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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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◆添島恵美◆


 朝の桑名駅は、思ったより人が多かった。


 通勤客。学生。

 キューブガーデンに向かうハンター。

 そして――


「あ」


 遥が、先に気付いた。


 改札の向こう。

 見慣れた姿。


 多紀君。


 昨日と同じ、少し気の抜けた歩き方。


 ――今だ。


 私達は、言葉を交わさなかった。

 目配せだけで十分だった。


「彰斗!」


 玲子が声を掛けた瞬間、全員で距離を詰める。


「え? 添島さん? みんな?」


 状況を理解する前に。


「行こっ」


「え?」


「いいから!」


 両腕を玲子と遥が掴み、真名が背中を押して、方向転換。


「ちょ、ちょっと!?」


 多紀君の抵抗は、駅前の看板の前で止まる。


 『歌活』

 朝8時から営業中

 


「……え?」


 困惑する彼を、私達は迷いなく個室へ放り込んだ。





 ソファに座らされた多紀君は、完全に観念した顔だった。


「……昨日の続き、ですよね」


「分かってるなら話が早いです」


 私が腕を組む。


「説明不足」


「情報過多」


「理解不能」


「そして」


 玲子が指を突きつける。


「私達、モヤモヤしたまま一晩越しました!」


「すみません!」


 即、謝罪。


 いい反応です。


「じゃあ、再尋問開始」


「再って言いました!?」




「まず、これ」


 私はスマホを操作し、画面を彼に向ける。


★【アメリカ】

■ ジョシュア・クライヴ 28歳

Lv105(魔導)


■ マリアン・ホルスト 30歳

Lv102(金剛)


★【ヨーロッパ】

■ ハインリヒ・フォーゲル 40歳

Lv104(武王)


■ エレーネ・フィオレンティーナ 35歳

Lv102(錬金)


★【日本】

■ 東円寺 慶 43歳

Lv102(剣王)


■ 北条 紗耶香 35歳

Lv100(光女)



「今、人類が到達してるそれぞれの最高レベルです」


 多紀君の眉が、わずかに動く。


「日本だと、東円寺さんがトップなんだ」


 そして、私は彼を見る。


「多紀君。

 昨日はそこまで理解できなかったけど……」


 一瞬、言葉に詰まる。


「レベル100超えたら、称号変わるんだよね?」


「はい」


「その辺りの詳しい話と……」


 視線が泳ぐ。


「……その……あと……」


 声が小さくなる。


「眷属になるにあたって、何か儀式的なこととか、あるの?

 それと、イレーザさんて、どんな人なの?」


 沈黙。


 そして。


「……え?」


 多紀君は、首を傾げていた。


「えっと……まず、魔眼の話からしますね」




「魔眼の基本からです」


 真面目な声。


 淡々と説明が始まる。


●初級

 魔力が視える


●中級

 魔力が詳しく分かる

 弱い魔物が逃げる


「で、レベル100」


「うんうん」


「称号が『真眼』に変わります」


●上級

 魔力の流れが視える

 精神耐性アップ

 魔力そのものの構造解析


●真眼

 眼が金色になります

 魔力を掴む

 注入する

 奪う

 魔素を取り込む


「……掴む?」


 玲子が小さく首を傾げる。


 正直、私も分からなかった。


 でも、これは今はいい。




「次、眷属の話!」


 弥生が前のめり。


「変な儀式!」


「怪しい契約!」


「キス!」


「血!」


「指輪!」


「ないです」


 即答。


「え?」


「巨大スライムを倒すために選ばれて。

 神器もらって。

 後から聞いたら、その時点で眷属化してたそうです」


「……え、無断契約?」


「そうなりますね」


「怖っ!?」



 ――儀式なし。


 空気が、少し緩む。



「で、スライムを倒したら」


 彰斗は、淡々と続ける。


「大量の経験値が入って、レベルが194に」


「……はい?」


「初日の、家に帰る前の出来事です」


 私達は、しばらく言葉を失った。





「あと……イレーザさん、ですよね?」


 話題が変わる。


「イレーザさんは」


 彰斗は、少しだけ柔らかい表情になる。


「銀髪のストレートロングで、背が高く、180センチくらいあります」


「き、綺麗な人なの?]


玲子が 更に訊ねる。


「はい。凄く綺麗な人です」


 空気が揺れた。


「姿勢や仕草も綺麗でした」


「……」


「優しいお姉さん、って感じです」




 ――ダメだ。


 別の意味で、耐えられない。


 眷属。

 女性。

 優しいお姉さん。


(恋愛に発展するの……?)


 でも。


 誰も、それ以上は聞かなかった。


 今は、まだ。


 聞けない。


 私達は、そういう事にした。




「……とりあえず」


 私が締める。


「今日はこれで勘弁します」


「ありがとうございます……」


「でも」


 全員で、じっと見る。


「次、なにかあったら説明必須だから」


「はいっ!」


 素直。


 そこが、ずるい。


◆安藤将司宅◆


安藤 「呼び出して悪かったな」

東円寺「いえ、それで?」

安藤 「まずはこいつを見てくれるか」



東円寺「多紀彰斗か。面白い子ですね」

安藤 「あぁ。それとこの子達もだ」

東円寺「はい。こんな狩り方、誰もしませんでしたよね」

安藤 「俺達の時は、全てが未知だったからな。

    今のように情報が揃った頃には、魔眼に対する扱いがな」

東円寺「魔眼の索敵の有用性は変わらないはずですが……

安藤 「誰が広めたかしらんが、これはしっかりと認識を改めさせないとな」

東円寺「新種ですね?」

安藤 「そうだ。機械に頼った索敵だと遅すぎる。そして見逃す。

    それ以前に、低ランクの者達はその機械すら持っていない」

東円寺「これはむしろ、ダンジョンの方が安全ですよね?」

安藤 「あぁ。ダンジョンの魔物には変化がないようだ」

東円寺「フィールドに出る者達へは、どう対応させますか?」

安藤 「魔眼の同行。もしくは、Bランク以上の戦闘職の同行だろうな。

    ギルド側からも、低ランク区画の監視体制を増やすつもりだ。

    現地を含めてな」

東円寺「妥当な案ですね」





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