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さくらブルーム  作者: レーン
magic 1 「親愛なる魔女」
4/11

阿久比との休日

■伝統あるディアーウィッチ魔術学校 正門前


 翌日、俺は待ち合わせの10分前に正門に到着した。

 --阿久比は当たり前のように先に来ていたが。

 

 「悪い、待たせたか?」


 「気にするな。私が勝手に早く来ただけの事。気に病む必要は無い。」


阿久比は学校の時と変わらず少しボロボロになっているマントを体に巻いていた。いや、これで変にフリフリのスカートとか履いて来られた方が反応に困るからいいんだけどね。


 「で、何買うんだ?」


阿久比がなにを買うのか非常に気になる。服や生活雑貨という事もあるまい。勝手なイメージで決め付けているが。


 「ああ、新しいマントをな。流石にこのマントは変え時だ」


マントか。確かにボロっちいから納得。


 「駅前に行くか?」


 「駅前の少し裏に入ったところに馴染みの店がある」


 「へえ、裏はあまり行ったことないや」


 学校から駅までは徒歩で20分程と言ったところだ。学校近辺もそこまで廃れている訳ではないけど、駅前のほうが店が沢山あって活気がある。


阿久比と二人で駅前の裏通りとやらに歩いてきたが、ここは何と言うか……道を一本外れただけなのにアンダーグラウンドな雰囲気がプンプン漂っている。

駅前には大きなビルや建物が多いから、その陰に隠れていて薄暗いからそう感じるだけなのかも知れないが。


 「あの店だ。」


裏通りの角。行き止まりの所にその店はあった。

看板には「マジック&マジック」と書かれていた。

看板のネオンはチカチカ点滅していて切れ掛かっている。看板自体も少し傾いているが……やっているのかこの店は?


 「あの店、閉まってない?やってる?」


 「ああ、いつもあんなだ。」


 「マジか・・・」



 ■マジック&マジック 店内


軽いカルチャーショックを引きずりつつ、阿久比の後から店に入る。

店内は割りと綺麗で普通の雑貨屋って雰囲気だった。

少し周りを見て回っているとカウンターの奥から店主らしき人物が歩いてきた。

大柄なスキンヘッド、エプロンを巻いている姿が不気味な男性だった。そして店内なのにサングラス。

危なそうな人だなと本能が告げていた。

すると店主は俺の顔を見て口を開いた。


 「あらん、可愛いお客さんじゃなーい♪ちょっとあたしのタイプかもぉん」


腰や手をクネクネうねらせながら接近する様はカルチャーショックを通り越して最早ホラーだった。

やっぱり危ない人だった。

恐怖に青ざめているとすぐ隣に阿久比が来ていた。


「おお、キャサリンいたのか。私のマントあるか?」


思わず叫んでしまった。


 「名前キャサリンっていうのー!?」


 「あら、美咲ちゃんと一緒って事は美咲ちゃんの彼氏?」


 「違う。マント」


阿久比の顔が少し赤くなった。前髪で隠れた片目で表情が読み取りづらいが意外と純情乙女なのかもしれない。


 「え?美咲ちゃんのマントなの?」


 「違う。マント。見せろ」


 「もーう、分かったわよう。はいはい、美咲ちゃん用のマントなら入荷してるわよ」


変なコントを傍から見ていて少し放心していた。

何はともあれ阿久比は新しいマントを買えたようで良かった。

しかしキャサリンにいきなり話し掛けられビクッと体が反応してしまう。


 「美咲ちゃんの彼氏じゃないならあなた私の彼氏になる~?」


 「お断りします」


 「あらんつれない」


この人とはあまり関わりたくない……

とりあえずキャサリンに絡まれない様に阿久比に話しかける。


 「色々売ってんだな。何の店なんだここは」


阿久比に尋ねるとすぐに答えが返ってきた。


 「簡単に言うとマジックアイテム専門店だな。魔法の入ったマジックカプセル、魔法の効果が付随されたアクセサリーや服とかも売ってる」


 「ふーん、じゃあ阿久比のそのマントも?」


 「ああ、一応魔法が掛かってる。貴様等の様に魔法が使える奴にとってはあまり需要の無い店だろう?私はこの刀が魔力を帯びているとはいえ、私自身が魔法を使えるわけではないのでね。落ちこぼれ専門店だ」


 「いやいや、そこまで卑下しなくても・・・」


正直阿久比が落ちこぼれだなんて全く思ってないし、事実俺よりずっと強いはずだ。

戦闘力の強さが魔法使いとしての優劣かどうかは別として。


 「すまない、言葉が過ぎたな。皮肉の混じったとても嫌な言い方をしてしまった。詫びさせてく

れ。」


 「いやいいって。阿久比が落ちこぼれじゃ無いことぐらい分かってるし。オチコボレってのは俺み

たいな奴の事を言うんだぜ?」


--あと勇気。


「すまない」


「だからいいって。じゃあさ、今度は俺に付き合ってよ」


阿久比を連れて今度は俺に付き合ってもらうことにした。ま、俺の行く行きつけの店なんてあそこしかないけど。



 ■喫茶 魔女狩り


魔女狩りに着いて一言阿久比が言い放った。


 「魔女狩り……?」


 「ああ、喫茶店だよ。別に魔法使いが嫌いとかそういう意味じゃないから安心しなよ」


そういえば阿久比はこの店始めてかもしれんな。

今度は俺が先導して店に入る。


 「いらっしゃ~・・・ここには私しかいないぞ!」


 「はぁ?知ってるよ」


この店主は20代にして本当にボケてしまったのだろうか。

いきなり訳の分からないことを言い出した。

何か慌ててたようだが何かを隠している・・・?

よく周りを観察してみると冬花さんのカウンターの前に飲みかけのコーヒーカップが一つ。

しかし店内には誰かいる形跡は無い。

……謎だ。


 「まあいいや、冬花さん新しい客連れてきたよ」


 「あらありがとう。あんた達くらいしか常連客がいないから新規のお客様は大歓迎だよぉ」


阿久比が冬花さんにペコリと一礼する。


 「始めまして。阿久比美咲だ」


 「おーおー、話に聞いたとおり気が強そうな娘さんだねぇ」


にっしっしと冬花さんは笑っている。

ん?

話に聞いた通り?


 「話に聞いたって、阿久比の事誰かから聞いてたの?」


 「あ!いや!その!……ロックの兄ちゃんから!明石君だっけ!?ほら彼凄い女の子の事詳しそうじゃんだから彼にクラスの女子の話とか聞いてたんだよねぇあはあはあは!」


後半すげー早口。

捲くし立てられたから言いたくない事でもあるんだろう。

まあいいや。


「そんで、美咲ちゃんは何にする?コーヒー?うちのコーヒーは美味しいよ~?多分」


--多分かよ。

まあでも普通に美味しいと思う。


「苦いのは苦手。」


間髪入れずに突っ込みを入れる。

俺は高速の突っ込み名人。

誰にも俺の世界(速さ)にはついてこられないぜ。


「なにそれダジャレ?」


阿久比が刀に手を伸ばしたので慌てて別の話題を振った。

俺は高速の突っ込み名人を引退する決意を固め、後日開かれるであろう引退会見の内容について頭の中で考えざるを得なくなっ、もういいや。


 「そ、その刀ってさ名前とかあるの?正宗ーとか吉宗ーとか。」


8代将軍が混ざっていたがまあいいだろう。


 「この子は桜花。我が家に代々伝わる妖刀だ。初代の持ち主であった先祖以外まだ真に使いこなせたものはいないらしい。私もまだまだ未熟でこの子の力を10%程しか引き出せない。」


 「使いこなす、かぁ。阿久比ならきっと出来るよ」


 「ああ、使いこなして見せるさ」


爽やかな笑顔だった。

そんな阿久比の笑顔を見て冬花さんも心なしか嬉しそうだった。

若者の頑張っている姿を見るとおばさんは応援したくなるものなのかも。


 「だぁれがおばさんだコラァ!!」


--心の中を読まれて鋭い拳骨をもらった。



■川沿い 帰路

 一時間程時間を潰して寮に帰ることにした。

時刻は夕方。

土日祝日は食堂が一時間ずれて5時から7時になる。

少し早く帰らないとピークになって席が埋まる。

一応部屋にテイクアウトも出来るがメニューが限られてしまうので嫌いだ。

なので急いで帰ろうと歩いていたのだが、途中で事件は起きた。


前から3人組の制服を着た女生徒が歩いてきた。

うちの学校に制服は無い。

スターダストナイツ魔術学園の生徒だろう。

向こうも俺たちに気付いたらしい。

正直言ってディアーウィッチの生徒はスターダストナイツに目の敵にされている。

何故目の敵にされているかというと少し理由があるのだがこれはまたいずれ話す事にする。

何はともあれ良くは思われていない、なので素通りしたかったんだけどなぁ……


 「あら、ディアーウィッチの生徒さん、さっきから何をチラチラ見ていらっしゃるの?ヤージュ、デー

タ照合を」


3人組のリーダーだろうか。

いきなり難癖を付けられた。

ヤージュと呼ばれた取り巻きの1人が腕に付けた端末を操作して勝手に俺達のデータを参照している。


 「神崎大介17歳、ランキングは114514位。然程の脅威ではありませんわね。阿久比美咲17歳、

ランキングは1919位、ミュラー様、こちらの方は少々手強いかと」


勝手に戦力分析されて良い気分がするわけもなく、ってか俺ランキング低いな。

癪なのでとりあえず凄んでおく。


 「別にそっちの事なんて見てねーよ、つか何勝手に人の個人情報を見てんだよ」

 

 「嘘おっしゃい、絶対見てましたわ」


--相手は俺に全く関心が無さそうだ。


 ランキングとはスターダストナイツが勝手に付けている総合力の強さのランキングだ。

自分達の学校内だけでランキング付けてりゃいい物を、ディアーウィッチとスターダストナイツ、そしてあと二つある魔術学校を入れた4大魔術学校の生徒を合算したランキングを作っている。

それとどうやって集めているのかは知らないけど、ほぼ全魔法使いのデータもあるので生徒と一般人、すべてを合算したランキングがもう1つ存在する。


 ちなみに凪ねーちゃんは生徒ランキングダントツの1位、全魔術師合算で5位だそうな。

上に4大魔術学校の学園長である4人しかいない大魔導師がいる訳だから全魔術師の中で5番目に強いのだあの人は。


リーダー格のミュラーと呼ばれた女生徒が取り巻きに指示を出した。


 「見たけりゃ見せてあげますわ。ヤージュ、お相手して差し上げなさい」


 「おかのしたミュラー様。さてお相手はどちらから?あくしろよ」


取り巻きの1人ヤージュとやらが戦闘態勢に入る。

しかし俺に戦闘なんて出来ないぞ。

すると阿久比が一歩前に出て俺に言い放つ。


 「大介、貴様は下がっていろ。」


 「いや、しかしだね・・・」


 「相手の力量は知れたもの。大した魔力も感じぬ。1人で十分」


阿久比はそう言うと刀に手を伸ばした。そして桜花を鞘からゆっくりと引き抜く。

初めて桜花のその刀身を見たがとても綺麗だった。

ほんのりと桜色の刀身からは微かだが魔力が既に溢れて揺らめいている。


 「嘗められたものですわねスターダストナイツも。アクセスコード001、転送!」



ヤージュの体の周囲の空間が歪み、ヤージュの体に魔導ウェポンが装着されていく。

兵器という名前ではあるが全身装着型の見た目はアーマーに近い。

大型の魔導式ブースターと大型のソードが装備されたヤージュの姿は科学の力を取り入れた剣士のようにも見えた。


 「YJSP型装備完了。時代遅れの魔法使いさん、思い知らせてあげるわ。」


 「残念だったな、私は自分の事を魔法使いだなんて思ったことは一度も無い。私は一、剣術家

だ」

 

刀を構えた阿久比にブースターを全開にして突っ込む。

魔導ウェポンとは万能な物で術者の魔力を増大させ、その魔力を推進剤にしたブースター、魔力を圧縮してビームの様に撃ち出す物まで多種多様だ。

見た感じヤージュの装備した魔導ウェポンは高機動接近戦型だ。


突っ込んできた勢いのままに繰り出されるソードの突きをかわし、わき腹に一撃。

ヤージュは一気に悶絶する。


 「峰打ちだ。軽傷で済む。」


しかしすぐに体勢を立て直すヤージュ。

恐らく装備した魔導ウェポンによって防御力も上がっているとみられる。


 「くっ……油断していただけですわ。情けを掛けて私を倒せるとでも?」


 「力量に見合った攻撃をしたまでだ。貴様程度にはこのぐらいで十分」


 「頭に来ますわよ。貴女を芸術品に仕立てや……仕立て上げて差し上げますわ。貴女を芸術品にしt……したんですわ!」


ヤージュは再度大型のブースターで突っ込んでくる。しかし今度は横一文字に阿久比目掛けてソードを振るう。

阿久比は難なくそれを受け止める。

鍔迫り合いを力任せに振りほどき、今度は阿久比が仕掛ける。

体を一回転させ回転エネルギーを乗せた一撃。

しかし相手はそれをソードで防いだ。


 「まだ手を抜きますの、阿久比美咲!その刀の力を見せてごらんなさい!」


 「見せるまでも無いと思うが」


 「いいわよ、こいわよ!」


ヤージュは後方に飛んだ。

一旦距離を置いてソードの先端を阿久比に向ける。

するとソードの先端が割れて銃口が現れた。

--距離を置かれたら阿久比が不利だ。


 「射撃モードも付いているのかあのソードには!」


呟きながら自分に何も出来ないのが歯がゆい。

でも多分今俺が加勢したら阿久比は怒る。それは何となく分かる。

だって阿久比の奴、戦って、楽しそうに笑ってんだもん。


相手の銃口から2発3発と圧縮された魔力のビームが阿久比目掛けて発射された。

阿久比は眼前に弾が来るまでピクリとも動かず、見据える。

そして一気にそれらを叩き落とす。


 「はっ!!」


阿久比は全ての弾を桜花で弾き落とした。

速過ぎてよく見えん。

撃ち出した弾を弾かれたヤージュは目を見開く。


 「ファッ!?」


業を煮やして相手がまた突っ込んでくる。

阿久比はやれやれといった感じで再度桜花を握りなおす。


 「学習せんな貴様は」


今度は今までと比べ物にならない程の全力全開の突進、阿久比も身を固めて待ち構える。


しかし、お互いの剣がぶつかり合ったと思った瞬間予想外の乱入者が現れ、両者の刃を簡単に片手で受け止めて戦いを制止した!

俺はたまらず叫んでいた。

何故こんな所にあんたが……


 「観音寺!?」


観音寺はあの激しいぶつかり合いの中を何事も無かったかのように割って入っていた。

しかも素手で。


 「先生を付けろ小僧。いやー、困ったもんだねえスターダストナイツの学生さんも。阿久比も刀し

まえぇ。」


阿久比は言われたとおりに無言で桜花を鞘に収める。

突然の乱入者に驚いてはいたが素直に従った。

しかし、ヤージュはそうはいかない。


 「くっ!あなた何者ですの!」


 「先生ですよ、ディアーウィッチの」


 「そんなことは知っていますわ!ランキングは1145141919810893番台、格下のあなたが何故簡単に割って入れるの!」


え、観音寺ってそんなにランキング低いんだ!?

観音寺はそれがなにか?とでも言いたげな表情をしている。


 「そりゃあ君達みたいにデータでしか物事を見れないような奴らにゃ、俺の力は分かんないでしょうねぇ。だぁって隠してんだもん。」


実力をあえて隠していたのか。

しかしそれに何の意味があるんだろう?


 「くっ!いいから私のソードを離してくださいまし!この馬鹿力!!悔い改めて、どうぞ!」


 「いやいやいや、そんなに力入れてないから。それに魔導ウェポンは学校の敷地外で呼んじゃあいけないんじゃなかったっけー?ん?」


 「このぉ!!」


相手の女生徒がソードを観音寺から振り払おうとしたその瞬間、バキン!という音を立てて観音寺の掴んだ部分からソードが折れた。

ヤージュは愕然。

たまらず叫ぶ。


 「ヤリスギィ!」


 「あらら、そんなに強く掴んでないのに壊れちゃったよ。それぇ・・・、不良品なんじゃないの?」


戦闘を遠巻きで見ていたミュラーも驚いているようだ。

それ程までに魔道ウェポンとは強固な物らしい。


 「そんな簡単に魔導ウェポンが壊れるなどあり得えませんわ……当たり前だよなぁ?」


観音寺はくひひと笑っている。


 「あり得てるじゃない、実際。あ、これ返すわ。」


折れたソードの先端を手渡す。

観音寺の笑みは何だか悪魔じみていた。


 「これに懲りたらオイタはしばらくやめるんだな。じゃあね、気をつけて帰えんなよ、もう暗くなってきたし」


観音寺はそれだけ言うと踵を返して歩き出す。

しばらく歩いてピタッと歩みを止めて観音寺が振り向いた。


 「あ、そうそう。大介ぇ、明日日曜だけど朝一職員室な」


お、俺だけ!?

ま、まあ俺はいいとしてスターダストナイツの3人組も俺達に興味がなくなったのか去ろうとしていた。


  「ヤージュ、帰りますわよ。キム、あなたさっきから一言もしゃべってませんけどどうかしまて?」


  「何で喋る必要なんかありますの?」


ミュラーとヤージュとキム、スターダストナイツの3馬鹿エセお嬢と勝手に俺の中で名付けることにした。


 「はああああああん疲れましたわあああああああああもおおおおおおん……あ、そう言えばミュラー様、この辺にぃ、うまいイタリアンの屋台、来てるらしいですわよ、行きませんこと?」


  「ワインワイン!」


 「大丈夫ですわよ、バッチェ冷えてますわよ。じゃけんこれから行きましょうねぇ~」



■伝統あるディアーウィッチ魔術学校 正門前


 ただ買い物に行くだけで色々な事があったが何とか学校まで帰ることが出来た。

 別れ際に阿久比に呼び止められて振り返る。


 「済まない、買い物に付き合わせた挙句戦闘になるなど……」


 「あれは別に阿久比のせいじゃないだろ。気にすんな」


 「そうだが……」


 「今日の阿久比は謝ってばっかだな。それに、あの時は俺が助けられたんだ、俺一人じゃまずあいつらには勝てなかったし。」


 「ああ、分かった。もう謝らん。ありがとう、付き合ってくれて」


手を振って去っていく阿久比の後姿を少しの間眺めていた。

すると背後に気配。


 「ふむふむ、青春ですなぁ。大介君。」


 「ああ・・・って凪ねーちゃん!?いたの!?」


 「いたぞ、朝からずぅっと先回り先回りしてな。」


み、見張られていたのか……

魔女狩りで冬花さんが慌ててたのは俺達が行く前に凪ねーちゃんと話してたからだったのね……


 「いや~大介、スターダストナイツに絡まれたとき、あれはいかん。勝てないと分かっていても、それでも女を護る。それが男の仕事じゃないかねぇ?」


--返す言葉も無かった。


「まあ今は仕方ないか、大介、お前は弱い!だがな、一つだけ凄い取り柄があるんだ。お前は気付いていないだろうけどな」


「取り柄?」


 「ああ、お前は私の攻撃を幾度も幾度も受け続けて半端な魔法じゃびびらなくなってる。そして打たれ強くもなっているんだ。だからあんまり勝てる勝てないで考えるより、戦ってみな。少なくとも長期戦になれば多分お前は勝つぞ」


打たれ強くたってなぁ……

反論したかったが凪ねーちゃんはさらに続ける。


 「ということはだ、お前はもう攻撃極振りの練習でいいんだ。防御力は優れている。後お前に足りないのは攻撃力だ」


 「確かに、ね。はぁ……戦う為に魔法使いの道を選んだんじゃないんだけどなぁ」


 「ん?そうなのか?」


誰もがみんな強くなる為に魔法使いになるわけじゃないよ。

--凪ねーちゃんに追いつく為に。

まあ言えるような事じゃあないから胸の中にしまっておいてその日はそのまま帰った。

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