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五人少女シリーズ

五人がみんな違う能力に目覚めるスーパーヒーローアクション【五人少女シリーズ】

基本的にどこの話からでも一話完結で読むことが出来る五人少女シリーズです。

キャラ紹介はシリーズ一覧にプロフィール記事がほそぼそと置いてありますが、端的に


留音 あたしっ娘の格闘最強美女

衣玖 私っ娘の超IQ天才美少女

真凛 わたしっ娘のサイコテラー美少女

西香 わたくしっ娘の守銭奴最低美少女

あの子 描写することも出来ないほどに神々しい至高存在の限界突破美少女


となっています。雰囲気です。


「つまり、四次元にアクセス出来るようになると壁をすり抜けるだけじゃない、服だって袖を通す事なく着られるようになるし、ズボンだって頭から脱げる日も来るわけ。まさに宇宙の神秘よね」


「ふぅん」


「すごいですねぇー、という事はかつて黒島くんがジャージのズボンを肩まで履きあげて『人!』ってやってたのも出来なくなるのかなぁ?」


「それは違うんじゃありませんの?」


「でも出来なくなるといいなぁ〜」


 他愛のない会話。五人の少女たちは久々に揃って街へ出掛け、用事を済ませた彼女たちはオープンカフェで優雅にお茶とお菓子を楽しみながらちょっとした休憩を取っていた。そんな様子を店内の男女関わらずほぼ全ての人間が一度は目をやった事は、特筆すべきことではないだろう。


「さてそろそろ帰るかね。電車混む前に乗りたいし」


 テーブルがだいぶ片付いてきたのを頃合いに留音が立ち上がりながら提案すると、衣玖もトレーを手に立ち上がり、食器の返却口を確認する。西香はそんなの店員にやらせればいい、なんて言いつつも面倒くさそうにみんなに続いて食器を戻して店を出て行く。


「はぁ、人の多い所ってどうしてこんなに瘴気が濃いのかなぁ……」


 店を出て少し歩きながら真凛がボソッと呟く。近くにいた西香の耳に微かに入ったらしい。


「え?何か言いまして?真凛さん」


「あ、いえっ、なんでもないんですっ、人がいっぱいで疲れちゃったなぁーって」


「本当そうよね。私も人混みに酔っちゃうタイプだからわかるわ。ライブの時は全然平気なんだけど、おかしいわね」


 呟きを聞かれずに安心した気持ちで、あはは、と乾いた笑いをして取り繕う真凛。彼女にはある秘密があった。


 今から三ヶ月ほど前のことだ。あれは満月の輝く日の事。たしかカーペットの上をコロコロする粘着テープの部分の奴が残り三個しかない事を発見し、不安になって買い足しに行った夜の八時ごろの事だった。夜道を歩いているとどこからか声をかけられたのだ。


「ぎゅえっぎゅえっぎゅえぇ、お嬢ちゃん一人かぁい……俺様の名はギュエンドラス……ヴォイド司令より遣わされた人の闇より出でしシャドウアーミーの一員よぅ……怖かろう」


 妙な笑い方をしながら人様の家の屋根の上で何か言っているのがいる。人型ではあるが、光を遮るシルエットは筋肉質な上半身から生える六本の腕と三本の脚を現していた。その異形に対し、真凛は蔑んだように一瞥するとそのままスーパーへ向かう。割とどうでもいいのだ。


「俺様はこの地球を破壊し尽くし、新たにヴォイドゾーンを作るために送られた尖兵……ぎゅぇぎゅえぇ、逃げても無駄だぞぉ!」


「すいません、聞いてないです……」


 とにかくスーパーへ。フローリングの床もコロコロできるタイプの奴が欲しい……そんな事を考え、鬱陶しい客引きを振り切るようにスタスタ歩く。そんな真凛に、クリーチャーは一度の跳躍で目の前に立ちふさがった。その時!


「やめろーっキュ!」


 月光を反射する白い小さな影がクリーチャーに光を纏いながら体当たりし、その反動で真凛の隣にちょこんと立つ。短い手足に長い胴体、そしてシュッと伸びた尻尾……喋る白いカワウソだ。どこかで見た事あったとしても、それは別の話の事、気にしなくていい。


「探したっキュよ、真凛ちゃん!君はこの星を守る戦士、ピンキーキューティクルに選ばれたんだっキュ!」


「選ばれた?わたしがですか……?」


「そうっキュ!シャドウアーミーと戦う力を持つ光の戦士……それがキューティクルなんだっキュー!」


「その話……後で詳しく聞かせてください!今はちょっと!」


 真凛はカワウソが体当たりで動かしたクリーチャーと路地壁の隙間を縫ってピューっとスーパーへ向かうのだ。普段は夕方六時以降に外出しないから閉店時間が心配……ただその気持ちだけが真凛を急かしていた。


「えーうそでしょー!真凛ちゃーん!キュキュー……」


 と、その後契約、変身、初戦闘、圧倒的勝利、変身の説明、契約の説明、カワウソの正体、各種設定諸々の情報が流し込まれたりしたが、なんだかんだあって秘密の変身美少女として、真凛は日々迫り来るシャドウアーミーと戦うことになった。


 この秘密を他の人に知られてしまうと、契約により真凛の変身の力とこの件に関わる記憶を消すか、知った人が同じ契約者の立場に居なくてはならなくなる。みんなを危険な戦いに巻き込むわけにはいかない……だから真凛は全て秘密にして日常を過ごしてきたのだ。


 だが人の瘴気が濃い場所にはシャドウアーミーが現れやすい……こんな所で現れたらと、真凛は懸念していた。


 しかし予感は的中してしまった。人の瘴気……そしてこれまでに倒されてきたシャドウアーミーの虚無の残滓(ヴォイド司令によりシャドウアーミーに埋め込まれる虚無の欠片であり、例えやられてしまった場合でも、残滓は地球の大気と混ざり、人々に直接虚無を植え付けていく毒のようなものであり、シャドウアーミーの戦いやすい環境を作る物質なのだ。真凛が戦いを重ねるたびにシャドウアーミーが強くなっていった原因。冷酷無比なヴォイド司令らしい二段構えのトラップであり、光の住人は探知出来ない性質)が、ついに大気と融合を果たしたのだ。


 融合体は成長する嵐のように周囲に暴風と豪雨を巻き起こし、人々の闇を飲み込み、巨大化を続ける。これまでに真凛が相手をしたのは人と等倍か、大きくても真凛本人の身長から二倍を少し超えるくらいの大きさだった。それが今回はまるで違う……まだハッキリと姿形が定まっていないせいもあろうが、それはもう人ではなく高層マンションやビルと比較する大きさになってしまっている。


「緊急警報発令、緊急警報発令。市民の皆さんは、速やかに最寄りのシェルターに、避難してください。物はなるべく持たずに迅速に避難してください」


 町中に聞こえるようなサイレンがウーウーと鳴り響き、周りにいる人たちが急いでシェルターに向かって走っていくのが、雨と風で悪い視界の中でもうっすら確認できる。


「これは大変だぞ……あたしらも、早くシェルターに行こう!」


 これまでにも何度か危機を迎えているこの街には立派なシェルターが街のいたる所に設置されている。が、真凛は知っている……この荒ぶ天候は人に対して無慈悲で無関心なものでは無い。確実に破壊を目的とした悪意の塊だ。


「そうね……あんなの見たことないもの……」


 流石にみんなも怖気づいている。真凛だってそうだ、あの大きさには圧倒される。


「あなたもしっかりついてきなさいね。あっちですわ」


 少し前、白カワウソのフェルくん(本名はフェルディナント・ディ・アルケナバル。王族直下の上級貴族で、生まれつき変身の魔法を熟知し、光の魔法の適性が非常に高い純魔の一族の長男。年齢は十一歳と幼いが、その素養は歴代最高とされ、早くも王剣使いの騎士の称号を得た天才である。真凛はフェルくんと呼んでいて、フェルディナントは嫌がりつつも、最近は受け入れている)が言っていたのだ。ヴォイド司令は超大型の大量破壊兵器を用意していると。その起動には条件があるとされていたが、どうやらその条件が整ってしまったことを真凛は直感していた。(言わずもがな、虚無の残滓が規定値を満たした事こそ起動キーである)


 これが本気で暴れ始めたら、きっとシェルターだって無事では済まないはず。真凛は全てを投げ打ってでも、これを止める覚悟があった。


 だが、みんなの事は避難させねばならない。とにかくシェルターに行って、何か上手い口実で外に残り戦おうと考える。


「皆さん!早く行きましょう!」


 自分は後ろから付いて行こうとするが、誰も動かなかった。


「さ、さぁ皆さん?」


「わかってる!さぁ行くぞみんな!幸いシェルターは近いみたいだ!ほら!」


「そうですわね!早く行きますわよ!」


「そうね!あんな怖い竜巻的な……竜巻の届かない安全なところへ避難しましょう!」


 みんな口ではすごい乗り気なのに誰一人動かない。


「な、なんで動かないんですか?」


「いや、そりゃこっちのセリフだぞ。あたしのことはいいから、とにかく先行けって。後ろが一番あぶねぇからな、武術を極めたあたしが立ったほうが安全だろ?」


「そんな事気にしないでいいのよルー、あなたこそ先に行って。西香でも真凛でもあなたでもいいわよ、とにかく私はあの……背の順的に一番前は飽きたから後ろでいいの」


 ちなみに、二回目に行ったあなたはあの子を見ながら言った言葉だ。


「どんな理由ですの?わたくしだって嵐の映像を撮影して映像サイトに投稿して一稼ぎしたいので後ろで結構ですの」


 五人は暴風雨の中で円を作って相談中だ。あの子もみんなと一緒に行くと言って動こうとしない。そんな彼女たちの事など御構い無しに虚無の残滓は人々の感じるマイナスパワー(恐れや悲しみ、怒りなどの事)を吸収し、飽和する……するとその後、ハッキリと形が現れるのだ。現れたシャドウアーミーは超巨大で悪魔のような、まさに魔獣という姿……二足で立ち、尻尾で街をなぎ払い、両手でビルを掴み、大根でも抜くみたいに掴み上げ、どこかへ放ってしまう。ヴォイド司令の送り出した破壊の化身というだけあり、その行動は何を説明しようとも破壊という言葉を使わなければならないだろう。

 一刻も早くみんなを安全なところに避難させなきゃ……真凛はまだ少し遠くにいる怪獣を見ながらそう決意する。


「ほら!皆さん!すごく怖いのが出てきましたよ!早く行かなきゃですーっ!」


 みんな賛同しているのに、やっぱり誰一人動かない。


「もう埒があかねぇ……おいみんな!あのシェルターが見えるな?右の方にあるアレだ」


 留音が右手を斜めにあげて説明する。留音にとっては右斜め前。真凛の左後方を指しているが、当然みんなそんな事はばっちり分かっていると言わんばかりだ。


「あたしは特に深い意味もなく最後について行きたかったんだが、みんな動かないから仕方ない、せーのでみんな一緒にそっちに行くぞ」


「わたくしもお金稼ぎ以外に全く意味は無かったのですが、全員で動くしかありませんわね……」


「そうね……私のIQを持ってしても皆目見当も付かない生物を見ていたかった以外に何かしら理由があるわけじゃ全然無いし、みんなでシェルターに避難しましょう」


「じゃあ行きますよぉ〜、せーのっ!」


 タン!一斉にみんなの右足が一歩だけ踏み出した。……横に。


「おいっ!いやそうじゃねぇよ!たしかに右とは言ったけど、みんな右に動いたら意味ねぇだろ、しかもなんで全員一歩しか動かないんだよ?!」


 雨に打たれながら、全員位置を横に動かしただけ。


「そりゃ誰かが止まったから止まらざるを得なかったわけで。だいたいずっと動くなんて聞いてないわ。せーのと一歩を繰り返すのかと思うかもしれないじゃない」


「なんで五人四脚的なことしなきゃならないんだよ!いいか、次は止まらずにシェルターを目指すからな!せーの!」


 留音の合図から、今度は全員歩き続けた……右周りに。ザッザッザッザ。ぐーるぐる。


「だからちげぇって言ってるだろ!?わかってんのか!?クラスゴリアテ……じゃなかった、謎の巨大生物が攻めてきてるんだぞ!?真面目にやれよっ!なんで廻るんだよ!」


「それはこっちのセリフですわよ!留音さんが真っ先にシェルターを目指せばわたくしたちも自然とカニさん歩き的について行く形でそちらに移動できましたのに何故廻りますの?大堕天使ブルガン……じゃありませんわ、巨大な変異生物のような奴がもう街一つ更地にしてしまっているのに!」


 グルグルと右回りにその場を廻り続ける。


「もうこの流れでシェルターに向かいましょうよぉ!わたしは西香さんについて行きますから!じゃないとシャドウアー……じゃなくて、怖い怪獣が来ちゃいますからぁ!」


 全員頷いて今度こそシェルターを目指すという意思を固くする。


「……で、誰が先頭なの?早くしないと魔獣ガディオス……違った、映画のモンスターみたいな奴に殺されちゃうわよ!」


 意思の確認は済んでいるのだが、全員隣の人について行く気でいるからグルグルが止まらない。


 しかし何故みんなこうまで頑なに動かないのだろう。真凛は考えるが、答えは一つしかない。


 みんな、お互いが大事なんだ……だから自分より早くシェルターに入って欲しいと、それだけの事。そう思ってくれるみんなを、自分は絶対に助けてあげないと。そしてこの戦いには絶対に巻き込めない!


 その時、遠くから真凛を呼ぶ声が。


「おぉーい真凛ちゃーん!大変だよ!早く変身してみんなを助けなきゃ!」


「あー!しー!」


 フェルくんだ……!みんなに聞こえた!真凛はこちらに向かって四足で走ってくるフェルディナントを急いで捕まえ、口を塞いだ。


「え、ちょっと真凛さん……?なんですのその子……今喋っていませんでした?変身……?」


 全員、驚きに足を止め、フェルディナントに注目している。


「い、いやですよぅ西香さん、あはは、あなたは現実を歪めて見る癖があるせいで、それがとうとう耳にまで達してしまったんじゃないですか……」


「あのちょっと?」


「いや、でも確かに聞こえた。一体なんなんだ……?」


 留音の言葉にみんなが頷いている。フェルディナントは口を塞がれ、短い手足をばたばたもがいている。


「この子は……チョウスゴイ博士に作ってもらった人形です!すごい高性能で妄想癖まであって……」


 だめだ、たとえみんなを騙したってバラすわけにはいかない。もしバレたらみんなをあんな巨大で邪悪な敵との戦いに巻き込むことになってしまうかもしれない……。四人の視線がフェルディナントに集まっている。みんな納得してくれただろうか。


 その時、また別の声がした。フェルディナントでもなく、聞き覚えのない声だった。それでもフェルディナントから注意を逸らす絶好のタイミングであることに感謝する。声は留音の方から……。


「留音隊員!一体いつまで遊んでいるのだ!既にレベルシックスクラスの侵略生命体を確認しているだろう!早くへんし」


 その声はなんと留音の身につけている腕輪から聞こえた。しかも立体映像で、綺麗だが怖そうな女性の士官的な人が映っている。


「どー!」


 女性士官的な人の喋りが途中ながら留音は奇声で腕輪の声を遮りつつ、焦ったように腕輪を破壊した。腕輪……誰も何のコメントもしていなかったが、そういえば最近はめていたなぁ。留音は一瞬固まった後、誰が見ても何かを隠していると分かるような笑い方で、聞いてもいないことを話し出した。


「いや〜、あっはっは。これな、最近買ったプラモのキャラのグッズでな?たまに喋るんだよ、しかも名前も読んでくれるとかすごくない?でも今は遊んでる場合じゃないしさぁ?びっくりして壊しちまったよ!いやまじでなんでもないから」


 留音は目が笑ってない感じで腕輪の残骸を踏みつけてバラバラにした。


「……そんなアニメあったかしら。なんか妙にテクノロジー進んでるように見えるんだけど……」


 衣玖が腕輪の残骸を見ながら訝しんでいる。


 そうだ、留音はあの日……たまたま宇宙侵略生物、ドジュリオスと戦った。宇宙侵略生物……それは生物の持つ悲しみや恐れ、絶望感を増大させるネガティブドライブを持つ。わかりやすく言えば知的生命体の敵だ(単純に個体の物理パワーもあるが、それはメンタルとフィジカルの両面から侵略するためである)。


 奴は宇宙平和を守るベントラークルー(在り方としては独自に行動する傭兵に近いが、弱い惑星を守るために組織された軍隊である。各惑星に少人数が派遣されるのだが、隊員全てが特殊な力を持った精鋭で、星間戦争の終結や巨大変異生物の撃破など、多くの平和行為に貢献している)との戦いで手負いとなり、たまたま近くにいた健康体、留音の体をスナッチして回復を図ろうとしたところを、痴漢と勘違いした留音にボコボコにされ倒された。


 ベントラークルーの地球支部の隊員はそれを目撃。上官が留音を新たな隊員にと勧誘したのだ。


 だから宇宙侵略等級の二レベル、クラスレプラコーン級ドジュリオスを倒して以来、地球を守る為の変身ヒロイン、ベントレッドとして活動している。


 だがもしそれがみんなにバレてしまっては留音は以下略。


「そんな事ねぇよ!っていうかもっと気になる事あるだろ!西香!お前いつの間にか羽生えてるぞ!?」


「しまっ!」


 今度はみんなが西香に視線を移す。本当だ、コウモリのように美しい曲線の羽が主張しない大きさで西香の背中から見えているし、よく見れば頭にはチョンチョンと短いツノが生えているように見える。


 そこに人魂のような火がゆらゆらと飛んでくると、火の熱でできるモヤモヤの陽炎の中にツノを生やした小さな女の子が表示される。その子は西香を見つめながら言った。


「大堕天使ブルガンが痺れを切らせて現界したみたいなの。頼んだの、集魂士西香っち」


「てぇい!」


 西香は突然、何かを遮るようにその人魂を自前のナイフで切り捨てた。と思ったらそれが一瞬大きな鎌に見えたような気がして、みんな目を擦ったりキュッと目を閉じたりした。


「気のせいかしら、なんか女の子が……」


「気のせいですわよ!ほら見てくださいな!巨大な悪魔っぽいのがもう街五つくらい壊してますわよ!わたくしたちが目を向けるべきはそちらでは!?」


「たしかにそうですけどぉ……でも西香さんも悪魔っぽくなってます……」


 あの日……。


 人通りのない場所で西香は意識の途絶えた事があった。その狭間の時間、西香の前に、奇妙なモノがいた。見た目は天使のように白い羽を生やしているが、片翼なのだ。一体なんなのか、近くに寄ってみると、その天使らしきモノは苦しみだし、姿を獣のように変えて西香に襲いかかった。西香は自衛の為に自前のナイフを取り出すと、それが大鎌に変わってしまう。訳も分からずそれを振るっていると、可愛らしい女の子が加勢に来た。名を小悪魔のメルロム。彼女と力を合わせ、襲ってきた何かを撃退したのだ。その後メルロムは、天界で大罪を犯し堕天したモノが人の世で悪さをすると教えた(人の世の瘴気、そして堕ちた天使のマイナスの波長が重なると天使の性質が反転し、悪魔に近いモノになり、理性も消えてしまう)。


 西香は今回近くにいたせいで堕天使を隔離するメルロムの空間に引きずり込まれていたのだ(堕天使は人等倍である事がほとんどであり、メルロムの隔離空間もまたその大きさにのみ対応する。今回のような大天使の堕天には隔離が効かない)。


 そしてメルロムはその堕天使の魂を集めて生計を立てるハンターだった。助けられた西香は何か恩返しをしたいと申し出た。金を払えと言われる前に肩でも揉んでチャラにしてもらおうという考えだったのだが、刈り取りに協力してくれると勘違いしたメルロムにより契約が成立。堕天使が近くにいると自然と悪魔化するようになってしまったのだ。


 最初の堕天使を刈り取って以来、西香は今では変身ヒロイン、ブラックソウルリーパーとして日々活動している。


 そしてこの事はみんなには以下略。


「それは!……それは、そう!あなたたちがわたくしに関心を向けないものですから気付かなかっただけです!わたくし、今日は最初からこの素敵な悪魔コスでした!ハロウィンの四十三日前だしそろそろデモンストレーションでもと思いまして!」


 そう言って羽を自分の体に密着させ、服のようにすると羽の分広がっていた大きさの違和感が消えて、なんとなくそうかなという気分になる。羽って動かせるんだ、という疑問は誰にも無かった。


「そんな事より!わたくしはそれの方が気になります!衣玖さん!あなたの腕!光ってますわよ!!」


「あ!」


 奇声をあげた衣玖の右腕は確かに光を放っていた。手の甲から肩にかけて、赤いラインが鼓動するように光っているのを衣玖は気付かされた途端から必死に隠そうとしている。


「あれ?それこの前刺青入れたって言ってた所か?なんで光ってるんだ?」


 そうだ、留音の指摘通り、真凛も覚えている。たしか衣玖が突然刺青を入れた日があった。何かのバンドの真似だと言っていたけど、みんなやり過ぎだと思ってたっけ。


「ち、違うの!これはあれよ!蛍光塗料が塗ってあるだけで、決して光ったりしてるわけじゃないわよ!?仮に光ってるように見えてもそれは私が電飾を植えつけているだけで全くおかしなところはないから!」


「は?」


 何を言っているのかは全員よくわかってない。でも考えるより前にまた変な事が起きている。腕の光から妖艶な気配を漂わせる人物が薄っすら見えるし、その人には頭にもふっとしてそうな動物の耳のような形も見えている。


「めらべや。魔獣の匂いがするぞえ。疾くわらわにあの魔獣を」


「わー!うー!静まれ私の右腕ー!なんちゃってー……」


 自分の右腕を服の袖の中に引っ込めて、自分の体を使って右腕を圧迫しているようだった。


「なんか腕の辺りから声が聞こえたような気がしましたけど……」


 真凛が訝しむと、衣玖は顔をブンブン横に振りながら答えた。


「気のせいよ!それとも真凛は腕が喋るとでも言うの!?喋るわけないじゃない!まさか喋らないわよ!絶対喋らない!でももし本当に喋っていたような気がしたとしたら、それは私のパフォーマンスよ……」


 だがあの日……。


 衣玖が一人夜道を歩いていると、狭い狭い路地から殺気立った獣が飛び出してきた。生物学的にはコヨーテのようななりをしてグルルと唸り血肉を求めるように衣玖に襲いかかった。なんとか逃げるも追い詰められた衣玖の頭に声が響く……そこの女童(めらべ)、危機を脱する力が欲しいか……。女帝のような声に頷くと……なんやかんやで衣玖に調伏の力が宿った。衣玖の腕の刺青はノーバディエナジー(何者でもない力。人間の発する行き場のない想いが発散された際に空中に漂う)によって現れた魔獣(ノーバディエナジーと人間の悪意が融合したモノ)に対抗する者の証であり、魔獣が発する魔障の念を受け取ると腕の紋章が危険を察知し、光り始めるのだ。そしてその光は近さと強大さからなる危険度を色で示す……朱に光る腕……巨大魔獣の危険度は非常に高いということだ。


 とにかく、そうして最初の魔獣を倒して以来、衣玖は力を与えてくれた妖狐御前と共に変身ヒロイン、蒼炎の狩人として日夜活動しているのだ。


 だがそれはみんなには秘密で以下略。


「必死すぎるだろ……でもま、みんな秘密にしたいことの一つや二つはあるよな……もうその辺についてお互いに詮索しない方向で行こうぜ。今はとにかくシェルターだな!」


 そうだ、そう言えば安全地帯を目指していたんだった。でも多分、あの子以外は必要ないだろう。いや、あの子にも何か隠された力があるのではないか?そう考えるのは無理もない。


 あの日……彼女は一人道を歩き、家に帰った。真凛に頼まれ買い物をしたのだ。八百屋では店員のおっちゃんがあの子にデレデレで常に半額で買えるため、買い物はよく頼まれたり一緒に行く。だから買い物に行き、そして家に帰ったのだ。


 そしてまたあの日、彼女は外を歩いた。天気が良かったからだ。小鳥は賛歌を歌い、野良猫は争いを止め、歩く彼女を見た老婆は五十歳若返った。


 またある日、道を歩いていた彼女に背後から男が話しかけた。ナンパだった。だが彼女が振り返る直前、衣玖のワープ装置(時間誤差マイナス二秒)で現れた留音のフルオープンストライクアッパーカット弍式改(最終決戦仕様)により成層圏に打ち上げられ、落ちてくるところを西香に十三連レールガン(クイックトリガー&ダブルマガジン&フル改造)で必中に撃ち抜かれ、真凛によって宇宙よりその存在を消された(当然アカシックレコードからも)。


 だがあの日。あの日だけは違った。あの日は家から一歩も出なかったのだ。みんなとおうちでお喋りをして楽しい時間を過ごした……小鳥は泣き、野良猫は猫パンチを止めず、若返った老婆は一日分老けた、が。彼女は知らない……そのみんなとお喋りをして過ごすという行為にどれほどの意味があったのかを。


 その日、みんなは戦いに疲れていた。給料は少ないし、誰にも言えないから感謝もされないし、敵も際限ない。せめてアニメ化してくれれば……みんなそう思っていた。


 だがその日だ。みんなの意思が固まった。あの子と話していて、この子という人類の宝を守らなければならないと……守るべきものを確かに一つ定めたのだ。


 そうしてみんなの心に影響を与えたあの子だが、彼女自身はなんの脅威にもさらされず、特殊な力を持ってはいない。


 だからあの子にはシェルターが必要なのだが……。


「それじゃあ誰が最初にこの輪を破壊するの?」


「……」


 やっぱり誰も動こうとせず、みんなでグルグル回る。あれから回り続けているぞ。


「皆さん良いんですの?これじゃまるでわたくしとお友達のようですわよ?わたくしは構いませんが、あなたたちが周りから公認されても言い逃れできませんわねぇ?くっく」


「お前そんな自虐してまで抜けたくないの?」


 留音の引き気味の表情には得意げにフンスと鼻を鳴らしてしてやったりの表情を作る西香。


「あーもう!みんなどうかしてるわよ!誰でもいいから早くシェルターに向かって!」


 一向に前進しないことに衣玖が痺れを切らすが、当然自分が先に向かおうとは思っていないようだ。


「だったら衣玖さんが行ってくださいー!」


「私っ……だめよ、私がエスカレーター乗るとこ見た事ないの?!……別の人ー!」


 ちなみに、タイミングを図るために二段分間を空けるぞ。


「わたくしは別にずっとこのままでもいいんですのよ?くっくっく、どんどん増してますわ……わたくしが皆さんに感じる友好度……!!」


「おい西香!焦燥感を煽るんじゃない!あたしたちだっていっぱいいっぱいなんだぞ!?」


「だぁったら留音さんが一歩踏み出せばいいんじゃありませんの!?それで色々解決ですわよ!」


「あぁ!?あたしはみんなのためを思ってだなぁ!」


「もぉー!空気悪いですからぁー!喧嘩やめてくださいー!」


「なんとかしようと思うなら真凛が先行って!」


「嫌ですぅッ!そんなつもりで言ったんじゃありません!!」


「あと三周でお友達、四周したら親友……五周で心の友……六周したらおほほほ……」


「おいやばいぞ!誰か早くシェルターに向かえよ!あと二周で一生付きまとわれるぞ!」


「じゃあもう止まるっていうのは!?っていうかなんで廻ってんだっけ私たち!」


「知らん!よし止まろうッ」


「ち……やっぱりお友達作りというのは至難を極めますわね……」


「よかったぁ……これで面倒はひとつ解決ですね……って、あれ?ここどこですか?」


 真凛はさらりと西香の友達認定を面倒ごとだと言いつつ、周辺の様子の様子が気になったらしい、ぽかんと惚けた様子で辺りを見回しているが、そこには一面の灰色世界が広がっていた。


「あれま。シェルターも無いわね。どうしたのかしら」


 シェルター入り口のドアのあったはずの場所、というか近場に何も残っていない、金属片や建物の残骸が転がっている程度だった。


「ひょっとして、あのモンスターが全部破壊していったのでは?わたくしたち、グルグルに夢中で気がつかなかったのかもしれませんわ……」


「なるほどぉ……」


 全くなるほどでは無いが、概ねその通りである。何故自分たちが無事だったのかは個人個人で感慨の中に答えがあった。真凛はフェルディナントに与えられた光の技「オーロラフィールド」(周辺一帯に自分に害なすものの侵入を遮断するフィールドを張る技)のおかげだと思っているし、留音はベントラーに支給された「事象屈折式シールド」(発生した超常事象を別次元に送るシールド装置)のおかげだと思っているし、西香は悪魔の羽に宿った「デビルウィングフォート」(天界由来のもの全てを拒絶する防壁)のおかげだと思っているし、衣玖は妖狐御前の施した「妖魔式護法結界」(魔獣による光子系攻撃を全て妖狐御前の妖力に変換する結界)のおかげだと思っている。実際、グルグル中にその辺が上手い事作用したおかげで色々やり過ごしていた。


 そしてあの子だけは細かい事よりも先にみんなの無事に安心している。


「シェルターが無くなった事で誰も喧嘩もしないで済みますね!あぁ〜よかったぁ、これでめでたしですねっ」


「あぁそうだな、喧嘩なんてあたしららしくねぇよな!いつもニコニコいい子ちゃん、それがあたしらってもんだよな!」


「ふふ、そうね。もう帰って休みましょう。とんだ休日だったわ」


「そうですわね……家がまだ残ってればいいですけど……なんちゃって」


 みんなからの団欒の笑い声が虚空に響く。決してなんちゃってでは済まされない光景が広がっているのだが。


 安心から真凛も気が緩んだのだろう、抑えていたフェルディナントが真凛の腕を抜け出した。


「もー!真凛ちゃん!早く変身して戦うんだっきゅ!」


「あぁ!フェルくん!バレちゃうっ……」


「そんな事言ってる場合じゃ無いっきゅー!地球のピンチだよ!」


 みんなの視線を釘付けにするフェルディナント。みんながそれについて反応しようとした時、留音の隣に小さな落雷のような電流と火花が走った。


「留音隊員!こんなところで何をしている!?あなたの任務は既に発令されているでしょう?早く出動を!」


「わ、た、隊長!しかし民間人がまだ……」


「いいから早く行く!既に地表の六割は攻撃を受けているのだぞ!?」


 突然現れた女性士官。みんながそれについても反応をしたい感じになっている時、今度は地表から穴が開き、小さな女の子がコホコホと可愛い咳をしながらよいしょと這い出してきた。


「西香っち、早く行かないと吸魂した堕天使が悪神になっちゃうの。それはとってもまずいの、天界も焦ってるみたいなの」


「ちょっとっ、メルロムさん、あなた出てきて大丈夫なんですの!?」


「もうこの辺人の気配全然無いの。あ、こんにちはなの」


 ぺこりと頭を下げる少女に、みんなもこんにちはと頭を下げて反応をした時、今度は空中に漢字の書かれた魔法陣のようなものが現れ、そこから美しい毛並みの尻尾と耳を生やした女性が現れる。


「めらべや。疾くせんと赤字よーて。わらわもう腹ペコぞぇ。あの魔獣は油濃そうで今が喰いどきぞ。さっとやろなぁ?」


「あぁもう出てきちゃったのね……もちろん後で行くわよ……でもいまはちょっと」


「んぞぉ?あれまみんなめらべのお友達かの?これはこれは美味しそうな子ばっかり……」


 みんなに反応した妖狐御前に全員警戒しながら、だいたい状況を察したようだ。


「なんか、みんな訳ありって事みたいだな」


「そうですわね……わたくしたちがさっきまでやってた事、多分全否定ですわよ、これ」


「でもいいじゃないですかぁ!みんなで一緒に戦えるなんて嬉しいですもん!」


「あ、ちょっと真凛……」


 衣玖がとんとんと真凛を叩き、あの子の様子を視線で教えた。そうだ、あの子だけはこの状況にないのだ……。


「あっ……もちろんみんなと一緒にあなたを守れるのが一番嬉しいんですよ……?」


 あの子の表情は晴れない。みんなと一緒に戦えない事が悔しくて悲しい。そう思っている様子を察した留音がフォローする。


「そう気に病むな、こんな事、お前にゃ向かないよ。やられると痛いし、給料は少ないし、秘密主義だから誰からも感謝はされないし……それでもやってるのは、一つは確実にいつもあたしたちを元気づけてくれるお前を守れるからなんだ。……あたしに守らせてくれよ、な」


 女性士官はムッとしつつも黙って聞いていた。


「そうよ。うちのお狐さまは人使いが荒いし。でも誰かがやらなきゃね。それはあなたじゃなくていい……私があなたを守るわ」


 妖狐御前は聞いているのかいないのか、あくびをしながら宙にふわふわ浮きメルロムを膝に置いてフェルディナントで遊んでいる。


「わたくしもそう……最初は成り行きでしたけど、あなたを守るためでしたら不思議とパワーが湧いてきますの。もちろん辛い時もありますけどね……」


「だから安心して待っていてください!わたしたち、みんなであのモンスターを倒して帰ってきますから!」


 あぁみんなが行ってしまう……みんなは選んで戦っているんだとしても、あの子の心にはみんなを心配に想う気持ちでいっぱいになる。


 するとその時、空から一条の光があの子に降り注ぐ。エンジェルラダーを絞ったような明確な光の道があの子を一人照らすのだ。それはまるで神に祈りが通じたかのよう。すると空から何かが降りてきた。天使や神というイメージに近いかもしれないが、その存在はもっと大きく、ゼロという概念すら自由にできる完全な上位存在の世母(聖母)……まさに全ての母であった。


「あなたの願い、届きました……あなたに私の力の一部を授けましょう。これがあれば、あなたの住む世界において全ての奇跡はあなたにとって日常となるでしょう。それはセカイの力。あなたなら間違った使い方はしませんね」


 みんな目を奪われていた。聖母はただあの子を優しく包み、それだけであの子の存在が一つ上のものになった事を実感できるほど、明確に全てのものと違うオーラを放っていたのだ。


「聞いた事があるっきゅ……全ての星、銀河、小さな原子の始まり……世界という想像を初めて創造した母なる存在、マザーユニバース……ボクの星でも小さな伝承として残ってるんだっきゅ……」


 フェルディナントが目を丸くしながら真凛の足元の影に自分を隠し、覗き見るように聖母を見て言った。


「それじゃこの方は……誰も知らない、辿り着けない創造主……!」


 とは女性士官の言葉だ。続いてメルロム、妖狐御前。


「天界にも魔界にも残っている共通伝承の一つなの。サインくださいなの」


「久方ぶりだのマザー。……前に姿を見せたのは地球の前の前の星の頃だったかのう……マザーの目にかかるとは、凄い小娘じゃな……」


 実に数千億は前の世界の話だ。真凛たちはポカンとしているが、力を持っている人たちはそれなりに予備知識を持っているらしい。


「さぁ変身してみなさい。あなたの感じた事すべてが具現するマトイを。そう、その名は……」

 聖母の言葉であの子は変身する……服装がどんどん変わっていく、なんて華々しく、優雅で神々しいのだろう。


「きゅ、キュキュ……あれが伝説の創神の衣、ゴールデンレインボースーパーレジェンドオルタナティブ」


「ウルトラミラクルパーフェクトレインボーブリリアント」


「アメイジングレボリューションアルティメットレインボーラヴ」


「ギャラクシーセイントプラネットセブンカラーの衣……」


 変身が完了した。色も何もかも形容できない、見るものを圧倒し、視覚を飛び越えて脳に直接姿を届ける存在となったのだ。ただその服の名前については各々感じるところがあった。


「名前なっげっ……」


「しかもレインボーって何回か聞こえましたわよ」


「セブンカラーとも言ってたわね」


「かっこいい〜!」


 こうして五人はそれぞれ超常の力を手にした。五人の戦士がここに集ったのだ。


「お前……でも、いいのか?」


 留音はあの子に最終確認を取った。いくら力を得ても戦いとは恐ろしいもの。その確認に、あの子は静かに頷いた。


「ルー、聞くまでもないわ、彼女が願ったからマザーユニバースが現れたんだもの。みんなも準備、出来てるわね?」


 衣玖は腕を晒し、握りこぶしを作ると腕の紋章が光り輝く。


「はい!」


 真凛ももちろんわかっている。手を空中に掲げると可愛らしいハープか何かの音と共に魔法のステッキが現れ、それをクルクルと回しながら構えた。


「初めての共同戦線、ですわね」


 西香も羽を広げ、いつでも魔力の奔流を身にまとう準備が出来ているようだ。


「よし!それじゃいっちょやってやろうじゃないの!」


 留音もベルトに固定していた細長い機械らしきものを取り出し、片手でペンを回すように持ち直して構えた。


「行くよ!」


 みんなが一斉に変身の構え挙動に入る。そして変身を叫ぶのだ。その声は今までできっと一番ワクワクとドキドキに溢れていて、きっと恐れるものは何もないという心情が表れるような叫びになる、と思う。


「へん!」


 しん、に続く、みんなのノリが頂点に達しかけていたその瞬間。


 みんなは横に並んで変身モーション。あの子は既に変身しているが右手の人差し指を天高くに向かって掲げていた。奇跡を一つだけ願う、そのための最小限の動作だ。


 みんなには危険な目にあって欲しくないし、みんなはさっき戦いが辛いと言っていた……あの子は奇跡に願う。みんなとこの戦いの前提を遠ざけよう、と。


 あの子は奇跡の力で全てを作り変えることにした。悪者が悪者として活動するようになった理由が生きてきた環境にあるなら、それら全てを良いものに変えた。ヴォイド司令はもう虚無を感じない。彼は子供時代にクラスカーストトップのモテイケ男に気に入られて学園生活はそれなりに楽しかったから。そうやってこの戦いに関わったモノ全てのあり方を変え、悪いものは良く、良いものは良いまま世界を作り変えたのだ。


 そして口では色々言ってたけど実際は割と楽しんでいたみんなを、戦いから遠ざけたのだ。


 それからこの戦いが起こる前の状態に戻す……ならば自分にも奇跡の力なんて必要無いと、その子は何の躊躇もなく力を手放し、みんなと過ごす日常に戻った。


 こうして少女たちは変身を披露する事も、また今をときめく変身ヒロインになる事も無くなった。だがそれもまたこの子らの宿命であり、この話のハッピーエンドなのかもしれない。だってこの子らが無駄にグルグルやってるうちに何万人も犠牲者が出ているわけだし。


 これで良かった、うん。みんな元どおりだ。これを読んだあなたの時間は元に戻らないけど。

あなたから時間は奪われましたが、最後には私からの感謝をお送りします。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。


シリーズにはこの他にも様々なバトルものがあります。推理モノや風邪をひくはなしなどもありますので、是非どうぞ。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  あの日は(中略)若返った老婆は一日分老けた。← [気になる点]  長ぇよ。 [一言]  古い話から読んでいってやるからなー。  覚悟しておけー。
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