリアムが、途中からかなり興味を示して
「ここ見たい」「ちょっと行ってきます」と、どんどんいろんなお店に入りはじめた。
そうだろうとも!
末っ子もそういうのに興味あるので色んな店を見る見る。
そして二人が食いついたのが勿論、彼らがはまっているMTGというカードゲームの置いてあるお店。
二人で入って行ったらなかなか出てこないから見に行ったら、二人でお目当てのカードが飾ってある棚の前でかみ合ってるのか合ってないのかわからない会話を繰り広げている。しかもすごく興奮していて楽しそうだ。
「買うの?」
末っ子に聞いてみると、
「買って欲しいけど、高いから」との答え。
「そうだねー。まあ、とりあえず見るだけ見て、お小遣いためるんだね」
なんて話していた。
「このカードは、アメリカだともっとずっと高いんだよ。こんなカードがあるなんて」的なことを英語で。
ウィリアムの興奮ぶりもすごいったらない。
「じゃ、お母さん外で待ってるからね」
しばらく興奮していそうだったので、狭い店内にいるよりはと思い、私は外へ出た。
待つこと30分。
まだ出てこない!
チラリと店内を覗くと、先ほどとは違うところで、なにかファイルのようなものをウィリアムと末っ子が真剣にめくって見ている。
そういえばお昼を食べていない。お腹もすいたし、ただ突っ立っていると具合が悪くなってきた。
それから10分くらいしてお店を見ると、二人でレジに並んでいた。どうやら買うらしい。
そして満面の笑みで二人がお店から出てきた。すぐにウィリアムは買ったカードを袋から一枚末っ子に渡した。
「ありがとう」
「買ってもらったの?」
「いーのいーの」(ウィリアムの日本語)
「ええ!?あ、ありがとう」
ウィリアムは一人っ子だけど、こういう年下の子の扱いがすごくうまいと思う。
ちなみに、ウィリアムが買ったカードは300円だそうだが、アメリカで買うと5000円くらいするらしい。
末っ子の念願のウィリアムとのお出かけは、楽しい一日となったのだった。




