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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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◆シャニア◆


 モニターに映っているのは、地上の一角。

 新しい上着を羽織った彰斗が、仲間達と並んで歩いている姿だった。


 袖口を引き、肩を軽く回し、着心地を確かめるような仕草。

 その一つ一つが楽しそうで、私は思わず目を細める。


 ――ああ、本当に「男の子」ね。


「着心地、悪くなさそうね」


 そう声をかけると、隣のイレーザは視線をモニターから外さずに答えた。


「はい。動作阻害は最小限です。本人も違和感は少ないかと」


 彰斗達の向かう先は、バスターミナル。

 ごく普通の移動時間。けれど、イレーザは一瞬たりとも目を離さない。


「……イレーザ。彰斗に着せる“本命の装備”、もう決めたの?」


「はい。こちらです」


 指先の動きと同時に、空中へと投影される装備案。


 白を基調に、金糸で文様が施された軍服。

 背中一面に刻まれた、イレーザ自身の紋章。

 そして――目の周りだけを覆う、白い仮面。


「やっぱり、それにするのね」


 白と金。

 それは女神に属する証であり、他の存在が身に纏うことを禁じられた色。


「騎士装束や聖者装束も候補にありましたが……」

「でも、彰斗にはそれが一番しっくり来る」


 そう言うと、イレーザは小さく頷いた。


「……仮面、いる?」

「本人の要望です。素性を隠したいと」

「まあ……そうよね。でも、顔全部隠す仮面の方がよくない?」

「それでは、彰斗の表情が見えません」


 即答だった。


「……本当に、こんな子だったのね」


 半ば呆れ、半ば苦笑しながら、私は再びモニターへと視線を戻す。


 その時だった。


 彰斗達の進路に、男が五人。

 距離感がおかしい。囲むような立ち位置。


「知り合い……ではなさそうね」


 彰斗の警戒した表情。

 一緒にいる少女達の空気の変化。


 それだけで、十分だった。


「はい」


 イレーザの声が、わずかに低くなる。


 調律庭園監視用モニターには、音声は届かない。

 それでも、何が起きているかは分かる。


 一人の男が、彰斗の肩に腕を回し、揺さぶった。


「……やめなさいよ」


 思わず、声が漏れる。


 次の瞬間、イレーザの魔力が鋭く跳ね上がった。

 私は即座に、その肩に手を置く。


「あそこは、私達の世界じゃないのよ」

「……分かっています。でも」


 眷属とは、半身。

 自分が侮辱されたように感じるのも、無理はない。


 モニターの中で、彰斗が一歩――いや、半歩前に出た。


 怯えたように見える仕草。

 力で振り払わず、距離を取る。


 けれど、その立ち位置ははっきりしていた。

 仲間達を、背中に庇う形。


 ――弱者を演じている。


 それでも、逃げてはいない。


 男がさらに踏み込もうとした瞬間、

 彰斗の足運びが、ほんの一瞬だけ変わった。


 力は使っていない。

 それでも、相手の進路が自然に逸れる。


「……ふふ」


 思わず、笑ってしまった。


 次に前へ出たのは、少女達だった。


 一人が一歩前に出る。

 背筋を伸ばし、逃げのない姿勢で。


 一人が彰斗の横に並ぶ。

 小さな体で、けれど視線は鋭く、魔力が微かに揺れる。


 3人が後ろを固める。

 退路を確保しつつ、仲間を囲む布陣。


 言葉は聞こえない。

 でも、はっきりと伝わってくる。


 ――拒絶。

 ――警告。

 ――これ以上、踏み込むなという意思。


 男達は次第に居心地悪そうな顔になり、

 最後には捨て台詞を残して離れていった。


 その背中を見送りながら、

 イレーザの魔力が、ゆっくりと落ち着いていく。


「……はぁ」


 小さく息を吐く声。


「頑張ってるじゃない」

「はい」


 イレーザは、静かに答えた。


「あの子は……弱く見せる事を選んでいます」


 それがどれほど難しく、危うい選択か。

 私は、よく知っている。


「……だから《ヴェインエッジ》を渡したのよ」

「それは? どういう事ですか?」

「結果は、どうなるか分からないから、今は教えてあげない」

「なんですかそれは……はぁ」


 あんな玩具を一度でも使えば――

 力を隠して、抑えて、我慢するなんて。


 きっと、男の子には無理。


「全力で楽しんでくれる方が、いいでしょう?」


 イレーザの視線は、再びモニターの中の彰斗へ。


 仲間達と歩く、その背中を――

 まるで誇らしそうに、見つめながら。


◆バスターミナル前◆


大谷修司(ふうぅ。……もう一人前のハンターだな)

鷹森蓮菜「おまたせ。何その顔? 悟りでも開いたの?」

大谷修司「なっ! おまえなぁ~。まあいい。出発するぞ」

鷹森蓮菜「判ったわよ。今日は無理いってごめんなさいね」

大谷修司「いや、俺もスライム狩りに専念出来るからお互い様だろ

     取り分は半分。しっかりと護衛を頼むぞ」

鷹森蓮菜「もちろんよ」

    (まさか、ほんとうに手伝ってくれるなんて思わなかったわ。

     なに? 保奈美からのメッセージ? 

保奈美 『吉報を待つ』

鷹森蓮菜(うっさいわね!)

大谷修司「おい! 携帯握り締めてどうした?」

鷹森蓮菜「なんでもないのよ。大谷さんは気にしなくていいから」

大谷修司「……おう。そうか」



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