表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

死にたいので 飛び降ります。(仮)

作者: 急アル

自殺前の 人は こんな明るくないです。

相談もせず 飛び降りる人は 相当病んでいます。 相談する人は 少しでも生きたいという思いがあります。そういう設定にしてたら もっとちゃんとした小説になったんだろうな…

重い足取りで 屋上へと向かう。途中まではエレベーターだったけど今は階段だ、流石に屋上まで届いているエレベーターは ここいらにはない。


光の漏れている扉を開けると一気に明るくなり、少し開けた場所へと出る。

誰も居ない。


私は フェンスの方へ歩いて行き、 靴を脱いで、揃える。真昼間だと ここいら辺りは人通りが少なくなる。


私は 一旦深呼吸してからフェンスを乗り越える。

思った通り 下に人はあまりいない。


高さを認知した私の脚は 震え始めた。


その時、


「貴方が落としたのは この金のリンゴ?それとも銀のリンゴ?」


後ろから 若い女性の声が聞こえた。さっき誰もいなかった筈だけど。

振り返り確認すると 高校生くらいの子が シルクハットに仮面を被り タキシードで何の変哲もないリンゴを2つ持っている。


金と銀のリンゴと言っていたが、どう見ても 普通のリンゴである。


「えーと、私今から自殺するんだけど…」


そう言うと、仮面の子は


「先にこれを答えていけ。」


と 言った。


私は 少し困った。そもそも リンゴ自体落としていないから、普通のリンゴですっとも答えようがないのだが。

とりあえず 気になっていたことを聞いてみることにする。


「手に持っているリンゴは 普通のリンゴだよね?」


聞くと仮面の子は 直ぐに


「このリンゴは 愚か者には 金と銀に見えるリンゴである。」


えっと?つまり 普通のリンゴだと いうことね。そう思っていると そのまま仮面の子は


「これが普通のリンゴに見えるということは 其方(そなた)は 愚か者では ないっと言うことだ。自殺なんて馬鹿なまねなどするでない。」


いきなり 強引な説得が入った。まぁ いいや、無視して飛び降りよう。

私は体の向きを変える。


「えええっ?ちょっと せめてリンゴだけでも答えていってくださいよぉ。」


仮面の子は 驚いた調子でそう言った。口調が 戻ってる。


「良いんですか、その靴?普通自殺する時は 靴を履いたまま飛ぶんです。あとで 警察に発見された時、あっコイツ、ドラマの見過ぎだなぁっという扱いされるんですよ。本当に良いんですか?」


彼女の慌てた声が聞こえる。 でも もし本当にそうだとしたら 死んだあとにそんな扱いされたくないな。

私は 靴を取りに戻ることにした。


振り返ると彼女は ずり落ちた仮面を慌てて直そうとしている。それ程慌てたのか。でも 両手のリンゴのせいで 上手く直せないらしい。


そんな 可愛らしい光景を見ながら 私は再びフェンスを乗り越え、屋上に立つ。

すると 彼女は 仮面が 上手に 直せたらしく、またリンゴを差し出して私に向かった。


「貴方が落としたのは どっちですか?」


靴を履きながら 彼女の方をみる。

もう面倒臭いからさっさと終わらせよう。

私は彼女に どっちが金なのかを尋ねてみた。


すると彼女は 右手を上げながら、コッチが 金だ!と教えてくれた。


私は 彼女の右手を指しながら コッチと答える。


「ええー。ちゃんと 私が落としたのは 普通のリンゴだと答えてくださいよぉ。」


いや、右手のリンゴも 普通のリンゴでしょう? と言うより この二つを差し出してどっち?って聞いたのそっちだよね?

面倒臭くなったので、私はまた フェンスを越えようとする。


すると彼女は また 慌てて


「ダメですよ、ちゃんと答えてから逝って下さい。はい!貴方が落としたのは この金のリンゴですか? それとも 銀のリンゴですか?」


彼女は ハキハキとした物言いでそう言った。

私は 一旦乗り越えるのを中断し、普通のリンゴだと答える。

すると 彼女は


「貴方は正直ものですね。お礼に この正直者には普通に見える金のリンゴと正直者には普通に見える銀のリンゴを授けましょう。そして、正直者の貴方が自殺なんて似合わない。馬鹿なまねは止めなさい。」


また強引な説得が入った。そんな彼女の説得が言い終わる頃に私はフェンスを乗り越えるのが完了した。まぁいいや、シカトしよう。そして また脚が震え始める。


彼女は 無視されたことが分かると 後ろで何やらし始めた。少々物音が聞こえる。


そして、


「お母さん?お母さんなの?」


意味不明な言葉を投げかけてきた。


私は振り返ってみると彼女はシルクハット姿でなくなってた。彼女の後ろに脱ぎ散らかされたタキシード類が あるが、彼女が着ていたのは どこから出てきたかわからないフリルの沢山ついた水色ワンピースだった。


一応 私は27歳だ。高校生くらいの生き別れた 子供は無理がある。


彼女は続けた。


「ほら、分かる?私?10年前にあの丘の上で別れて、大きくなったら会おうって約束した。」


彼女は 両手を胸の前に組みながらそう叫ぶ。


10年前って 私 あなたぐらいの歳だったんですけど。ああ、あの頃は良かったなぁ、借金のことは 考えていなくて。告って振られたこともあったなぁ。青春だったなぁ。

イヤイヤ、今はそんな感傷に浸ってちゃ駄目だ。死ぬんだ私。頑張れ私!


再び 向きを飛び降りる方へと変える。


「お母さん止めて!私の為に死なないで!例え どんな目に会おうと、私はお母さんと一緒にいられるのが1番幸せだから。」


彼女がまた叫んだ。


「ほら、私が5歳の時 遊園地に連れていってくれたよね?あれ とっても楽しかった。また お母さんに連れていってもらいたくて、ずっと夢見てた。」


彼女の迫真の演技は 続けた。

何か想像の話を織り込まれちゃってるよ。私は下を見ながら そう思った。


また彼女は


「ほら見てこのリンゴ。再会のときに見せ合ってあの頃を思い出そうっと誓ったリンゴ。まさか忘れちゃったの?」


私は 何となく振り返る。

彼女は さっきのリンゴを持ちながら 涙目になってた。

10年前の 再会の印が リンゴかよ!

腐ってるよ もうそのリンゴ!


そう思いつつも私が死ぬ事には変わりない、視線を落ちるべきところへ戻す。

しかし、通りには何人かの人が戯れながら歩いてくるのが見えた。マズイ、今通報させた面倒だ。

私はもう1回フェンスを越える事となった。


越えた先には もちろん彼女がいた。ただし、ワンピース姿ではなかった。さっきのタキシードと一緒にワンピースが丸められている。彼女は 婦警のコスプレをしていた。


私は そんな彼女を無視しつつ 通行人からの視線から外れるため、屋上の中心の方へと歩いた。

すると 彼女は フェンスから離れた私を素早く取り押さえた。

細身な体なのに力が強い。そのまま彼女は 私を押し倒す。


「生きていれば 必ずいいことがある。死にたいっと思った理由はなんだ?」


彼女は 私を押さえつけながら 言う。

今度は 警察の真似かぁ。

押し倒された体を起こそうにも全く動かない。強すぎだって…


「答えてみるとスッキリするかも知れないよ。」


彼女は そのまま 押さえつけてる。


私の 死にたい理由。

私は 親が借金していて、その連帯保証人が逮捕されたこと。

そして、大金が 払えない親は 私を置いて、夜逃げしたこと。

億単位の金額を1人で稼がなくては行けなくなったこと。

仕方なく体を売ったこと。

体を売った先で ある客が逮捕され、その人のツケを全て私が払わなくいけなくなったこと。

タダ働きにさせられたことなどを 話した。

彼女は 頷きながら 聞いていた。


ちょうど全てを話し終えたあたりの時、屋上の扉が開いた。

視線を向けると さっき戯れていた男達だった。

私たちを一瞥したかと思うと。


「すみません…」


そう言って、1人が扉を閉め、男達全員が 退陣した。


何となく謝られた理由を考える。私が押し倒されて、婦警のコスプレの高校生くらいの女の子が乗っている…

あれ?まさか今 コスプレしながら百合だと勘違いされた?えっえっ?恥ずかしくて死にたい。そうだ、死ぬんだった私。


そう思って フと彼女の方を見ると、顔を赤面させているのか 両手で顔を隠していた。今はただ 馬乗り状態である。


私は 立ち上がろうと力を入れた。すると彼女は私の上からゴロンっと転がった。


さて 本日何回目かのフェンスを乗り越え、また 死ぬ事を覚悟する。すると急に また 屋上の扉が勢いよく開いた。


「死んじゃ駄目だ!」


さっき 扉を閉めた男が叫んだ。多分 さっきのを百合と勘違いして、覗きをしてたんだろう。それが急に飛び降りようとしている私に言葉を投げかけた。


だけど その声に私は驚いて 足を踏み外す。


「あぁっ」


体に 無重力の感覚が訪れる。私は建物から投げ出された状態となった。


私は死を覚悟した。地面が段々近づいているのが 見える。だが、怖いので目をつぶる。


あぁ 普通な日常を送ってみたかったな。死ぬ運命とかに 生まれたくなかったなぁ。そしたら 死ななくても良かったのに…


「死にたくないなぁ」


涙と一緒にそんな言葉が漏れる。


そんな言葉を言った後 さっきまでの体の浮遊感が 止まった。


「その言葉が 聞きたかったよ」


目を開けると 横で彼女が宙に浮いているのが見えた。私は 少々驚く。いや 結構驚いたと思う。

だって 彼女だけでなく 私も浮いていたから………


「私は 天使という仕事になるための勉強をしています。天使は基本自殺の防止などの活動をしていますが、自殺志願者が 本気で死にたくないと思った時、幸福を(もたら)すのが本職です。」


彼女の姿は 白いワンピースに素足、頭には金色の輪っかが浮いており、背中には羽根がついていた。どう見ても天使である。そんなのありかよ。非現実的なことなので まじまじを彼女を見る。


と言うより 私は投げ出されたときと同じ体勢をしており、カッコ的に 彼女へ視線を送るのが辛いので、短い間だけなのだが。


「ついでに今は 時間を止めています。全て終わったら解除するので安心してください。」


そう 彼女が言うと 指で空に長方形を描き始める。描き終わると 突如1枚の紙が現れた。彼女は その紙に 目を通す。

すると、彼女の顔は 青ざめた。


何か 不味いことでも書いてあるのか、視線を頑張って紙の方へ送る。

1番最初に目に飛び込んだのは


[26点 赤点]


「あ、赤点?」


何となく呟いてしまった。

彼女は その紙を一生懸命胸に押さえつけて、その点数を隠そうとする。


「バカにしないで下さい、対人実技は 苦手なだけです。」


多分彼女の言う、実技と言うのは さっきから やっていたあのリンゴとかのやりとりだろう。天使の勉強中…つまり、自殺の防止テストみたいなやつの 点数であろう。


そう思っていると 彼女は口を開いた。


「そんな事より、今から私の魔法で貴方を幸せにしてあげます。」


彼女は 点数の紙を投げ捨て、同じ方法で 杖みたいな物を取り出す。


「赤点取っている人の魔法なんかに安心してかかれないよぉ。」


また 何となく呟いてしまった。


彼女を 見る、

あっ 凄い落ち込んでいる。


背中の羽根まで ショボンとしちゃっているよ。


何か悪いことしちゃったなぁ。

私は 彼女に 励ましの言葉を送り続けた。

何とか 気持ちを回復してもらってから彼女は


「安心してください、対話術は苦手ですけど その分魔法は得意ですから。」


そう言ってから 彼女は杖を振り上げる。

そうすると彼女は セーラー服姿になった。手に さっきの白いワンピースを持っている。


「着ていた服は 消えないの?」


少し疑問になってた事を投げかける。

すると


「服は 勝手に消えるんです。 魔力を消費して服を消すより、自然と消した方が楽なので。」


と彼女は言った。


なんだ、消せないのかと思った。 出した服が消せない場合 魔法の力を疑うところである。


「さて、貴方は どんな幸福が お望みかな?」


杖を振り回しつつ 彼女は 私に向かって問いかける。


私は 少し考えた。

そして


「幸せなら どんなのでもいいや。」


と答えた。


「お安いー」


彼女は杖を私に向ける。



------------------------------------------------------------



眠い目を擦りつつ学校へと向かう。

今日は対人実技のテストだ。

天使1人で 人間界に行き、自殺の防止を促すのだ。


学校で先生に挨拶し、人間界へと繋がる扉へと向かった。

オシャレな装飾のついている木の扉の前へ立つ。高鳴る胸に励まされながら扉を開けた。


人間界、私にとっては久しぶりだ。


さて、テストの対象である自殺しようとしている人は 杖が教えてくれる。

適当にふわふわ浮いていると杖が ある一方に 先端を向けた。


私はそこへ向かう。

そこには 首を吊ろうとしている人が見えた。私は 魔法でシルクハットに仮面を被ったタキシード姿に 衣装を変えた。魔法で元の衣装を消す。そして リンゴを2つ持ち出した。


首を吊ろうとしている人の後ろに立ち、両手に 2つリンゴを持ってこう言った。


「貴方が落としたのは この金のリンゴ?それとも銀のリンゴ?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ