泊まりがけ
私の言葉がうまく通じないこともあり、時々すれ違いを起こした。
実は、ウチにホームステイが決まる前、急だったこともあり、ウィリアムのママはかなり色んな人に手を回していたようだった。
そこで、6週間の滞在のはずだったのだけど、もう一軒受け入れてくれるところが見つかったから3週間ずつにしますか、と言われていたのだ。
我が家は6週間で問題なかったので、ウィリアムがしたいようにしてくれて良いですよと言っておいた。そうしたらウィリアムが小栗家で6週間を選んでくれたので、ウチにくることになった。多分、子どもがいるからとか、学校からそう遠くないとか、そういう条件が良かったんだと思う。
ただ、そんなこともあり、ウィリアムは時々“ともだち”と出かける。誰なのかは知らないけれど、もう一軒の人なのかもしれない。
土日が忙しいため、私たち家族はウィリアムとどこかに行ったりすることができなかった。普通のホームステイだったら、ホストファミリーがどこかに連れて行ってあげたりするだろうけど、ウチはそれができない。
気になっていたので、ウィリアムに
「平日で2日間、空いている日はない?」
と聞いてみた。
「平日はないなあ。学校を休みたくないし。どうして?」的なことを英語で。
「私たちは(一泊二日で)箱根に行きたいと思っている」
と、たどたどしい英語で伝えると、何を勘違いしたのか
「気にしないで行っておいで。僕は友だちのところに泊まるから」
と言われてしまった。
違うよ。一緒に行くんだよ。と言っても、ウィリアムの顔は冴えなかった。どちらにしろ、彼は学校を休むことはしないし、この話はなしになった。
それから数日後、夕食後の団欒の時のこと。
「そうだ、ウチの子たち、今度キッズキャンプに行くんだよ。二泊三日で」
これはウィリアムがウチに来ることが決まる前から、申し込んでおいたもので、どうしようもなかった。この二泊三日間はウィリアムだけになってしまう。申し訳ないけど、教えておかなきゃと思ったら、
「そうか。じゃあ、僕は友だちのところに泊まるから」
と、またもや言い出した。
えー・・・そんなに友だちのところに行きたいかい!?少し悲しくなってしまった。
「この家にいるのは嫌?」
思わずそんなふうに聞いてしまった。
「嫌じゃないけど、僕のことは気にしないでくれ」的なことを英語で。
「じゃあ、ここに居なさい」
つい強い語調になってしまったが、思わず命令してしまった。
だって、ウチに居てほしい。
子どもたちが居なかったら、居づらい家だなんて悲しすぎる。勿論、私だけだとコミュニケーションがとりにくいから大変だろうけど、ここが家だと思って欲しい。
この時はこれでこの話題が終わったと思っていた。だけど、この一件が我が家とウィリアムの関係の崩壊の幕開けだった。
今思うと、この時、親切心を出してウィリアムにキャンプの話をしなければ良かったと、心底後悔している。




