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第04話 「全裸少年」

 謁見の間で王様と大臣に説教される事一時間。

 さすがに僕は限界だった。

 何せ、絨毯とか畳の上ならばまだしも、磨かれた床石の上でずっと正座だ。

 そりゃ、足も痺れますよ。というか、もうすでに感覚無いけどね。

 というか、せめて服くらい着させて下さい。

 何が悲しくて、男しか居ないこんな広い謁見の間で、全裸待機しなきゃならんのですか。


「だから勇者さぁ。さっきも言ったけど、装備も何も無いまま街の外に出たらダメじゃん?ダメじゃん?」

「王よ…。いい加減、もっと威厳を持って話して下さい……。それはともかくとして、勇者トモヒサよ。何故、先のような愚行を行ったのだ? これまで幾人かの勇者召喚は行われてきたが、お前の様な者は初めてだぞ」


 大臣の言葉に、謁見の間に居た全員が溜息を吐き、肩を竦め呆れていた。

 僕は足の痺れと全裸の恥ずかしさから震えていた。


 ヤバイ……。ここ凄い居心地悪いです……。

 正直、自分でも分かりません。異世界トリップして舞い上がっていたとしか言えない。チート能力を最初から持っていたと思いこんでたとしか言えない。そして、そんなの皆の前で説明なんて出来ない恥ずかしい。


「はぁ……。もう良い勇者トモヒサよ。そなたのスキル[召喚者特性]のお陰でこうして蘇る事が出来たのだ。しかし、いくら女神の加護によるスキルがあるとは言え、発見が遅れればそのまま死亡してもおかしくなかったのだぞ?」


 マジデスカ?

 え?え? てっきりこうして生きてたから、死ななかったものだとばかり思ってました。

 しかし現実はどうだ。

 僕はあのドラゴンのブレスで、しっかりこんがりウェルダンに焼かれていた。そして火葬された状態のまま、僕はあの召喚された地下室に転移してきたらしい。

 もう用の無くなった地下室を掃除しようとしていた見習い兵士のカイン君(14歳)が、突如として光り輝いた召喚部屋に気付かなければ、少なくとも丸一日放置もありえたとか。

 [召喚者特性]というスキルの事を聞いてみれば、この世界に召喚された人間が持つ、モンスターとの戦いに敗れ死に絶えた瞬間に召喚された場所に転移し、しかるべき処置と儀式を行えばそれまでに得た力の一部を犠牲にして復活する事が出来るというものらしい。

 まるでドラ○エだな!

 ある意味チートだが、思っていたのと違う……。

 チートとは言っても条件付きで死なないだけで、結局は死の苦しみを味わうわけじゃないですか。やだー。


「王よ……。どうも、此度の勇者は聊か力が不足している感が否めません」

「そうだねぇ」


 くそ! こんな失態犯した直後だと何も言い返せない!


「かといって、元の世界に送還する事は不可能……。時期尚早と思いますが、アレを授けてしまうのはどうでしょう?」

「うん。それがいいかもね。最近、この辺も物騒だしね。ついでにわしに就いてる近衛も何人か護衛にどうかな?」

「ふむ……。王の近衛ならば実力は申し分ないですが、それだと王の身辺の守りが……」

「大丈夫大丈夫。わし、こうみえても強いし、全員護衛に就けるわけじゃないしね。なんとかなるんじゃない?」

「王がお強いのは充分承知しておりますが……」

「はい決定ー。王の権限で決定ー。もう反論は認めませんー」

「はぁ……仕方がありませんな」


 王と大臣の相談は終わったようだ。

 大臣さん、もう王の口調を改めさせるのは諦めたんですか?

 端から聞いてて、どちらが王様なのかわからなくなってましたよ?

 ていうか、アレってなんですか?

 近衛を僕の護衛に就けるのはいいですけど、我儘言うなら女の人がいいなぁ。

 女の近衛騎士とかなんかカッコイイじゃん?

 そんで、旅の最中に手取り足取り剣術とか習っちゃってさ。段々、僕も強くなっていくんだけど、そんな俺を見て「まだまだだな!」とか言われちゃったりさ。

 ある日、クエストで訪れた深い森の中で野営してる時に、女近衛騎士が不安気に胸の内を吐露しちゃったりさ。僕はそれを聞いて何とも言えない気持になるんだけど、無理やり明るく振舞って女近衛騎士を励ましてみたりさ。だけど、僕が無理してるって分かって、女近衛騎士も無理に微笑んで「すまなかった。気にするな」とか言ってちょっと席を外したりさ。

 そんで、美人近衛騎士(妄想の中で美人が確定)が水浴びしてる所をうっかり覗いちゃったりさ。

 そんで、美人近衛騎士さんが顔を赤らめながら、サッと自分の肢体を隠すんだけど、その美しすぎる肢体は腕だけじゃ隠し切れてなくてさ。

 そんで、水浴びを終えた美人近衛さんが顔を真っ赤にしながら、僕に折檻するの。

 これだけで御飯三杯はいけるね!


「ふへへ」

「勇者殿?」


 おっといけねぇ。

 つい、妄想のあまり顔がにやけてしまったぜ。

 不審な顔を向ける林さんに何でも無いと笑って見せ、僕はまだ相談を続けている王と大臣の方を見る。


 しばらくして、丸聞こえだった相談は終わり、今後の俺の処遇が決定した。

 まずは非力な僕の為に、いずれ授ける予定だったこの国に伝わる、勇者のみが使えるという伝説の剣を前倒しで僕に貸し与える。

 そして、近衛騎士を一名護衛に就ける。何故一名だけなのかと聞いてみたら、旅をする上で大人数では返って小回りが利かないし、護衛に就ける騎士からの要望だったからだ。護衛の騎士は元上級ランクの冒険者であり、尚且つ僕と同じように異世界から召喚された人間だから、何かと力になってやれるだろうとの事。

 それから、幾許かの支援金を渡すので、今後は極力国からの支援を受けずに強くなってもらう。その為にまずはギルドに登録し、地力を付ける為に修行や初級のクエストをこなしていく。

 城への登城は自由にしてくれて構わないが、もし新たな仲間を得ていた場合は事前に知らせる事。

 等を申し渡される。


 護衛っていうか旅の仲間が一人なのはちょっと引っかかるが、いきなり伝説の剣を貰えるとかなにそれすごい。

 今度こそチート級の力を手に入れたっぽいな!

 あと、やっぱり冒険者ギルド的なものもあるんだな。お約束ですものね。


 その後、滞りなく支援金やら武器やらを受け取り、いざ護衛の近衛騎士を紹介だってところで、遠くからけたたましい喧騒の音が聞こえてきた。

 謁見の間に揃っていた全員が何事かと首を傾げていたが、慌てて謁見の間に入ってきた若い兵士の一人が、扉の側に立っている兵士の人に怒鳴られながらも要件を伝えていた。その要件を聞き、扉の側にいた兵士は驚いた顔を見せ、小走りで大臣の元へと向かった。

 報告は、僕には聞かれたくないのか、さっきまでの王様とのやり取りとは違い、僕に聞こえることのない小声で行われたいた。

 報告を聞き、大臣とちゃっかり盗み聞きしていた王様が驚愕していた。


「なんじゃと!? 召喚の間に不審者がいるじゃと!?」


 大臣さん。驚くのはいいけど、声大きいです。

 召喚の間ってあれですよね? 僕が最初にこの世界に来た時にいた部屋っすよね?

 あそこって一般解放区にあるんだから、不法侵入し放題じゃないですか。

 そんな僕の思いは別として、場内が慌ただしくなり始めていた。

 何者が侵入したのかわからないけど、いい加減に服とかくれませんか?

 今の僕って、伝説の剣を装備した全裸少年なんですけど……。

勇者のステータスが更新されました

★★★★★★★★★★

『トモヒサ・ミウラ』 Lv:1  クラス:勇者

称号:[伝説の剣を授かりし全裸少年] ←New!

HP:32  MP:3

力:8

体力:5

俊敏:2

器用:10

運:6

魔力:2

――――――――――

●装備

武器:聖剣ファルフレイム

頭:なし

体:なし

腰:なし

腕:なし

足:なし

その他:羞恥心(薄れ気味)

――――――――――

状態:ドラゴン恐怖症Lv5 火炎恐怖症Lv5 露出の快感Lv2 ←New!

――――――――――

習得スキル

・召喚者特性 ・初級魔法 ・異世界の知識

――――――――――

習得魔法

・ステータス確認 

・火魔法Lv1 ・水魔法Lv1 ・風魔法Lv1 ・土魔法Lv1

★★★★★★★★★★

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