チョコレート
次の日の朝、起きてきたウィリアムは私の顔色を窺っているようだった。私も同じように彼の顔色を窺う。
それからその日の予定を話し合ったりする間も、いつものように和気藹藹ではなくて、なんとなく緊張感が漂っていた。妙に事務的な感じ。
そして、ウィリアムは学校へ行き、夕飯が終わる頃に帰ってきた。
「おかえり、ご飯食べた?」と聞くと
「まだ食べてない」
と言う答え。それを聞いて、ウチの子たちが
「ウィリアムはラーメン食べに行くんじゃない?」
とかき混ぜる。
私は彼の言葉がちゃんと聞き取れないし、英語のできるちゅんちゅんたちが言うのなら、それが正しいのかと思ってしまった。
また、外食に行くのか・・・今日はハンバーグだから食べられると思うんだけどな。がっかりしていると、ウィリアムは上着を着たままウロウロしていた。
「ラーメン食べに行くの?」
と、聞いてみても、困った顔をしている。何か言ってるんだけど、聞き取れないし、他の子たちが「ウィリアムはラーメンを食べに行く」と言うから、そっちばかりが耳に入ってしまう。
いつまでもウロウロしているウィリアムは、結局どうしたいんだろう?
「ハンバーグ、食べる?」
とりあえずダメ元で聞いてみると
「うん」
と答えた。
ああ、よかった。今日はウチで食べてくれるんだ。あなたが食べると思って、玉ねぎは小さめに切ったし、ハンバーグも小さめに焼いたし、大量に作ったから、食べてくれたら嬉しい。
ウィリアムはゆっくりと夕飯を食べた。
その間に、食事の終わった主人と子どもたちは食後のお茶を淹れて、デザートを食べ始めている。しかも主人は向こうの安楽椅子に座って何やらあす君と語り合っている。
あのさー!ウィリアムいるんだから、足並みそろえようよ!
「お父さん、お茶は食卓で。英語にしてください」
と言うと、主人はすごすごと食卓にやってきた。ちゅんちゅんも少し英語で話しはじめる。末っ子も自分の話で盛り上がっていたのを、ウィリアムの方に向いた。
そうやって少しずつ整えていって、やっとウィリアムの表情が落ち着いてきた。
食後のデザートはちゅんちゅんが買って来てくれたチョコレート。ミルクとホワイトのクランチチョコで、ウィリアムはペロっと食べていた。
好きな物は食べるのが速い。
「もっと食べる?」と聞くと
「うん」
と嬉しそうな顔になった。
そうそう、この顔。これがウィリアムの顔だよね。
やっと笑ったと思うと、食卓もやっと和やかになった。
「ミルクとホワイト、どっちの方が好き?」ちゅんちゅんの英語。
「ホワイト」嬉しそうなウィリアム。
「こっちの方が甘いもんねー。ウィリアム、本当に甘党だね」末っ子の日本語。
やっとみんながひとつになった。
やっぱり私は笑っていないとな。そして、みんなのことをひとつにまとめるのは“お母さん”の役割なのだなあと、実感したのだった。




