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赤ずきんが真実を語ったのかどうか誰も知らない  作者: 相木ナナ
「王子だからといってイケメン補正をかけるのはやめてくれ」(各王子より)
13/18

「レイニーシティー」

「どんな仕事を

していようと

それを行うときには


その上に

心のすべてを集中し

自分の能力のすべてを

注ぎ込むことです」

ジェームズ・アレン  

 コードネーム”ピノキオ”は深く深く潜っていた。


 ただし()()()()()ではない。


 ディープウェブ、ネットの世界に。


 忙しくキーボードを叩く指は、合間にポップコーンの袋に突っ込まれる。


 油がボードにつかないように、スウェットのズボンで拭いながら人のパスワードをこじ開けてファイルを叩き出していた。



 ピノキオのスーパーコンピューターは世界中のネットユーザーの個人情報を、鯨のように飲み込んでいく。


 悪質なハッカーではない。


 情報収集で悪用することは”浦島”との契約反故になってしまう。


 悪魔と関係がありそうな記事、猟奇的・病質的な個人サイトをサイバーパトロールをする。


 そして悪魔召喚の呼びかけるサイト、殺人を望むサイトなどはネットウイルスを仕込んで破壊していくのがピノキオの任務だ。



 かき集めた情報を、まとめて”ラプンツェル”と”長靴を履いたネコ”へ送信する。


 デイライトを経由して行われるこの通信だけは、誰をもってしてもハックすることはできない。


 添付資料が多いせいでPCから”浦島”と”乙姫”へもそのまま送れる手段を持っているのは、情報担当の二人の加護を持つピノキオだけの特権だ。



 データを送ってからピノキオは、腹をこすった。


 最後にいつシャワーを浴びたのかも思い出せない。


 彼がふざけて、おもちゃ部屋トイ・ルームと呼ぶこの部屋は、悪魔に探知されない用に厳重に守られている。


 若気の至りで、国際機関のセキュリティの数々を突破したピノキオを、ラプンツェルが見つけて浦島たち天使にスカウトするよう声をかけられたのは7年前。


 ピノキオ自身も、自分が集めた資料がどう天使たちに割り振られているのかは知らない。


 集めたあとの仕事は、ラプンツェルと浦島たちの判断だ。


 そして長靴を履いたネコには、幾つもの偽造パスポートや現場へのチケット手配をしているだけ。



 冷蔵庫から、固くなったピザを出して食べながらピノキオはまた、サイバースペースという自分の世界に戻っていく。




 ***



「ピノキオから情報は受け取ったわ」



 ”ラプンツェル”がスマホを閉じる。


 ここは、ICPO、通称インターポール。国際犯罪を扱う世界の犯罪取締センターであった。


 その中の一角、Sルームと呼ばれる秘密部署はインターポール創設から存在する。



「各自、羽根の加護が反応するものを洗い出して、怪しいものは全て”浦島さま”たちへ」


「我々で倒せるレベルであれば、排除いたします」



 コードネーム、”ラプンツェル”は単体の人間のことではない。


 Sルームに在するものたちの総称であった。


 かぐやから全員が特注小型銃を渡されている。


 後始末から、情報操作、情報収集までを網羅して部署の中で割り当てていた。


 ピノキオの捜査が裏ならば、ラプンツェルの捜査は表のものが主になる。


 世界各国の連続殺人、人間に擬態した悪魔などを独自の能力で探索して浦島と乙姫へ情報を送り、判断をあおぐ。



 そして時には”長靴を履いたネコ”のバックアップも担当する。


 現場で後始末をすることがメインのネコは、主に最重要任務につく赤ずきんと狼の担当であるが最近活発化した赤ずきんたちの仕事が多い。


 まして、ネコには本業があるのだから、ラプンツェルたちが穴埋めをしなければならなかった。



 ****



 コードネーム”長靴を履いたネコ”は、偽造パスポートを念入りにしまった。


 各国の紙幣の束と、免許証。


 クレジットカードなどは万が一にも足取りを辿らせないために不要のものだ。



 ネコの本職はCIAーーアメリカ中央情報局にある。


 インターポールで部署を構えるラプンツェルとは違って任務の合間に、赤ずきんと狼の仕事の後始末屋だ。


 浦島や乙姫から標的情報を受け取って赤ずきんたちに流すこともあるが、大概は後始末が多い。


 天使の特注武器は人間には見えないので、薬莢などの心配はないが、狼の捨てたままのタバコの回収や悪魔の毒牙にかかった被害者たちの情報のリーク。



 よほどの指示や情報は浦島たちが直接送ってくるので、最近はもっぱら日本に滞在している赤ずきんと狼の後片付けが増えていた。


 しかし、最近になって狼の悪癖のタバコの吸い殻などは現場になく、被害が少ない段階での始末が多い。


 ただしCIAでの仕事もあるためこれ以上の長居はできそうにもない。


 これは新しい秘密情報保持者のおかげだろう。



 浦島とラプンツェルに、デイライトで状況報告をすると、長靴を履いたネコは鏡の前に立つ。


 仕事柄、変装することが多い。カラーコンタクトを外して髪染めで地毛に戻していく。


 スーツの姿になって忍ばせたテーザーガンに手を触れて、ネコは苦笑した。


 人間には見えないものが、空港で金属探知機にひっかかるはずもない。


 しかし、加護をもっている人間は悪魔には美味しい餌に見えるのも事実だった。



 どんな時でも油断はできない。



 スーツケースを抱えて、青森の民宿をチェックアウトしたネコの姿は、手配したタクシーに乗ると駅に向かって走り出した。



 .

ピノキオ、ラプンツェル、長靴を履いたネコの3部構成の面白くもない回でした。すいません。

次回、新キャラヒロインとその他登場!舞台はドイツです。

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