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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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 カラオケ店に、揃いのスポーツウェアでの来店。

 キューブガーデンが現れてから、開発が怒涛の如く進んだ桑名駅周辺では、

 僕達の恰好がハンターのそれだという事は周知されている。

 まあ、紋章隠しの手袋をしている時点で、私服でもハンターだと気付かれてしまうんだけど――

 そして、女の子5人に男一人という状況は、ハンターでなくても嫉妬と興味の眼を向けられることになる。


「彰斗、どうしたの?」

「いや、背中に感じる視線にちょっと……」

「まだ気になるんだ」

「そりゃね」


 基本、なんの理由もない移動だけの時は、僕は最後尾から付いて行くことになる。

 ちょっとだけ距離を空けてしまうのも、そんな僕の心境の現れでもあり、

 それに気づいている添島さん達も、何も言わない。

 でも、そんな僕の横には、必ず鹿屋さんが並んでいる。


「彰斗さ」


「うん?」


「変な視線、私も嫌だからさ。……だから一緒にいるの」


 さらっと言うけど、言葉の端に少しだけ熱がある。


「……ありがとう」


「どういたしまして」


 鹿屋さんはそれ以上、何も言わない。

 その代わり、僕の腕へと手を回し、恋人感を見せる。


「これで、ハーレムだとは思われないでしょ」


「えっ? ん? そう……なるのか」


「でしょ!」



 カラオケルームに入ると、鹿屋さんは当たり前のように僕の隣へ腰を下ろした。

 さっきまで腕を回していた手も、特に離れる様子はない。


 ちらりと周囲を見ると、添島さん達は誰一人としてその事に触れない。

 もう見慣れた光景、というやつなのだろう。


 正直、少しだけ気恥ずかしい。

 でも、それ以上に――嫌ではなかった。


「じゃあ、飲み物揃ったところで……」


 添島さんがリーダーらしく、軽く手を叩いて話を切り出す。


「明日からのハンター活動について、確認しておきましょう」


 その言葉に、皆の表情が自然と引き締まる。


「まず、マナベリーの代金だけど……多紀君が出す、でいいのよね?」


「はい。皆さんのレベル上げを優先したいですし、その方が効率もいいので」


 一瞬、遠慮がちな空気が流れたけど、


「多紀君がそこまで考えてくれてるなら、私達は甘えます」


 一枝さんがそう言ってくれて、全員が頷いた。


 少しだけ、胸の奥が軽くなる。


「次にポーションの数ね」


 添島さんが続ける。


「1日100本は今まで通り。だけど――」

「ハイヒール50本、ハイマナヒール50本、ですね」


 僕が先に言うと、


「ギルドからの要請もあるし、聖女のホーリーヒール治療を優先する方向で。

 でも、ハイヒールを求める人も確実にいるから、完全には切らないってことだよね」


 添島さんが補足し、全員一致で決まる。


「余った魔石についてはどうする?」


「100を超えた分はハイヒールポーションにして、全部ストックにしましょう。

 自分達用と、家族や知人に渡す分とかも考えて」


「もう私達は八本ずつ持ってるけど、余裕はあった方がいいよね」

「賛成」


 話は淀みなく進んでいく。


「それで明日だけど、売店で防具を購入して、ホブゴブリンで試す。

 ……で、いいよね?」


「「「「はーい」」」」


 添島さんが少しだけ声のトーンを落とす。


「それで問題なければ、次の目標をウルフリーダーと、ゴブリンリーダーの集団。

 推奨はDランクだけど、いいかな?」


 大豊さん達が静かに頷く。


「多紀君も、それで良い?」

「はい。フィールド狩りならランク制限はありませんし、

 受付で注意はされますけど……討伐を止められる事はありません」

「今の私達でも、大丈夫なのよね?」

「はい。慌てなければ、勝てます。

 あと、ギルドが出している公式動画を見ると、予習になると思います」

「そうね。帰ったら見ましょう」


「「「「はーい!」」」」


「じゃあ、決まりね」


 添島さんが小さく息を吐いて、表情を緩める。


「……真面目な話はここまで!」


 そう言って、急に明るい声を出す。


「せっかくカラオケに来たんだから、歌おう!」


「そうよね!」

 鹿屋さんが即座に分厚い本を手に取る。


「彰斗、最初なに歌う?」

「えっ、僕ですか?」


 そう言いながら、僕の前に本を差し出してくる。


「実は……カラオケで歌った事がなくて」

「そうなの? じゃあ、どんな歌が好き?」


 にっと笑う鹿屋さんに、僕はアニメソングのいくつかを伝えた。


「日葵ちゃん?」

「うん。そう」


 そんなやり取りをしながら、部屋に音楽が流れ始める。

 最初は添島さんが歌うらしい。


「恵美がいつも先陣を切るのよ。で、弥生は聞き役」

「聞き役? ってあるの?」

「うん。歌が上手じゃない子もいるでしょ。でも一緒に居たいじゃない。

 だから聞き役」

「なるほど」


「彰斗は、私と一緒に歌ってみる?」

「これなら、私も知っている曲だから」


 それは僕が伝えたアニメソングの一つだった。

 数人の女性が歌う、魔法少女アニメの歌で、日葵もよく歌っていた曲。


「男の僕が歌っていいものなの?」

「全然! それにこれは、男性が歌っても変じゃない歌詞だし」

「そっか。じゃあ、一緒にお願いします」

「任せて!」


 異物感を感じる事もなく、

 この場所にいる時間が、

 ちゃんと“居場所”になっている――


 そんな事を、僕はぼんやりと感じていた。


玲子「楽しかったぁ!」

弥生「多紀君、初々しかったですね」

恵美「人前で歌うのが初めてなら、ああなるよね」

遥 「でも、楽しそうでした」

真名「玲子が引っ張ってたのが良かったんだろう」

恵美「そうね。……ほんとそうよね」

真名「どうかしたのか?」

恵美「多紀君って、玲子の気持ち気付いているよね?」

弥生「初対面の妹さんにバレてましたからね」

玲子「うっ……」

恵美「それで、あの距離感は凄くない?」

真名「確かになぁ~。玲子を自分から特別扱いしない。

   でも、ちゃんと特別感を玲子に見せている」

遥 「……お兄ちゃんっぽい」

  「「「それだ!」」」

玲子「なんでよ!」


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