wolf moon
「自分はたいしたことがない人間だなんて思ってはならない。
それは自分の行動や考え方をがんじがらめに縛ってしまうようなことだからだ。
そうではなく、最初に自分を尊敬することから始めよう。
まだ何もしてない自分を、まだ実績のない自分を、人間として尊敬するんだ」
フリードリヒ・ウィルヘルム・ニーチェ
赤ずきん……見た目12歳ほど。見た目は自在にかわる。赤いパーカー、フード。「暁」「赤月」の借りの名。
サブマシンガン、アサルトライフルなどを好み。(旧名ランスロット)
狼……「大神」の名。スモーカー、短気。アメリカドラマ口調。187センチ、25歳ほどの見た目年齢。(旧名ガウェイン)二人はネコと連携。
長靴を履いた猫……人間。赤ずきんと狼のペアの後始末が多い。
雛坂カイト……悪魔で下僕。
シンデレラ……几帳面。エクソシスト。シスター服以外はスーツにメガネ。
白王子……シンデレラの相方。神父のエクソシスト。
白雪……回復サポートグッズなどの後方支援特化。主に悪魔に憑かれた人間の修復キット。
かぐや……武器の手配、加工。着物姿が多い。
オズの魔法使い……天使のトップ。コードネームの決定権を持つ。
「wolf moon」
彼は走っていた。
汗が止まらないほど全力で走っても、逃げ切れるのかどうかわからない。
空港を降りて、国内便の列に並んでいると殺意が針よりも鋭利に刺さってきたのだ。
荷物はとうに捨てている。
懐にあるのは必要最小限のもの、そして携帯電話。
しかし電話で助けを求める暇もないことは誰よりも彼が知っていた。
くつくつと、機嫌の良い笑い声が足元から、壁から聞こえる。
背中に氷の塊が滑るような命の寒気。
相手からしたらこれは遊戯なのだ。
死の遊戯。
ーー死んで堪るか。
しかし、恐怖で足がもつれる。
目に見えないものが心臓を強く握っている感覚。
彼の革靴が片方脱げたが、もうそれに構うゆとりもなかった。
四方から不気味な笑い声が彼を取り囲んでくる。
人気のない場所から空港のバスターミナルへと逃れようとして、彼は茫然とした。
切り取ったように目の前だけが、大きな闇の口を広げている。
内ポケットから武器を出して一心に願って撃ち込む。
しかし、それは強大な力の前ではささやかにも意味はなさなかった。
慄然として、死を悟る。
もはや最初から逃げ道などなかったことに。
最後の慰めは、手足まで飲み込む「死」がいっそ優しいまでの柔らかさで彼をくわえ込んだことだった。
「嗚呼、神よーー」
彼の体は魂ごと、するすると飲み込まれる。
彼の声も、地上の何処へも届かない。
その魂が砕ける音が硝子のごとく、儚く散る。
コードネーム、”長靴を履いたネコ”は痕跡も残さず天使の加護を持ったまま消滅した。
ン年ふりの更新。
シリアス回。
ごめんなさいー!!
探し回ってデータ発見。




