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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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「あなた達、落ち着いたところで申し訳ないんだけど、多紀彰斗さん。

 少しお話を聞かせてもらってもいいかしら?

 一度、面識があったこと、覚えていますか? 聞き取り課の三宅です」


「はい。覚えています。彼女達も同席でいいですか?」


「えぇ、問題ありません」


 添島さん達は、席に座っている僕の後ろへと移動し、

 テーブルを挟んで対面に三宅さん。

 そして、その後ろに先程の皆さんが立っている。


「先程はありがとうね。

 うちの橘が転んだ時は、正直どうしたものかと悩んでいたのだけど、

 あなた達の機転のおかげで、致命傷になるような事態を避けることができました。

 本当にありがとう」


 三宅さんが頭を下げると同時に、後ろの皆さんも頭を下げる。


「いえ! あっ……はい!

 そう言っていただけると助かります。

 正直、僕達が出なくても、なんとかなっていたんじゃないかと……」


「いや、流石にあの数だ。

 顔、腕、足、その辺りを同時に攻められたら、

 あっという間に引き千切られていた。俺は死を悟ったぞ」


 最後まで殿を務めて残っていた人が、真剣な顔で僕を見ている。


 外国のラグビー選手のような体格に、厳つい顔。

 ちょっと怖い。

 最後に笑顔を見せてはいたけど、正直、笑うと別の意味で怖い顔になっている。


「そうね。

 多紀彰斗さんがあと数秒遅れていたら、橘を蹴り飛ばしていたところです」


「えぇ!?」


 盛大に転んでいた男性――橘さんが声を上げる。


「狼に手足を引き千切られるより、

 私の蹴りで複雑骨折で済めば、ホーリーで治るでしょ?」


 あ……この人、武闘の人だった。

 休憩所まで蹴り飛ばすってことか……。

 そういえば、戦闘中は凄い声だったな。


「……ええと。では、そろそろ本題に入りましょう」


 三宅さんが軽く咳払いをして、空気を切り替える。


「多紀彰斗さんは、ギルド職員の間では、

 かなりの有名人になっているということはご存じですか?」


「……いえ」


 東円寺さんとの、あれかな?


「通称、“スライムの森に魔物が戻ってきた現象”を調べるにあたって、

 多紀彰斗さんの異常な狩り速度と移動距離がデータとして拾い上げられました。

 そして、添島さん達が納めているポーションの立役者だということまで」


「あー……。

 それで東円寺さんが、僕の一日の魔石量を知っていたんですね。

 あれ、ちょっと気になってたんです」


「では、本題に入ります。

 多紀彰斗さんの現在のレベルはいくつですか?

 後ろの彼女達は、先のブラックボーンボアの件で、

 レベル20から25程度だと予測していますが、

 多紀彰斗さんは、あの場には居なかった。

 そして行動履歴を確認したところ、こちらの見解では、

 レベル10前後だろう、という話でした」


「はい。レベル10です」


「分かりました。

 では、あの戦闘時における身のこなしについて、

 なにか特別な点はありますか?」


「知っての通り、僕のスライム狩りは、走ることに特化していました。

 そして、あの森の樹々を避けるためのステップ移動で、

 筋力、持久力、瞬発力、精神力のステータスが、かなり高くなりました。

 それで、今では、ここのウルフ程度なら躱して倒すことが出来ます」


「なるほど。回避に特化したステータス構成、というわけですね。

 分かりました。

 ちなみに、それぞれの数値を教えてもらってもよろしいですか?」


「はい。うろ覚えですが、

 今言った4つが350前後。

 強度と魔力が250くらいでした」


 レベル1の基礎値と成長率を共に最高数値にして、

 そこに行動補正の数値も足した数字が、だいたいこれくらいになる。

 これで、一般的な感覚で言えば、レベル20は越えているはずだ。


「なるほど。質問は以上です。ありがとうございました。

 それと最後に、あのダークネスウルフの魔石の分配ですが、

 こちらで手続きを済ませておきますので、

 明日にでも通帳の確認をお願いします。

 何かあれば、ギルド受付で“聞き取り課に繋いでほしい”と伝えてもらえれば、

 こちらで対応しますので。

 よろしくお願いします」


「あっ、はい。こちらこそ、よろしくお願いします」


 三宅さんは笑顔で締め括り、

 皆さんを休憩所の外まで見送った後――

 緊張していた僕は、大きく溜め息をついていた。


「よかったぁ……。

 追及、何もなかったですね」


「はぁ……。そういえば、私達の時も、あんな感じだったわね」


 添島さんも溜め息をつき、少し疲れた表情を見せる。


「恵美、飯にしないか。

 落ち着いたら、腹が減ってきた」


 大豊さんも疲れた表情を見せてから、ふっと笑う。


「そうね。

 食事を済ませてから……今日はもう、ポーション作りに移動しましょうか。

 多紀君、魔石はいくつ集まりました?」


「82個ですね。

 なので、足りない分は在庫から補填になります」


「あと……18個ね。

 帰りは西の停留所を使って、

 その道中で少し狩っていきましょうか。

 皆、それでいい?」


「いいよー」

「おけー」

「はーい」

「りょうかい」


「多紀君も、それでいいよね?」


「はい」


 ――ありがとうございます。

 そう言葉を続けそうになったのを、僕は堪えた。


 この判断は、チームとしての判断だと思ったから。


◆案件六課◆


早川 「この件、上はどう判断するんでしょうね」

三宅 「観察対象にはなるとおもいますが、ギルドにとっては無害ですからね」

橘  「彼の話が本当だとしても、将来有望な逸材には変わりません。まあ、嘘でしょうけど」

三宅 「ステータスの虚偽報告は規約違反ではないですから。

    そもそも、他人が知り得ない自己申告の情報に、真偽を問う意味がありません」

岩倉 「あれ絶対! 将来はハーレム人生ですよね。羨ましい」

三宅 「あなたは本当に、その思考さえなければ、あなたも将来有望な一人だったのでしょうに。

    一課の課長が嘆いていましたよ」

岩倉 「えぇ! じゃあ僕がこの課に配属されたのって……」

三宅 「誰も引き入れ無かったからです。

    職場の女性にちょっかいを掛けると判っている者を採用するとでも?」

早川 「だからうちの職場には、女性が配属されないのか」

三宅 「あんたのその顔も、その理由よ」

早川 「うぉい! ……マジかよ」


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