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ギャルゲー世界に殺される  作者: 塚上
バッドエンド

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第一話 愚者のエピローグ

 グラウンドで精を出す運動部達の声が聞こえる。対照的に誰もいない静かな校舎。毎度お馴染みの空き教室には夕陽が差し込めていた。……いかにも青春っぽい光景。ここから新たな物語が始まるのではないかと傍観者なら錯覚していたかもしれない。――だが残念なことにこれから始まるのは修羅場に近く、傍観者どころか思いっきり主要人物になってしまったゴミが一人。

 

 こんなはずじゃなかった。大抵のことならこなせる憑依先()なら上手くいくはずだったのに。何を間違えたのだろうか。何がいけなかったのか……いや、まだだ。まだ終わっていない。想定し得た悪い結末ではあるが、最悪ではない。正直言って無茶苦茶だけど、もうこれしかない。モブキャラの俺にはこれが限界で最善だった。仕方なかったんだよ。


「……どういう意味? 言ってることが分からないんだけど」


 幼馴染ヒロインが浮かべる表情は怒り。モブキャラの俺に隠すことなく怒りをぶつけている……それも当然か。こんなことを言われてしまえば普通は怒るし、何言ってんだお前ってなるのが当然。……でもいいだろ? お前は最高のお馴染み主人公と結ばれるんだから。もっと笑えよ、ありがとうって喜べよ。誰がここまでお膳立てしてやったと思ってんだ。


「どうしてボクなの? 二人の他にも女の子は沢山いるよ」


 困惑するのは王子様ヒロイン。王子様でヒロインって何だよって話だが、ここはギャルゲーの世界だから僕っ子ヒロインがいても何ら不思議ではない。中学時代までずっと女子校で王子様扱いされていたイケメン女子高生。……お前は言ってたよな? 王子様って呼ばれるのが嫌だったと。普通の女の子として青春を送りたいと。良かったな。これで願いが叶うんだから。


「……ちゃんと理由を話してください。でないと何も分かりません」


 今にも泣き出してしまいそうな陽キャの一軍女子。見た目は明るく勉強も出来て、男子人気抜群な優等生は高校デビューの産物だった。外見と内見のミスマッチを本人は気にしているが、そのギャップが良いと一気に一軍まで駆け上がれたラッキーガール。……お前はいいよな。何もしなくても周りが助けてくれて。――だから俺のことも助けてくれよ。


亜樹斗(あぎと)……黒津(くろつ)と付き合えって――何よ?」


(さくら)ちゃんだけじゃなくてボク達も?」


「仰られている意味が分かりません」


 三人の女子が一人の男子と付き合うという意味不明な状況にそれを懇願するモブキャラ()。……本当に意味不明だな。頭がおかしくなっているとしか思えないが、俺は至って正常である。誰もが俺と同じ立場ならきっと同様の選択をしただろう……いや、他の奴なら失敗しなかったかもしれないな。


「…………大丈夫だ。きっと上手くいく。お前達仲良いじゃないか」


「ねえ? それ本気で言ってるの?」


 激おこ幼馴染ヒロイン。今頃鬼の形相なのかもしれないが、生憎俺の視界には何も映らない。冷え切った無機質な床を目に懇願することが俺の仕事だからな。……情けない限りだ。十以上歳の離れた子供に土下座してるんだぜ。いや違うな。自分の為に恥もプライドも捨て去れる俺はかっこいい大人だろ。


「一人ずつ告白、複数OKならそれはそれで良し……だって? 何かのゲームかな?」


 厳密には誰でもいいから、一人のヒロインが主人公と結ばれればそれでいい。ハーレムエンドでも問題はない。――誰とも結ばれないノーマルエンドさえなければ後はどうでもいい。好きにしてくれ。


「……最低でも始業式まで関係を維持してほしい。それに何の意味があるのですか?」


 意味。意味ならある。俺が死なない。それ以上でも以下でもない。モブキャラに憑依してからの一年間、俺がずっと頑張ってきたことだ。――お前達が頭の悪いラブコメをやってる間に俺はずっと頑張ってきたんだよ。何も知らない癖に俺を否定するなよ。


「せめて理由を教えてください」


「……無理だ。何も言えない」


「でもお願いは聞いて欲しいと」


「そうだ」


「そのお願いが黒津君と付き合うことなの?」


「それ以上の説明は出来そうにない」


 お前達の誰かが主人公と付き合わないと、始業式前の春休みで俺が死ぬと。こう説明出来たらどれだけ良かったか。具体的なことを話せるならば、結果は違ったのかもしれない……けど、仕方ないじゃないか。俺だって詳細は知らないんだから。ノーマルエンドのエンディング中に白瀬(しらせ)が死んだって情報が流れるだけなんだよ。何だよこのクソゲーは。


「なぁ、俺を助けてくれよ」


 小さく呟いた俺の言葉は誰の耳にも届かないだろう。この世界は主人公とヒロイン達の物語なのだから。よく分からない謎のモブキャラには冷たく救いのない喜劇なのだから。


「私達はもちろん、黒津に対しても失礼、いえ最低よ」


「そもそも彼がそれを受け入れるとは思えないけどね」


「黒津さんは誠実な方です。……貴方のお友達じゃないですか」


 何とでも言え。自分の命以上に大切な物なんてあるわけないだろ。自分を犠牲に誰かを助けるとか頭がイカれてるとしか思えないな。……そもそも、この世界に救いを求めてる奴なんていないんだ。だってこの世界はギャルゲーなんだから。世界観が違う。理不尽な死に直面してるのは白瀬()だけなんだよ。


 夕陽は少しずつ黒くなる。もう直き日没、つまりは下校時間が迫っている。それでもヒロイン達の答えは出そうになかった。

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