5話「マスコット」
しばらくすると三匹のブタさんが宝箱を持ってきた。
一匹はここにいた。
「エレベータ伯爵の宝物だ。大事に使えよ」
僕に渡すとブタさんたちは泣き出した。
このままだと空気が悪いので僕は笑った。
ブタさんは泣くのを止めた。
「もう、ここに来るなよ」
「うん。だってここ関所じゃないもんね……開けて良い?」
「ああ……」
宝箱を開けると、ブタの着ぐるみがあった。
「それは、エレベータ伯爵がまだ幼い時のこと……」
語りだす一匹のブタさん。
「エレベータ伯爵と私は二人で遊園地に行った。デパートの屋上にあるような小さいものだったが、エレベータ伯爵はステージでやっていた三匹の子ぶたを大変気に入られて、帰りたくないと駄々をこね始めた。私は感動し一生この人に付いて行こうと思った。それがその着ぐるみのレプリカだ。エレベータ伯爵はここにあの日行った遊園地を再現しようとしたのだろう」
「……うん。感動した」
僕は言う。
「あれ、西遊記じゃなかったか?」
「どっちでもいいんだ」
「……僕も協力するよ!」
僕は、着ぐるみを着た。
ぶちっ。
やばい破れた。
胴体は破れ、頭だけ被る形になった。
「エレベータ伯爵ご無事で」
「僕じゃないよ?」
「いえ、あなたはエレベータ伯爵です」
まあいいや。ここから逃げよう。もう来るなって言われた訳だし。
僕はエレベーターに乗った。
――ん?
「なんでついで付いてくるの?」
「エレベータ伯爵にお仕えすると決めてますので」
建物から出ても四匹のブタは僕に付いてきた。
ちょっと気まずい。
「何してるの?」
黒豚さんが道に現れた。
「全員!突撃準備ー」
四匹のブタは懐からナイフを取り出しす。
「ちょいちょい!僕の友だちだよ」
四匹のブタはナイフをしまう。
「何……してるの?」
「関所に行くんでしょ?」
「まあそうだけど……」
黒豚さんは聞くのをやめた。
あ、そういえば。
「忘れ物したから取りに行ってもいいかな?」
「どうぞ」
「ちょっと長くなりそうだけど」
「なら私も付いていくわ」
「私達もお供します」