異性の好み
あす君と2人になると、ウィリアムはすぐに女の子の話をするらしい。
「ウィリアムって女の子大好きなんだよ。ボクにも彼女作れって勧めてくる」
と、あす君は困ったようだった。(それはそれでどうなんだ)
せっかくなので、ウィリアムに聞いてみた。
「で、何人彼女いるの?」(なぜかこれは英語で質問できたw)
「あははー、今はいないよ。もうちょっと日本に長くいたら、日本にも彼女が欲しいけど」
って、おーい・・・
しかし、面白いのはちゅんちゅん。
ウィリアムが我が家に来ると聞いて、一番乗り気だったのはちゅんちゅんだった。なにしろイケメンなんだから。
だけど、しばらく一緒に暮らしていて、ちゅんちゅんのウィリアムに対する態度がかなりぞんざいになってきた。
「だって、オタクじゃん」
オタクだから嫌いってわけじゃないんだけど、興味の対象が嫌なのは私も理解できる。
それに、彼は結構金遣いが荒い。旅行気分だし、何でも自分でやらなきゃならないから仕方がないんだけど、ウチに夕飯が準備されてても平気で外食するし、おかしやジュース類もよく買うし、映画やゲームや服やら買い物もよくする。とくにゲームには目がなくて、カードゲームのカードとかもどんどん買うし、家にいても、普通にゲームばかりしている。
とにかくちゅんちゅんが、それはどうなの?と思うところがいくらでも出てくる。
極めつけは、食べ物の好み。ウィリアムは野菜を食べない。生野菜なら少しは食べるけど、他は食べない。私が作る家庭料理も食べない。野菜が入っていたら手を付けないし、ちょっと食べて残すことも多い。
「日本の“もったいない”精神について思わず説教しちゃったよ」
と、ちゅんちゅんは言っていた。
そんなある日、その日はウィリアムが食べられるものと思って、夕食のメインをトンカツにしたのだけどウィリアムが帰ってこなかった。普段は夕飯を食べない時は連絡をくれるのだが、その日は昼間に人と会うと言ったきり、夕飯になっても戻ってこない。
トンカツを焼き(揚げ)ながら
「ウィリアムに食べて欲しかったな」
と、私がポツリと零したら、ちゅんちゅんが
「あのやろう~」
と怒ってくれた。
いや、怒らなくて良いんだけど、でも、その気持ちは嬉しかった。それにしても、あんなに盛り上がってたのに「あのやろう」とは。
少なくとも、ちゅんちゅんは顔で相手を選んだりするんじゃなくて、価値観や人間性を見ているんだなと思って、少し安心したのだった。




