一の章(目覚め)
目が覚めたようだ。暗いが視界がはっきりしてきた。
天井は材木。どうやら和風建築のようだ。周囲を見渡す。
エアコンも照明器具も無い。時代劇で見るような寝具らしきもの。和服の寝巻き。全く知らない部屋。
日本の古い時代か?
ん?部屋の外に人の気配が。
?(若い少年の声):「殿 お目覚めにございますか」
殿とは俺の事だろう。この部屋には俺以外の人間はいないのだから。
俺は知らない人間になっちまったのか?
そうとしか考えられない。じゃあ、今の俺は誰なんだ。
考える・・・・解からん。
小説とかだと他人に憑依したら元人格の記憶が残っていたりするけど、そうではないようだ。俺は誰か解からないまま、この人物を演じねばならない。
おそらくここは古い日本で殿と呼ばれる身分である事から、それなりの身分の武士だろう。しかし手がかりが無さ過ぎる。
改めて周囲を見渡すが、自身の身分を特定できそうな物は無い。
寝具のほかには刀が置いてあるくらいだが、見ても解からない。
これ以上考えていても仕方がなさそうだ。
ここはなるようになるしかない。
俺:「今、起きたところだ。何事かあったか。」
腹を決めて声を出した。
あっ オッサン声だ。しかも低くて渋い。