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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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◆早川 将◆


「道を作りました! 皆さん、早く!」


 それを理解するのに、俺は数秒の時間を要した。


 子供と呼べる年頃の少年――いや、少女か?

 俺達と避難所を結ぶその場所に、悠然と立っていたのだ。


 囲まれていたはずのその地点には、さっきまでウルフが群がっていた。

 それなのに今は、避難所の扉がはっきりと視認できる。


「走れぇ!」


 俺は叫んだ。

 まだウルフ共は襲い掛かってきているが、そんなものは俺が止めればいい。


「岩倉! 橘を背負って走れぇ!」


 避難所の入口では、少女達が群がるウルフを近付けまいと、必死に応戦している。


「姉御! あっちを頼む!」

「任せな!」


 姉御達も即座に状況を理解し、避難所へと走り出す。

 距離はおよそ40メートル。数秒もあれば辿り着けるだろう。


「助かった! 君も走れ!」

「いえ、殲滅します!」


 その瞳には、決死の覚悟ではない。

 何かを決め切った者だけが宿す、紫に光る眼差しがあった。


「男なら、有言実行!」

「はい!」


 姉御達は避難所に辿り着き、扉の前でウルフ共を叩き潰している。


 俺と少年の周囲にも、絶え間なくウルフが襲い掛かってくるが――

 それ以上の速度で、少年はウルフを斬り飛ばしていく。


 一人では物量的に無理だった。

 だが、少年は言葉通り、次々とウルフを消していった。




「来ましたね。あれは何ですか?」


 唸り声を上げながら、こちらへと迫るダークネスウルフ。


「こいつらを呼び出していた親玉ってところだ。

 レベル60のダークネスウルフ。新顔だ」

「なるほど。では、これは不測の事態だったということですね」

「ああ。巻き込んで悪かったな。後は俺達に任せてくれるか」

「はい。……あっ、いえ」


 少年は一瞬だけ言葉を選び、


「あれの経験値を、彼女達にも分配してもらえませんか? ダメでしょうか」


 この状況でそれを言うか。

 だが――面白い。


「そうだな。彼女達にも当然、その権利はある。

 なら、少し下がって対処しよう。俺達には心強い仲間がいる」


 扉の前では、すべてのウルフを倒し切ったパーティーメンバーが、こちらへ走って来ていた。


「止まれ! そっちへ行く。

 あいつは扉の前で倒す。今は、その子らも同じチームだ」


 俺の意図を察した姉御が足を止め、仲間達を制止する。


「君も避難所の前へ。仲間の所へ行け」

「はい。あれの魔核の位置は、通常のウルフと同じ部位のようです」

「そこは例に洩れず、か。情報感謝する」


 まだ油断できない状況にもかかわらず、少年の表情には余裕があった。


「頑張ってください」

「ああ、任せろ」


 戻っていく少年の足音を聞きながら、

 俺は背を避難所に向けたまま、ゆっくりと後退した。


「なにがなにやら……」

「あ、姉さん」


 横に並んだ姉御へ、視線を一つ返す。


「まあ、色々と俺達案件な気はするが……それはこいつを倒してからだぁ!

 おらぁっ!」

「そういうこったぁ!」


 ダークネスウルフが見せる獰猛な飛び掛かりを、

 俺は盾スキル《シールドバッシュ》で弾き返し、

 姉御がその顔面へ拳を叩き込む。


「デバフ入りました」


 橘の声と同時に、体が軽くなる感覚が走った。


 ――これは聖女のバフか。

 ありがたい。




「あ”ぁぁぁ~……動いた後は、やっぱこれだな!」


 俺は仲間達と共に、避難所兼休憩所のテーブルで、

 自販機で買ったコーラを一気にあおっていた。


 レベル60のダークネスウルフ。

 召喚ウルフによる物量攻撃さえなければ、

 ウルフダンジョンのボスと大差はない。


 ――要するに、楽勝だ。


 少年の希望通り、彼女達の目の前で討伐を完了させた。


「早川君。課長への報告は、私の方から行いました。

 統括からの指示も聞いてあります」


 現場指揮は俺だったが、

 ここから先は案件六課の仕事になると踏み、

 課長代理の三宅さんに諸々を丸投げした。


「姉さん、ありがとうございます。

 それで、統括からは?」

「命の恩人なのだから、丁重に扱え、そしていつも通りに――です」

「まあ、そうでしょうね」

「それで……この状況は、何ですか?」

「いや……俺に聞かれても、な?」


 休憩室に並ぶ十ほどのテーブルの隅。

 そこでは少年が、少女5人に囲まれ、

 まるで取り調べを受けているかのような状況になっていた。


岩倉 「橘、お前、あれの中に割り込めるか?」

橘  「はい。案件六課の仕事であれば、問題なく入れます」

岩倉 「お前凄いな。体力は無いくせに、精神力だけは高いよな?

    もしかしてステータスもそんな感じか?」

橘  「まあ、否定はしません。学者ですから

    それよりも、いつも個人情報を聞き出す先輩の方が精神力高いとおもいますけど?」

岩倉 「バカいえ! さすがの俺でも、あの状況に突撃する勇気はないぞ

    というか、あれに突撃出来るのはバカだけだろ」

橘  「先輩が空気読めるなんて初めて知りました」

岩倉 「これは危機管理能力だ。俺は空気は読まん!」

橘  「……覚えておきます」



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