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レンアイごっこ

チョコレート

作者: 高谷咲希
掲載日:2016/02/14

甘い匂いがキッチンを包む。その正体は、大量のチョコレート。今日はバレンタイン、あなたのために甘い愛をプレゼント。得意なフォンダンショコラを焼き上げる。意外に簡単です。箱に入れたら、ハートの形に固めたクランチチョコを近くに添えて、ラッピングは完了。一息ついて時計を見上げた。大変、急がなくっちゃ。

白いニットのミニ丈ワンピース、長い髪は三つ編みにして、赤いベレー帽でアクセント。気合いをいれてメイクして、いつもよりかわいい私。キャメルのコートを羽織れば完璧。さあ早く行かなくちゃ!

太陽(たいよう)、お待たせっ」

「お疲れー」

待ち合わせの公園につくと、あなたは居た。手のひらを上げて、私を見つめたあなた。事前に取り付けておいたデート。喜んでくれるかな。

「ん?なんか甘い匂いする……」

肩のあたりにあなたの顔が近づく。ちょっと待って! 鼓動が伝わっちゃいそう!

「チョコっぽい」

そうやってあなたは、くしゃっと笑った。その顔、反則です。

「秋月さん」

「なに?」

「ちょーだい?」

両手をすっと差し出して、首を僅かに傾げる。あなたって人は本当に、わざととしか考えられない。

「……はい」

「あざーすっ!!」

紙袋の中を見るあなた、すごく嬉しそう。私は思わず微笑んだ。その時、目が合う。あなたがまた笑った。

「食べていい? 食べていい?」

「どーぞ」

「やった!」

きょろきょろと辺りを見渡して、空いているベンチに座るあなた。ポンポンと隣のスペースを叩いて、こっちに来いと促された。私が隣に座ると、ガサゴソと紙袋から、私が頑張ってラッピングした箱を取り出す。それを見て、丁寧に丁寧にリボンを解いていった。

「これは、カップケーキ?」

「それはフォンダンショコラ。まだあったかいとは思うけど……」

私が言い終わらないうちに、マフィンカップを破いてかぶりつく。口をもごもごさせながら、あなたは断面を指さした。中のチョコがとろり、はみ出しそうだ。

「おいしい?」

気になって聞いてみると、あなたは縦に首を振る。口に合ってよかった、ほっとする。

「すごい! お店で売ってるやつみたい!! めっちゃおいしい!」

それだけ言って、ノンストップで平らげた。

「ごちそうさまでした」

「お粗末さまです」

包装を綺麗に紙袋に戻したあなた。どこか満足げな表情に、私はそれをじっと見つめていた。

「ほんと美味しかったー、秋月さんお菓子じょ……」

気がつけば、体が動いていた。あなたの唇の端、甘い甘いチョコレート。ほんのちょっとなのに、口の中いっぱいに甘さが広がった。

「ついてたよ、チョコレート」

イタズラに笑ってみせた。あなたはしばらく、目をぱちくりとさせてたけど、だんだんと顔が赤くなっていた。そんな所、すごくかわいい。

「あのさぁ……」

手で顔を覆うあなた。なんかまずかったかな? 自分の行動に少し反省。

「あ、嫌だった? ご、ごめ……」

あなたはオロオロする私の腕を掴むと、ぐいっと顔を近づけてきた。息が止まる。今にも破裂しそうな胸は、早さを増していく。

「どーなっても知らないからな? 花穂(・・)

そのまま唇に落とされたキスは、チョコレートよりも、深くて甘かった。

「今日はこれから俺ん家、決定な」

そう言ってあなたは、ニヤリ、笑った。

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