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code-6-1:束の間の休息

 機械の身であるとはいえさすがに死体を家の中には持ち込めない。クルセイドは担いでいた男を一旦人目のつかないところに下ろし、玄関の戸を開けた。

「おう、無事に帰って来たようだね。初陣だったがフォロー無しでも大丈夫だったかい?」

入ると早速クロンとメディが出迎えてくれた。

「急に通信が切れるからたまげたよ。なんだったんだあれ」

「あー…いや、ちょっとうっかりしててね…」

「うっかりっていうか完全に忘れてたよね。僕も言えたもんじゃないけど…」

「うっかり?まさかこうなるってわかってたんじゃ…」

「ま、まあまあ!詳しいことは飯でも食いながらにしよう!といっても、まだ材料が足りないから作ってもないがね」

 はぐらかされた。絶っっっっ対に何かある。だがこの調子ではどれだけ聞いても答えてはくれないだろう。とりあえずは待つことにし、ダイニングへ向かう。

 ダイニングは玄関から左の廊下を歩いたところの最初のドアを開けたところにある。手近のイスに座るのとほぼ同時に玄関のドアがノックされた。どうやら来客のようだ。

「お、いつも悪いねぇ。上がりな、腕によりをかけて作ってやるよ。それと、今日は別の奴もいるぞ」

 クロンが話をしているのが聞こえる。話が終わると足音が近づいてくる。話していた相手がこちらに来たのだろう。足音が近くで止まると同時にドアが開く。

「どうも…え?」

 挨拶をしようと立ち上がったが、それが途中で固まる。ドアの向こうにあったのは先ほど見たばかりの顔だったからだ。

「サラ?なんでここに…」

「それこっちのセリフなんだけど…どうしてあなたがここにいるのよ」

「えっとそれは…」

 ここにきて知っている顔が現れるとは思わなかった。つい言い淀んでしまう。そうこうしていると、メディとクロンも同じ場所に集まった。そしてさっきの会話が聞かれていたのかクロンが間に入ってきた。

「お互い知ってるかもしれないが、そこにいる居候はクルセイド。んでこっちはサラ、たまに山で採れたものを分けてくれるんだ」

 採れたものを分けてくれると聞いて仲の良い隣人を想像したが、どうもそういう関係というわけでもなさそうだ。それよりももっと親密な…

「居候?今居候って言った?」

「そうさ。身寄りもないみたいだからね、一人増えるくらいどうってことないよ」

「そういうことを聞いてるんじゃないの!あなたとメディが側にいながらどうして私の場所にこいつが入ってくるのよ!」

「いっ、いやぁ…ちょっとうっかりして…しばらくこっちからそっちには行ってなかったし…」

「はぁ…信じられない…」

 どうやらサラの土地に入ることは相当なタブーらしい。どうして自分が無事に出てこれたのかクルセイドにはわからなかった。

「まあいいわ、別に。危ないところを救ってもらったし、それに悪い奴じゃないってのはなんとなくわかるわ」

 クロンとメディが胸を撫で下ろす。どうやらお咎めはないらしい。直接言われたわけではないがクルセイドも安堵する。

「さて、反省の意も込めて今日はちょっと豪華にしようかね。メディ、手伝いな」

 どうやら料理を始めるらしい。手伝おうと席を立つがメディに止められる。

「セイドは座ってて。今日は君の歓迎会なんだから」

「いやでも…」

「そうそう、主役はどっしり構えてりゃいいんだよ」

 二人にそう言われては仕方ないと座るが、手持ち無沙汰で落ち着かない。なんとか場を繋ごうと向かいに座るサラに話しかけた。

「なあ、君はどうしてあそこで暮らしてるんだ?独り暮らしにしたって街中の方が色々便利だろうに」

「山の中に住んでれば管理が楽だからよ。それに不自由は何もないわ」

「え、もしかしてあの辺の山って君のもの…?」

「そうよ。もちろん私が買ったわけじゃないわ。代々受け継がれてきたものを私が受け継いだってだけ」

 受け継いできたということは以前は先代、つまり親が管理していたのだろう。その親はこんな年若い少女が山に一人で住むのをなぜ許したのだろうか。単に放任主義なのか、それとも…

「私からもいいかしら」

 思慮はその一言で終わった。クルセイドはサラの質問に答えるため彼女に向き直った。

「ん、なに?」

「まず、あなたと私を襲ってきたあいつは何?一体どういう関係なの?」

「あー…そうか、そりゃ聞きたいよな…」

 突然あのような危機に陥ったのだ、質問ももっともだ。

 クルセイドは現在に至るまでの経緯を全て話した。巻き込んでしまった以上、彼女にそれを聞く権利は十分にある。

「MHにこの街の征服…なんだか頭が痛くなってくるわ…」

「それと、これは予想でしかないんだけど、多分君の情報は既に向こうに渡ってると思う」

「は!?ちょっとどういうことよそれ!」

「お、落ち着いて!情報といっても恐らく顔だけだ。通信の不備もあったし場所は…」

「顔がバレてたら十分危険でしょーが!」

「う、ごめん…」

 さすがに申し訳ないことをしてしまった。とはいえ、被害を最小限に抑えられたのも事実だ。あの時、間に合わずにサラが殺されていたらと考えると正直恐ろしい。

 というか、最初大人びていると感じた態度も今は年相応に見える。あの時は侵入者に対して威圧するためにあのような態度をとっていたのだろう。

「なに飯食う前に喧嘩してるんだい。ほら二人とも、運ぶのくらい手伝いな」

 どうやらかなり時間がたっていたらしい。料理ができたらしく、クロンが部屋に入ってきた。さっきは座ってていいって言ってたよなと思いながらも、二人でキッチンまで料理を運びに行った。

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