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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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 新しい武器の練習は後日。という事で、次の日の日曜日は日葵と買い物に出掛けた。


「お兄ちゃん、暑いね」

 

 場所は駅近くのショッピングモール。アパートから10分程歩く距離にあり、母さんが働いているスーパーが隣にある。


 僕と日葵は、ゴルフのキャディーが使っている大きな傘の下、

 軽自動車が一台通れるだけの裏道を、のんびりと歩いて行く。


「着いたら、まずはアイス食べて休憩かな」

「やったぁ!」


 買い物の目的は、僕と日葵の靴とか服とか。僕に関しては、トレイルシューズの買い替えがメイン。

 これまでのセール品じゃなくて、節約しなくて良いので、性能と強度重視で選ぶ事にした。


◆ 

「彰ちゃん~!」


 聞き覚えのある声に、日葵の警戒度が一気に上昇し、

 声のする方へと番犬の如く身構えた。


 視界に映るのは、幼馴染みの美奈のお姉さん。白崎智世さん。


 軽いステップで日葵の前まで来ると、

 サッと身を翻し、日葵の横をすり抜ける。


 そう、智世さんの目的は僕。

 毎回、突き飛ばす勢いで僕を抱き締める。

 というか、抱き上げる。


「あぁー! またまけたぁー!」


「はぁ……ごめんね日葵ちゃん」


 悔しがる日葵へと、いつものように声を掛ける美奈までがセットになっている。

 これが僕達と白崎姉妹との恒例の挨拶だった。



「お姉ちゃん。そろそろ彰斗を離しなさい。それから彰斗も抵抗しなさい」


「彰ちゃんは、私からの愛情を真摯に受け止めてくれているだけ。抵抗なんてするわけないでしょ」


「そうだけどさ。でも暑いんだから、その辺にしてよ。見てるこっちが暑苦しいんだから」


 美奈の言う通り、この時期の智世さんの抱擁は暑いがまず先に感情として現れる。そして息苦しい。

 これが冬だと、暖かくて、ちょっと嬉しい気分になるのだけど。


「仕方がないわね」


 そう言って僕を解放してくれた智世さんが、今度は日葵へと手を差し出す。


 日葵は躊躇う事なく手を繋ぐ。

「智お姉ちゃん。勉強はいいの?」

「うん。今日は日葵ちゃんと遊ぶ為に頑張って来たから大丈夫。日葵ちゃんに似合う可愛い服を沢山選んであげるね」

「うん!」


 手を繋いで歩き出した日葵と智世さんの後を、僕と美奈が並んで付いて行く。


「ほんと……お姉ちゃんは私が可愛くなくなったから、日葵ちゃんをターゲットにして」


「美奈もだろ。」

「まあ……そうなんだけどね」


 小学校6年生の春までの美奈は、今の日葵と同じ位、小さくて可愛い見た目だった。

 だけどそこから急激に成長して、中学に入る頃には僕よりも背が高く、美人とか綺麗とか周囲から言われるようになっていた。

 美奈はフリルとかの可愛い服が好きで、それが似合わなくなってからは、日葵を着飾る事で、ストレスを発散している。

 まあ、そのおかげで、美奈の可愛い服やリボンなどを貰っていたので、日葵的には嬉しい状況だった。



「ねぇ彰斗。」

「ん?」

「このままずっと一緒に……なんて事が、現実的じゃないのは判っているの。だから少しでも長く一緒にいたいの。だけど彰斗はハンターになって前に進んでる。彰斗の夢が叶って私も嬉しい。でもね……それと同時に不安が一杯なの。彰斗はどこかに行ってしまうの?」


 美奈の言葉に、僕は返す言葉が見つからなかった。

 春には桑名へと引っ越しする。まだ確定じゃないからそれを伝える事が出来ない。

 

 僕は、美奈に別れの挨拶をするのが嫌なのだと――

 その時、初めて気付いた。


 桑名と鈴鹿。距離的には電車で30分だから会おうと思えば会える。でも頻繁に会う事は出来なくなる。


「……もしかして、高校には行かないの?」


 僕からの返事がない事で、美奈が確かめるように不安を口にする。


「いや、母さんから高校には行きなさいって言われている。僕がハンター続ける条件としてね。

 だから桑名にあるどこかの高校に行こうと思っている。

 それで……日葵の中学も桑名にして、引っ越す予定なんだ。」


 勢いに任せて、僕は僕達の未来の話を伝えた。


「そっか……桑名かぁ~。色々なハンター科があるし、彰斗なら推薦で受かるんだよね」

「たぶん……でもハンター科は受けないつもり」

「そうなの?」

「うん。ハンター科はどこでも、授業中に得た収入は学校側になるんだ。そこには夏休み中の合宿等も含まれていてね。僕にはそれがデメリットにしかならない。それに、僕の魔眼はランクを上げる必要がないから、ランクアップを目指す授業になんの意味も無いんだよ」

「そうなんだ……分かった。ちゃんと決まったら教えてね。高校も」

「うん。分かった」


智世「今日は楽しかったなぁ~。日葵ちゃんで癒されたわ」

美奈「お姉ちゃん、大学受験、名古屋だったよね?」

智世「そうよ。どうしたの急に?」

美奈「家から通うんだよね?」

智世「そりゃね。アパート代とか考えたら、通学費用の方が断然安いし」

美奈「彰斗達は桑名に引っ越す予定らしいの。ううん、たぶんそうなる」

智世「えっ……そうなの?」

美奈「うん。それでね……彰斗が受ける高校に私も行っていいかな?通えるよね?」

智世「まあ、通えると思うけど……美奈はそれでいいの? 自分の進路の事だよ? って、その顔はもう決めてるみたいね」

美奈「うん。後悔したくないから」

智世「そうね。頑張りなさい。お姉ちゃんは美奈を応援するからね。まぁ……お父さん達も応援すると思うけど」

美奈「かな~?」

智世「あんな家族思いの良い子。誰が反対するのよ。それに、ハンターは高収入職業なのよ」

美奈「日葵ちゃん言ってたね。30万とか40万とか。彰斗は苦笑いしながら肯定してたし……どんどん先にいっちゃう」

智世「大丈夫。彰ちゃんの帰る場所は日葵ちゃんだから。日葵ちゃんを悲しませるような生き方にはならないでしょ。だから大丈夫。日葵ちゃんと一緒に帰りを待っていれば良いだけよ」

美奈「うん。そうだよね」



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