ルールとマナー
日本とアメリカじゃあ、生活様式が違うので戸惑うこともしばしばだろう。そのうえに、我が家独特のローカルルールもある。さて、これをどう擦り合わせて行くべきか。
我が家のルールでは、鍵を貸せないこと。そのためピンポンが鳴ったら誰かが開けてあげなければならないので、門限がある。門限は9時。早いと思うかもしれないけれど、17歳のホームステイの子だったらこんなもんでしょう。勿論用事があって遅くなると分かっている時は、ちゃんと連絡してくれれば良いよと伝えてある。
あと、夕飯は一緒に。これはルールかどうかわからないけど、そういう約束にしてある。まあ、これも友だちと食べてくるとかあれば、連絡してねということだ。
夕飯は一緒に、というのはルールで、連絡してね、というのはマナーの部分である。
ルールは規則(決まり)。マナーは相手への配慮だ。
ウィリアムがウチに来る前、いづみが心配していたのが、このマナーの部分で、日本人は言わなくてもある程度相手を配慮するが、外人はしない。ルール通りにはするけれど、それ以外は(表現は悪いけど)勝手にやるというか責任はないというか、基本的にあまり気にしないということ。
とはいえ、ウィリアムはとても配慮の利く子だと思う。
何かをする前に、やっていいかを聞いたりするのが上手い。これは配慮なのか、普通にコミュニケーションが上手なのか。うん、両方だろうな。
ただ、ひとつだけあった。
それはある夕食の席。その日は主人とあす君がいなかった。私とちゅんちゅんと末っ子とウィリアムの4人。
いつもよりちょっと小ぢんまりしていたためだろうか、主人がいなかったためか、ウィリアムは夕飯が始まってもスマホをちょいちょい触っていた。
ウチの子相手だったら、食卓にスマホを持ち込ませないが、ウィリアム相手だったので、どう言ったら良いかわからない私。それに、音楽をかけようとしているのか、メールの途中なのか、ゲームなのかわからない。ネットゲームだと対戦相手がいたり、ゲームの切れないタイミングもあるだろうし。と思ってジッと見ていたが。うん、食事中だもんな。
「ウィリアム、それ(スマホ)止めな」
私が言うと、ウィリアムが、うん?と顔をあげた。だけど、意味がわからなかったらしい。
するとすかさずちゅんちゅんが、
「ストップ、ゲーム!」
と注意をした。
「オウ、エクスキューズミー」
ウィリアムはすぐにゲームを止めてくれた。
なるほど。私が言ったのは配慮した言葉だけど相手に伝わらない。ちゅんちゅんのはルールで、きちんと相手に伝わる。
とりあえず、何かあったらルールを定めるのが良いらしい。