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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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「多紀君、状況は判っていますか?」


 テーブル席に座る僕の対面には添島さんが座り、僕達の周りを他の4人が取り囲むように立っている。


 うん。状況は判っている。

 でも、理解は出来ていない。


 ダークネスウルフ討伐後、助けた彼らは僕に対して何も聞いてこなかった。

 だから、常識の範囲内の行動だったのだと、少し安心していた。


 それから、困惑する添島さん達に向かって、


「話したい事があるのですが、ここではあれなので、狩りに戻りませんか?

 あっ、昼食がまだでしたね。じゃあ、食べ終わってからで」


 と、なんとか笑顔を取り繕って言った結果――

 この状況である。


 重苦しい雰囲気を無くしたかったんだけどな……。


「やっぱり……狩りの再開は無理です……よね?」

「ええ。私達もちょっと疲れていますし、気持ちの整理に少し時間が要ります。

 でも、それよりも――あの人達が許してくれると思いますか?」

「えっと……好意的な視線でしたし、大丈夫なのでは?

 最初の突撃以外は、力も常識内に収まるようセーブしたのが良かったみたいです」


 添島さんの笑顔が怖い……。


 視線を逸らすと、大豊さんと豊賀さんと目が合った。

 二人は、ほぼ同時に小さく首を横に振る。


「多紀君?」


 ――これ、たぶん説教モードだ。


「はい」


「あの人達は『聞き取り課』という部署の人達だという事、覚えていますよね。

 だから、何かしら話を聞いてくると思います。

 現に、2人ほど扉の所で休憩しているでしょう?」


 確かに、女性と男性が一人。

 どこかで見た事があると思ったら、あの時の人達だった。


「何か聞かれても、子供の頃から鍛えた自力です、って言えば通りませんか?

 実際、黎明期には武術の達人だった覚醒者達が、他と一線を画す実力を見せていたと聞きます。

 あと、ステータス上昇には個人差があって、ギルドでは成長率って呼んでいるんですが、

 それを一番高い伸び率だと言えば、いけると思います」


 添島さんは、こめかみを押さえた。

 うん。こんな添島さんを見るのは初めてだ。


「多紀君は、それで押し通すつもりなんですね?」

「はい。あっ、皆さんにはちゃんと説明しますよ」


 添島さん達には、レベルの事を話すつもりだ。

 眷属の事は……イレーザさんに聞いてからかな。


「それなら……まあ、良しとしましょう」

「ありがとうございます」

「それで、どうしてこの状況になっているのか、判りますか?」

「えっ!?」


 ――あれ? 終わらない?


「はぁ……力を隠す理由があって隠していたのでしょう?

 それなら、もう少しやりようがあったと思うのだけど?」


「えっ!?」


 実力を隠していた事自体については、怒っていない?


「今更言っても遅いけど……

 多分、私と真名のサポートに徹していても助けられたんじゃないかな?

 あの場面で、多紀君一人で飛び出さなくても、私達三人で道を作れば、

 あの人達は自力で辿り着けたはずよ。

 こっちには弥生のヒールもあったんだから」


「え……でも、皆さんをあれ以上怖い思いをさせたくなくて……」


「『僕を信じて。絶対に守るから一緒に行こう』」


「えっ?」


「あの時、そう言ってくれていたら、私は多紀君の言葉を信じましたよ」

「私も信じた」


 悲しそうな笑みを浮かべる添島さんの後に、大豊さんの言葉が続いた。


「あっ……はい。すみませんでした」


 結局、何もかもが独り善がりだった。

 力を隠した事も、力を見せようとした事も。


 そうだった――

 彼女達は、僕の言葉をいつも信じてくれていた。

 相談もしてくれた。


 でも、僕は――


「浮かれてた……」


 そう。僕は浮かれていた。

 魔眼を手に入れた事。眷属になった事。

 在り得ない力を得た事。


 そして、イレーザさん達から色々な話を聞いて、

 気付かない内に、心の奥で優越感を抱いていた事。


 それに、今、気付いた。


「多紀君?」

「彰斗」


 悔しかった。惨めだった。

 きっと、その感情が顔に出ていたのだろう。


「はい、ありがとうございます」

「えっ? なに?」


 鹿屋さんが代表して、僕の言葉の意味を尋ねてくる。


「皆さんのパーティーに、僕をチームとして受け入れてくれた事への感謝です。

 こんなにも恵まれていた事を、今知りました。ありがとうございます」


 自分で言っていても、重い言葉だとは判っていた。

 それでも、伝えたかった。


「今頃気付いたんですか?

 私達五人と一緒に行動していたら、私達の学校なら校舎裏に呼ばれますよ」


 豊賀さんが、嬉しそうというより、可笑しそうに笑う。


「それは確かに呼ばれますね。

 皆さんを好きな男子達に囲まれそうです」


 場を和ませる豊賀さんの言葉に、僕も乗っかる事にした。


「今の彰斗なら、余裕で撃退でしょ」

「まあ、100人来ても負ける気はしないです」

「私達5人で100人?

 ちょっと少なすぎない?」

「じゃあ1000人で」


 いつもの軽い空気感。

 その中で、僕は自然と笑みを浮かべる事が出来ていた。


シャニア「まさか、彰斗の所にも出てたなんて。まあ、あの程度の魔物なら問題ないか」

イレーザ「魔素上昇の変化で、更なる魔物が出現。そう結論付けですか?」

シャニア「そうね。調律庭園の魔物は自然発生だから、想定できる現象だったって事ね」

イレーザ「魔物の種類は?」

シャニア「これからね。一応、リネア様には報告するけど、魔物の種類自体は経過報告になるわね」

イレーザ「そうですね。彰斗には私から伝えておきます」

シャニア「常に魔眼を使っているから奇襲される事もないし、

     彰斗自体がそもそも強いんだから大丈夫でしょ」

イレーザ「彰斗の守る対象が被害に遭った時に、私が伝えてなかったって知ってしまったら……」

シャニア「ヒビが入る。なるほどね」


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