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6週間家族  作者: marron
25/60

おんち


 私の仕事柄、我が家はいつでも音楽が流れている。そしていつでも誰かが大音量で歌っている環境である。

 しかし、ウィリアムは歌わない。音楽にまったく興味がないらしい。

 そう思っていた。


 ところが、家族の誕生日の日、みんなで「ハッピーバースデー」の歌を歌っている時、ウィリアムもそっと歌に混ざっていたのだが、私は聞いてしまった。

 ・・・音痴?

 漢字にすると嫌な言葉だねえ。

 おんちって言うか、どうしたら良いのかわからないらしい。

 ウィリアムは背が高いこともあって、声が低い。かなり低いところを押すように発声して喋る。慣れない日本語の真似をする時も、だみ声になる。それが歌ともなると、さらにヘンな感じになってしまうのだろう。それで、気にしているうちに歌えなくなっちゃったパターンじゃないだろうか。

 ま、細かいことはどうでもいい。

 ただ、彼はおんちというよりは、今までやってこなかったから歌い方を知らないということはわかった。興味がないわけでもないらしい。


 ちょうど末っ子の音楽教室の発表が学校であったため、ウィリアムを小学校のコンサートに招待してみた。ウィリアムは嫌な顔をしないで聞きに来てくれて「ヨシはじょうずだ」と喜んでくれた。

 そして、アメリカの小学校は音楽の授業などないということを教えてくれた。音楽に興味があれば、自分で習い事をするか、教会の聖歌隊などに入るのが普通らしい。ウィリアムはそういう機会がなかったため、音楽に接したことがないらしい。


よくちゅんちゅんが、洋楽も好きで口ずさんでいるのに気づいたウィリアムは、

「スズメはそんな曲も知ってるのか。僕はその人たちの歌っている違う曲で好きな曲があるよ」的なことを言っていた。

「へえ、なんて曲?」

「題名を覚えてないんだ」

「じゃあ、どんな曲?歌ってみて?」

 歌って、と言われて一度グッと嫌な顔をしてから、ウィリアムは♪~~と歌った。

 それを聞いてスズメはしばらく考えてから

「オンチすぎてわからない」と日本語で答えたのだが、ウィリアムはうな垂れていたのだった。


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