どうしても生きなきゃ駄目ですか? 親展
サッカー部をやめた。正確には行かなくなっただけ。
それでも同い年のチームメイトは気さくに話しかけてくれた。それが少し嬉しかった。
そして部活をやめたという事は必然的に帰る時間も早くなる。
授業が終わり、大体四時前くらいには地元の駅に着いていた。
その日も普段通りに地元の駅に着き、自転車置き場まで歩いているときだった。
どこかで見た事のある姿。
「あれ?S?Sじゃね?」
そこにいたのは中学の時に同じクラスだったSだ。Sはサッカー部でも一緒で、中学の時は比較的に一緒に遊んでいたが、高校に入ってからは疎遠になっていた。
「あれ?おまえ部活は?」
痛い一言。しかし嘘を言う必要はない。
「停学喰らってやめた。」
「まじで?これからどうすんの?」
「家帰るだけ」
当たり前だが淡白な反応だった。
「暇ならお前の家行っていい?」
断る理由もない。何より家に帰っても何もすることもないよりはまだマシか。と思い快く承諾した。暇つぶし程度とはもちろんSも一緒なのかもしれないが。
Sも部活に入っておらず、僕と同じように帰宅部だった。
その日からSとは幾度となく帰り道で会い、お互いの家に行き来するようになった。
趣味も性格も、ここまでピッタリな友人は数少ない。
この他にも新たな出会い、発見が沢山あった。部活をしていれば話すこともなかったであろう同じ学校の帰宅部の奴とも友人となった。
冒頭にも書いたが僕がいた小学校は市内有数の大きな学校で、そこでサッカーをしていて運よく選抜等に選ばれていたこともあり、他の中学に進んだ奴とも交友を持ってる。それは高校に進んでも変わらず、クラスは違えど小学校から知ってる奴が部活の休みの日には帰り道に僕の家に遊びに来ていた。
僕の実家は中心部からそう離れてはおらず、駅から自宅が遠い友人達には絶好のたまり場だ。
実家は美容室を営んでいるが、高校生、しかも若い男の子ばかりが常にいるおかげ近所のおば様達に人気があったらしい。
たまり場となった僕の家のおかげというか、よく僕の家に来ていた奴らは僕を挟んだ共通の友人となり、今でも深い関係を築いている。
普通ならばあんな人数が一同に集まると中には不仲になる奴もいるかもしれないが、不思議と喧嘩もなく、むしろ皆が皆、お互いを認め合ってるような交友関係になっていた。
Sと駅前で会った日から、こんなにも交友の輪が広がるとは思ってもみなかった。
学校生活は相も変わらず苦痛だった。それでも下校すれば気の合う仲間が待ってる。そう思えばなんてことなかった。