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code-5-3:初陣

 クルセイドは頭の中で想像する、自らが戦えるようになる武器を。すると、左腕の装甲が音を立てて変形し、銃を形成する。

「腕に…変な筒…」

「腕に直接できるのかよ。しかもなんかダサいな…初めてならこんなもんか?」

「あれがモービルメタル…奇妙なものだ…」

「何をぶつぶつと…おわっ!?」

 相手がいきなり銃を乱射し始めた。咄嗟に腕でガードをしたが、装甲が厚いのか傷はない。

「そんな銃弾、屁でもねぇよ!もっと他のを使ったらどうだ?」

「ふん、報告の通り通常の対MHライフルは効かないらしいな。ならば…」

 男は腰に着けていた刀を鞘から抜く。男がその柄についたスイッチを押すと、刀に電流のようなものが走る。

「これならば傷くらいはつけられよう!」

 構えを取ったと思うと、男はすぐさま突っ込んできた。咄嗟に後ろに跳びながらエネルギー弾を放つが、全て弾き落とされてしまう。

「特別だかなんだか知らないが、戦闘訓練を受ける前に逃げ出したお前に勝ち目があると思うか!」

 男が地面を強く蹴ると、今まで遠くに見えていたその姿が一瞬で近づいていた。男は上段で刀を構えるとそのまま振り下ろす。クルセイドも後ろに跳ぶよう強く地面を蹴り紙一重で避けるが、胸の装甲に浅くはあるものの傷が一筋ついた。

「重装甲車さえ一太刀で両断する粒子カッターだ。その気になればお前の頭をヘルムごとかち割れる」

「おっかねーもん持ってるなお前!殺す気か!」

「当たり前だ、でなきゃこんなもの使わない」

 言い終わるや否や男はまたクルセイドに向かって走ってくる。このままではさっきと同じだ。そして多分、慣れていないぶんこっちの方の消耗が早い。

「なんとかこの状況を覆さなきゃ………そうだ」

 クルセイドの頭に一つの案が浮かんだ。不確実だが、これ以外にはあり得ないと思った。

 クルセイドは走るのをやめ男の方を向く。右腕にも左腕についてるのと同じものを形成し、両腕を下に向ける。

「ちょっ…なんであいつ止まってるのよ!」

「なにをするつもりか知らんが、ここで終わらせる!」

 相手はさらに速度を上げる。だがクルセイドは動かない。

第二安全装置解除セカンドセーフティーリリース、出力最大…今だ!」

 地面に向けた両腕からエネルギーを発射する。だが、それは弾ではなくジェットエンジンのそれに等しいものであった。エネルギーの奔流はクルセイドの体を持ち上げ、そのままcode-Dの頭の上を飛び越し背後に回った。

「馬鹿なっ…!」

「おっとそこまでだ。この距離なら引き金を引く方が早いぜ」

 男は振り向こうとしたが、頭に銃を突きつけられそのまま停止する。クルセイドは銃口を頭に突きつけたまま男の背中を足で押さえ付けて地面に倒す。

「こんな…こんなことが…」

「聞きたいことがある。お前らはこの街の征服なんかしてどうするつもりだ?一体なんのためにこんなことをする」

「我々の征服計画には崇高な目的がある。お前のような平凡な者ではおよそ考えも付かないであろうな」

「だからその目的を教えろってんだろ」

「これ以上は言えん。聞き出したければそれを撃ってみたらどうだ?無論、死んでも言わんがな」

 何があっても口を開かないつもりらしい。その忠誠心は大したものだが、このままでは埒が明かない。

「ちょっと、いい加減とどめ指しなさいよ。いつまでそうしてるつもりなの」

 痺れを切らしたのか、それとも不安のためか、少女はクルセイドを急かす。

「まってくれ、もうちょい色々…」

 クルセイドの注意が少女に向く。その瞬間を、男は逃さなかった。頭上にあるクルセイドの腕を掴んで引っ張ると、前屈みになっているクルセイドはそのまま前方によろける。同時に背中から足が離れたため、横に転がり距離をとってから立ち上がる。

「しまっ…!」

「やはり素人、押さえも甘ければ注意力も散漫!」

 男は逃げるときに拾った剣を手に再び襲いかかる。完全に不意を突かれたクルセイドは動けずにいた。

 完全に死を覚悟した。反射的に男から顔をそむける。だが、その刃は自分には届かなかった。

 ガキィン、というけたたましい金属音がした。顔を上げると、自分に襲いかかっていた男は矢で頭を射抜かれて倒れていた。もしやと思い少女のいる方を向くと、既に弓を収めていた。

「襲ってくる相手が目の前にいるのに避けようともしないって、あなた正気?」

 少女がこちらに歩いてくる。倒れた男の近くまで行くと、腕と頭に刺さった矢を引き抜く。装甲の硬さに耐えられなかったのか矢尻の先端が欠けている。

「あー、やっぱりダメになってるわね。どんだけ硬いのよこいつ…」

 じっくり矢尻を見た後、背負っている矢筒にしまう。クルセイドはそれを確認してから声をかけた。

「…なあ、なんで俺の方に手を貸してくれたんだ?ここに勝手に入ったのは俺も同じなのに」

「別に、あんたに手を貸したわけじゃないわ。ただあんたよりあいつの方が気に食わなかったってだけ。殺気もムンムンって感じだったし」

 いまいち釈然としないが、本人がそう言うならそうなのだろう。クルセイドは立ち上がると、少女に向かって手を差し出す。

「…なに?」

「握手、謝罪と感謝を込めて」

「結構よ。あなたが山荒らしじゃないってのは今のでわかったし。あと、私あまり人の手って触りたくないの、ごめんなさいね」

「そ、そうか…いや、わかったよ」

 少し残念だが、強要するようなことでもない。相手が許してくれるというのならそれに甘えるまでだ。

 会話を終え、クルセイドは男を背負って帰ろうとする。

「それどうするつもり?」

「ちゃんと葬ってやりたいんだ。敵とはいえ人間だからな」

「…そう。ま、好きにしなさい」

 …本当に少女なのだろうか。言動にいちいちお姉様感が漂う。

「そうだ。君名前は?」

「サラ。あなたは?」

「クルセイドだ」

「変な名前ね。二度と会うことはないだろうけど、一応覚えておくわ」

 それだけ聞き、クルセイドは山を降りる。これから先に起こるであろうことへの不安を抱きながらも、今生き残れたことの安心を噛み締める。

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