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ギャルゲー世界に殺される  作者: 塚上
王子様ヒロイン

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第十七話 勘違いと思惑

 誰でも気軽に利用出来るのがファミレスのはずなんだが、何とも言えない緊張感を肌で感じてしまう。

 偽物カップルにその監視をする者、そして彼ら含めて監視する俺。三大勢力の構図に突如として乱入してきた幼馴染ヒロイン。どうなってんだ。


「白瀬は何をしてたの? 予定ないって言ってたけど……」


 ジト目で俺を責めてくるのはピンク髪がトレードマークの幼馴染ヒロイン――赤嶺桜である。今この場に一番相応しくない人物だろう。ここには隠すべき秘密が多すぎる。


「急にできたんだ。ずっと引きこもってるのも身体に悪いだろ?」


「ふ〜ん……」


 言い訳っぽくなってしまうのは気のせいか。俺にある後ろめたさが自然と滲み出ているのかもしれない。


 正直言って今の俺はダブルスパイ? みたいなものだ。赤嶺には幼馴染との関係を推しておきながら、青宮には恋人役に主人公を推薦してる。両方に良い顔をする風見鶏状態である。無論、それが間違っているとは思わない。ハーレムルートを目指すなら決して誤った選択ではないだろう……ないのだが、タイミングが悪かった。好感度稼ぎが進んでいない状況でこれをやるのは悪手。ジェラシー効果を狙うならもう少し先じゃないと成り立たない。


「赤嶺さんは買い物とか?」


「休日にこっちに来る機会がないから来てみた」


 話題を逸らそうとしたがまだ疑われているらしい。俺が何かを隠している感じが伝わっているのかもしれない。女の人って妙に勘が鋭い時があるからな。


『もしもし白瀬君? とりあえず普通に食事でいいかな?』


 急に俺の指令が途絶えたからか、主人公から確認の連絡が入る。……不味いな。デート中の二人の存在がバレるのもダメ。デートが失敗するのもダメ。何よりこの段階で赤嶺と青宮を接触させたくない。基本的に仲が悪いんだよ二人は。そもそもの相性が良くないんだろうな(ゲーム情報)。


『聞こえるかクロ。アカに見つかってしまった。シロはこれより戦線を離脱する。アオの事は頼んだ』


『⁉︎』


 両方のケアは俺には無理だ。青宮ルートが台無しになる前に赤嶺を連れて離れたほうがいい。主人公と王子様ヒロインだけでは不安だが、原作ではそもそも白瀬フォローなんてなかったんだ。きっと大丈夫だ。


「……ねえ? 何やってるの? そのイヤホンマイクは何? 誰かと通話でもしてるの?」


 し、しまった。こっそり通話したはずなんだが、しっかりとバレている。


「気のせいじゃないか? イヤホンマイクは俺のトレードマークだろ?」


「何言ってるの? ……なんか怪しいわね。……じー」


 何だよイヤホンマイクがトレードマークって。例えモブキャラでもそんな設定嫌すぎる。

 俺から店内へ視線を移す赤嶺。彼女の視界に一瞬入ったであろう女学院の不審者をスルーしてついに捉えられてしまう。


「――え? 亜樹斗と……青宮さん? 何で」


 終わった。バレちゃった。これどう説明すればいいんだよ。事情を全て話せばいいんだろうが、青宮は今回の偽恋人に関することは公にはしたくない……当たり前だ。さすがに勝手にプライベートを話すわけにもいかないし。かといって二人は()()本物じゃない。下手な嘘は後々響く。


「……そう、これがあなたの言っていたことなのね」


「言っていたこと?」


「亜樹斗も高校生――気になる女子ができたってことね!」


 ……なんか盛大に勘違いしていらっしゃる。赤嶺にしては珍しく目を輝かせているな。そこは何よあの女! とキレてほしかったのだが。


「でも青宮さんか……いきなりハードル高くないかしら?」


 そりぁ三大美女(安達談)なんだからハードルは滅茶苦茶高いだろう。それにギャルゲーのヒロインなのだ。本来なら平凡男子が近寄ることすら出来ない相手……だが黒津君は『星君』の主人公なのだ。彼なら対等に渡り合える。


「何となく分かってきたわ。偶然デートの約束を取り付けた亜樹斗だったけど、経験がないから不安になったと」


「そ、そうなのか?」


 全然分かってないわ。確かに不安にはなってたけど、デートは亜樹斗君が申し込んだわけじゃない。どちらかと言うと俺が勝手に申し込んでたわ。


「そのイヤホンで指示をしてるのね」


 変に察しがいいな! 

 赤嶺に「んっ」っと手を差し出される。これはスマホとイヤホンマイクを寄越せという意味だろう。……もうどうとでもなれ。幼馴染ヒロインが乱入した時点で作戦は壊滅してるんだ。もう知らん。……どうでもいいが、この世界にカンタ君はいるのだろうか。


『もしもし……聞こえる亜樹斗?』


『⁉︎ さ、桜ッ⁉︎ 何で桜の声が……』


 イヤホンの片側は俺にも装着されている。恋人みたいで凄く嫌なんだが。


『キョロキョロしない。青宮さんにバレたらどうするのよ』


『え、えッ?? 何がどうなってるの?』


 黒津君と俺の視線が重なるが、俺はお手上げポーズを取ることしか出来ない。シロはアカにやられたのだ。

 変に勘違いしている赤嶺だが、そもそも考えてみてほしい。デート中常に片耳イヤホンを装着して時折小声で会話している男がいたとしたら……普通に考えておかしい。青宮は気付かないんじゃなくて全てを知っているから成り立っているに過ぎない。気付いてないのはストーカー凛子氏のみである。


『初デートでファミレスは論外。少し背伸びしてる感が伝わる方がいいのよ』


『は、はぁ……?』


『間抜けな返事をしない! もっとキリッとしないと彼女の隣にはいれないわよ』


 熱血指導である。全部嘘なのに。

 主人公からすれば訳の変わらない状況だろう。指示役の白瀬が何故か幼馴染に交代していて、怒りながら頓珍漢なことを言ってくるのだ……もう俺帰ろうかな。今日のくだりは一旦なかったことで。


『とりあえず食事を終えたら挽回よ。私のプラン通りに動くこと……分かった?』


『はい……よろしくお願いします』


 口早に指示を出す赤嶺。このショッピングモールに入っているテナントや地形を把握しているのか澱みなくデートプランを提示する……何でこんなに詳しいんだ? まるで自分が予定していたデートのような口振りだな。




****




 ファミレスでの食事が終わりボク達はショッピングモール内を歩いていた。挙動不審になった黒津君をフォローする為に食事に切り替える指示を出したのは彼だとは分かるけど、それ以降の黒津君の様子はおかしかった。

 指示に対して遠慮がないというか、少し反抗するような態度を時折見せていた。何かが変だと思いファミレス内を見渡すと彼女がいた……黒津君の幼馴染の赤嶺さん。最近彼の近くでよく目にするように、彼と同じ席についていた。


「なるほどね……」


 困った顔をする彼の表情からして、変に解釈されているのだろう。熱心に指示を出す赤嶺さんの様子からしてボク達の関係に誤解が生じていることが分かる。騙されてほしい凛子ではなく、黒津君の幼馴染がまんまと釣れてしまったと。


「あ、あのお店とかどうかな? スタイリッシュな感じが青宮さんに似合っていると思うけど」


「そうだね……」


 赤嶺さんの指示であろう提案をしてくる黒津君。

 シンプルでモノトーンな家具や小物を集めたお店。普段王子と呼ばれるボクにはああいった男性が好むような物が趣味なんだと思われがち。でも実際は違う。ボクは水色とかピンクの可愛い物が好きなんだ。……イメージと望まれる姿を守る為に演じてきただけで。それが嫌で新しい一歩を踏み出したんだ。


「でも、ボクの趣味とは少し違うかな?」


「え、えッ⁉︎ そう、なんだ……」


 ボク達の後ろにはこちらを凝視する凛子に、鬼軍曹のように指示を出す赤嶺さん。そして、作戦の失敗を憂う白瀬雪都。……ずるいよね、嘆く姿も絵になるんだから。キミはもう少し周りを気にした方がいい。女子から視線を集めていることに気付いてないでしょ? 今日の主役はボク達なのにキミの方が目立ってる……でもそこがいい。


「そろそろ起承転結、締めくくりかな?」


「え? どういう意味? ――ちょっと桜うるさいよ。そんなに早口で捲し立てられても分からないよ」


 小声で口喧嘩を始めてしまう黒津君と赤嶺さん。……うん、やっぱりキミ達二人の方がお似合いだよ。この関係は悪いけど今日で清算しよう。そして、舞台の外で他人事のようにこちらを見ている観客のキミ。本来の予定通り、ボクの隣に立ってもらうよ。


「冷様! 説明してください!」


 ちょうど来る頃だと思ったよ凛子。

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