4話「エレベータ」
金持ちが家の間に入っていくのを見た後、黒豚さんは帰ってきた。
「行くわよ。」
「あっ黒豚さん、どこに行ってたんですか。」
「……知る必要は無いわ。」
また「話しかけないで。」と言われそうな気がしたので僕は黙って歩いた。
石垣を超えて行くと途中から家はだんだんと少なくなり森のなかへと進んで行く。
「ここを真っすぐ行けば関所につくから、そこにいるブタに封筒を渡して。」
僕はちょっと分厚い封筒の中を見た。
「えッ、お金じゃない!!」
顔を上げた時には黒豚さんはいなかった。
そういえばさっき許可証を取ってくるとか行ってたけど……
仕方なく歩く。
できれば黒豚さんともっと話したかった。
金持ちと戦ったことを自慢したかった。
あの時の体が熱くなる感じあれはスキルっていうのかな。
しばらくすると木でできたビルみたいなのが見えてきた。
めっちゃでかい。近づいてみると結構大きい。こんなに大きいのに遠くから見たら全然見えないのは不思議だ。
「これが関所かな。思ってたのと違うけど」
森のなかに立つビルの前で一人つぶやいた。
もっとでかい門とかありそうな感じだったんだけど。監視とかもいないし。
とりあえず自動ドアを抜けてビルの中に入った。
木が崩れるような音が聞こえたけど気にしない。
中を見て回る。
木でできた壁に豚の顔が一杯飾ってあった。
勉強机があった。それと隅にエレベーターもあったので乗ることにした。
ボタンを押すとエレベーターが開いた。
中に豚がいた。
四匹。いや五匹だった。
一匹ちっちゃくて見えなかったのは言わない。
「君、誰だね?」
下から話しかけられた。
「赤西 ゆうとです。」
「本名かね?」
「はい。」
「ほうほう。まあまあこっちに来なさい。」
ちっちゃな豚さんと一緒にエレベーターに乗った。
「この中、狭いです。」
「我慢しろ」
四匹の豚に言われた。
――チーン。
エレベーターが止まった。
エレベーターから外に出ると、そこは木の丸太で出来たビルの屋上だった。
ジャンプしながら凸凹な丸太の上を歩くちっちゃな豚さん。
そのちっちゃな豚さんは中央にあった絨毯のちゃぶ台に乗ると、僕を手招きし丸太の床に座らせた。
「君に頼みたいことがあるのだが。」
「何ですか?ちっちゃな豚さん。」
僕は思わずちっちゃな豚さんと言ってしまった。
ちっちゃな豚さんはちゃぶ台の上で転がった。
「エレベータ伯爵!!」
四匹のでかい豚はちっちゃな豚さんに素早く近づいた。
「ストレスが原因のVR病だ。すぐに儀式をしないとエレベータ伯爵が消えてしまう。」
「早く儀式の準備を!!」
「……私の事はいいから、彼にアレを」
そう言うとちっちゃい豚さんは意識を失ってしまった。