081
翌日。
僕達が報告した「ウルフを見かけなかった」件は想定通り、ウルフリーダーの出現と断定されていた。
そして、すでにウルフの巣へと討伐に向かったハンター達がいることを、討伐受付のお姉さんから伝えられた。
「それじゃあ、昨日と変わらず『5の六』でお願いします」
「はい。お気をつけてください」
添島さんが今日の狩り申請を済ませ、僕達は売店へと向かった。
◆
普段からウルフリーダーを狩り対象にしているパーティーが、情報を得れば向かうのは必然だ。
「まあ、そうなりますよね」
「でも、調べる切っ掛けにはなったから良しとしましょう」
この時間は、今ではちょっとしたミーティングタイムになっている。
最後尾を歩く僕の隣に、添島さんが並ぶのが最近の定位置だった。
「動画、見た感想はどうでした?」
「えぇ。多紀君の言う通り、動き自体はウルフとあまり変わらないようでした。
解説でも、大きさの違いによる攻撃範囲と衝撃、それに殺傷能力が高いだけだから、落ち着いて対処すればいいと言ってましたね」
「はい。速度自体はほとんど変わらないそうなので、大豊さんなら避ける意識を持てば問題ないと思います。
あとは、実際に防具を付けた状態での動きですね」
「そうね」
◆
ロビーの隣、ギルド直営の売店は、今日もハンター達で賑わっていた。
入口付近にはポーション類や弁当などの食料品が並び、奥へ進むにつれて鞄や衣類、
さらに進むとダンジョン内で宿泊するためのキャンプ用品コーナーがある。
そこを抜けると、一気にファンタジー色が濃くなる。
抜き身の剣が飾られた武器コーナー、その先に防具コーナー。
まずは、前衛を務める大豊さんの装備選びからだった。
「多紀君。やっぱり、この辺りになるのかな?」
「はい。基本はプロテクターを上から装着するタイプですね」
僕達が見ているのは軽装備コーナーのマネキン。
胸当て(ブレストプレート)、肩当て(ポールトロン)、前腕部、
腰回り(フォールド)、脛当て(グリーブ)の五点セット。
軽装備らしく薄く、保護面積も控えめで、それぞれ樹脂製のベルトで固定する仕様だった。
マネキンは、ポリカーボネート製、合成皮革、鋼製の三体が並び、
さらに奥にはデザイン性の高いものが続いている。
「とりあえず、この辺りを試してみるよ」
大豊さんは、飾り気のないシンプルな一式を選び取った。
「私も、それで試してみるね」
前衛サブアタッカーの添島さんも、同じ物を手に取る。
「じゃあ、私達はローブ系を見に行きます」
「そうね。じゃあ、試着室に行ってきます。多紀君、あとはお願い」
豊賀さんと一枝さんの会話に、僕は「はい」と返し、
大豊さんと添島さんを見送った。
「ローブはあっちね!」
鹿屋さんが僕の腕を取って引っ張り、僕はそのまま彼女達の後ろを付いて行く。
◆
ローブコーナーを眺めている途中、僕達は自然と奥へと足を運んでいた。
――そこで、見覚えのある光景が現れる。
フリルの多い魔法少女風の衣装。
金属装飾を取り入れた甲冑ドレス。
どう見ても実戦用というより、演出全振りの装備群。
「……あ」
思わず、声が漏れた。
「なにこれ……?」
鹿屋さんが目を丸くする。
「うそでしょ?」
「ありますよ。こういうの」
「えっ、知ってたの?」
「はい。噂では聞いてましたけど……実物を見ると、さすがに」
「ほんとにあるんだ……」
鹿屋さんは、魔法少女風の衣装を指差して、ちらりと僕を見る。
「彰斗って、こういうの好き?」
「えっ? 僕?」
「うん」
一瞬考えてから、正直な感想が口をついた。
「日葵が見たら、着たいって言いそうです」
「あー……それ、分かる。
確かに、似合うかも」
鹿屋さんが納得したように頷く。
「――二人とも、何してるの?」
少し離れた場所から、豊賀さんの声が飛んできた。
「ローブ、選びますよ」
「はーい」
呼ばれて振り返った僕は、ふと値札に目をやる。
「……50万円もするのか」
思わず零れたその一言に、
鹿屋さんは一瞬きょとんとしてから、くすっと笑った。
「気になっただけですからね!」
「はーい!」
鹿屋さんは何事もなかったように僕の腕を取って歩き出す。
◆煌装乙女舎◆
社長「は! 今、男の娘の衣裳を思い付いたんだけど!」
専務「またですか……だれも買わないものに予算は出せませんよ。
ただでさえ、うちの商品、需要少ないんですからね。
あと、拘り過ぎて高いし!」
社長「妥協するくらいなら、辞める!」
専務「はいはい。
今月締め切りの、Prism Drop様のデザインの進捗は?」
社長「今回も最高よ。それでね……」
専務「予算交渉ですね。それで今回はどれくらい足りないのですか?」
社長「材料費だけで10万ほど……」
専務「ほんと……毎回微妙なラインを攻めますよね」
社長「むーちゃんよろしく!」
専務「はいはい」




