プロローグ~全ての始まり~
初投稿です。
暖かい目でご覧下さい
「あぁ なんでこんなに夏は暑いのだろう」
電車の座席に座りながら、呻くように声を出す少女。
「しょうがないよ。夏だもん」
隣から透き通るような声が聞こえる。
少女の親友の榑井 光里である。
艶やかな黒い長髪に、整った顔立ち、胸こそ無いものの、アンケートを採ったならば10人中10人が美人だと認めるほどの美貌である。
しかも、老若男女誰に対しても優しいという、完璧な親友である。
「それは、答えになってな~~い」
「うーーん、それじゃあ詳しく説明すると、地球の公転が……」
「難しい話は止めてーー!! 頭がオーバーヒートするーー」
「えぇ?! でもそれじゃあ夏が暑い理由が説明出来ないよ」
真剣に悩み始める光里に、少女は長い溜め息をついた。
「はぁ…… その事はもういいよ…… あ、もう降りなきゃ。それじゃあまた明日ね!!」
そう言うと、少女は電車を降りた。
「うん!! また明日夏が暑い理由について教えてあげるねー」
と、光里は満面の笑みで返してきた。
少女は苦笑いしながら
「楽しみにしてるー」
というと、改札口へ向かった。
光里と別れた後、少女は足早に行きつけの書店へと向かう。
今日は、少女が2年前から集めている漫画の最終巻の発売日であった。
少女は新刊を買うと、嬉しそうに顔を綻ばせる。
鼻歌を歌いながら家に帰ると、誰も居ないはずの家の玄関の扉が少し開いていた。
(まさか泥棒?)
と、少女は警戒しながらゆっくりと扉に近づいていく。
こっそりと玄関を覗いてみると、そこには見慣れた玄関ではなく、真っ暗な何もかもを吸い込むような、そんな空間が広がっていた。
そして、無意識に真っ暗な空間に足を踏み入れた。
少女がこの空間に足を踏み入れた時点で、少女の日常がすべて崩れ去って仕舞ったこと。
そして、これから少女に、地獄にも等しい辛い出来事が待ち構えていることを知るものは、この世界には居なかった。
ーーーーーーーーーー
少女は、ただ真っ暗で人の声どころか光すら見えない、そんな空間をかれこれ1時間程歩いていた。
きっと、家の玄関にあった、あの真っ暗な闇の中なのだろうなーと思い、歩けば直ぐに出られるのでは?と予想して歩いたけども全く出られる気配はない。
「あぁぁ 早く漫画読みたいよーー」
「疲れたよーー もう歩けないよーー」
「何で私の家にこんn……」
『うるさーーーい!! もう少し静かに出来ないのか 君は?!』
少女がイライラしながら大声で叫んでいると、何処からか声が聞こえた。
もしかしたら此処から出られるかもしれないと少女は思い、声の主に会うために
「あーなーたーはーだーれーでーすーかー?」
と、もう一度叫んでみると、何処からか
『神様だよ!! まったく、五月蝿いなぁ……』
という声と共に、1mほどの身長の棒人間 約30体を引き連れた人が出てきた。
顔はモザイクのようなものがかかっていてよく分からないが、とりあえず自分以外の誰かに会えた喜びで、胸がいっぱいの少女に、現れた自称 神様が
『君は、【童話の世界】に行ってみたい、と思ったことはあるかい?』
と、急に聞いてきた。
少女は、突然の質問に 「ふぇ?」 という間抜けな声しか出せない。
『沈黙は肯定ととるけど、いいかな?』
そんな少女を無視して自称 神様が聞いてくる。
「え…… えぇっと…… その…… あの…… まぁ、行きたいか 行きたくないかでいえば……」
『うん うん♪』
「行きたくないですよ…… 早く私を家に返してくれないかな?」
『そこは普通 【え? 童話の世界に行けるの? わーい 私、シンデレラの世界がいいなー♪】くらい言うと思っていたのだけど……』
自称 神様は、少し項垂れながらボソボソと呟く。
『【童話の世界】を旅してくれれば、家に返してあげようと思ったのになー』
その言葉を聞き逃さない少女は、
「もしも 行かないって言ったら私はどうなるの?」
『そうだね…… ずっとこの空間でひとり かな?』
もはや、選択肢は一つしかない
「わかった 行くわ。その【童話の世界】にいかないと帰れないのよね?」
『あぁ、その通りだよ。それじゃあ行こうか』
直後、少女の視界がグニャリと捻れ、そのまま意識が途切れた。
転送される直前に、自称 神様の口許がニタァ と言った感じに開かれたことを、少女は知らない。
ーーーーーーーーーー
『いやぁ、まさかあんなにも穴だらけの説明で行っちゃうなんて。相当切羽詰まってたんだねー まぁ、精々その心が壊れないように頑張りなよ…… クスクスクス』
『ホントお前は悪趣味だよなー。 俺も他人の事言ってられないがな。 あの女、【親友の子が 洗脳されて童話の世界に行っちゃった。でも、僕はその世界に行けないから、どうか君があの子を助けておくれ】って言ったら速攻で「行きますっ」だってさ。相当あの子が好きなんだろうな』
『おいおい、俺は洗脳した悪者扱いか?それは酷いぜ』
『まぁ、どっちもどっちだよな…… クスクスクス』
少女が消えた空間で自称 神様 二人が話していた。
感想や要求がありましたら、お気軽にどうぞ。
最初は『赤ずきん』からです。
『光里』の名字、自称 神様 と 少女 が出会うシーン等を修正しました。