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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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新しい武器を手に入れたら、次に思い浮かぶ事。


 ――試したい。


 これはもう、仕方がないと思う。


 手にした《ヴェインエッジ》を眺めながら、浮かれた気持ちであれこれ想像していた僕は、その思考の流れで、ふと気付いてしまった。


「……あれ?」


 そして、次の瞬間。


「これ……どこで試せばいいんだ?」


 思わず、声に出していた。


 異世界の武器は、地上に持って行けない。

 仮に持ち出せたとしても、どこで振り回すつもりだという話になる。


 通常形態――細身のレイピアなら、見た目は地味だ。

 地上でも訓練用の剣と言い張れなくはない。


 でも。


 問題は、展開形態。

 鎖刃、多節剣。


 あれを扱えなければ、この武器の意味がない。


 そんな事を考えながら、小さく溜息を吐いた瞬間だった。


「どこがいい?」


 背後から、やけに明るい声。


「なんなら、ここの三層で試す?」


 振り返ると、そこには満面の笑みのシャニアさん。


「えっ……」


 嫌な予感が、背筋を駆け上がる。


 そして次の瞬間。


「いけません」


 僕の前に、すっとイレーザさんが立ち塞がった。


「いきなりの実戦で、巨人は危なすぎます」


 きっぱりとした口調。


「それに、この《ヴェインエッジ》は、集団戦を切り抜ける為に選んだ武器ですよね。

 でしたら、練習場所は別にあります」


 そう言って、イレーザさんはステータス画面のような情報板デジタルボードを展開した。


「レベル60ダンジョン――《血戦営塞けっせんえいさい》です」


「けっせん……えいさい?」


「ええ。ゴブリンとオークが主な敵。

 人型魔物による集団戦と統率を学ばせる為のダンジョンです」


 説明を聞きながら、思い出す。


 5層までは、レベル40相当のゴブリンが通路を徘徊し、部屋ではホブゴブリンが指揮を執る。

 6層以降は、オークの群れ。


 僕達は、通称「オークダンジョン」と呼んでいる場所だ。


「確かに……練習には良さそうですね」


 連携。

 数。

 奇襲。


 鎖刃を振るうには、これ以上ない環境だ。


 ……ただ。


「人が沢山いると思いますし、

 目撃されたら、色々と面倒な事になりませんか?」


 正直な疑問を口にすると、イレーザさんは、にこりと微笑んだ。


「それなら問題ありません。

 彰斗だと分からないように、変装すればいいだけですから」


「変装……?」


「はい。装備一式、私が用意しますね」


 その笑顔の意味を、僕はなんとなく察してしまった。


(あ、これ……

 絶対、普通じゃないやつだ。しかもイレーザさんの趣味全開のやつだ)


 その時。


「そろそろ、彰斗は帰宅する時間ね」


 シャニアさんが、あっさりと言った。


「今日はここまでにしましょ。

 続きは、また今度」


「……はい」


 正直、少しほっとした自分がいた。


 そのまま、シャニアさんの権限による転移で、神域管理室へと戻る。



「彰斗」


 イレーザさんが、僕に声を掛ける。


「その《ヴェインエッジ》ですが、

 扱いに慣れるまでは、私が預かっておきます。

 反射的に、展開形態へ移行してしまう可能性も、ゼロではありませんからね」


 その言葉に、僕は素直に頷いた。


 正直に言えば――

 もし言われなくても、お願いしようと思っていた。


 誰かに奪われる可能性。

 紛失する可能性。


 万が一でも、そんな事が起きたら目も当てられない。


「はい。お願いします」


 そう答えると、イレーザさんは安心したように微笑んだ。


 こうして。


 僕の新しい武器、《ヴェインエッジ》は。

 次のソロ活動の日――《血戦営塞》で、その真価を試される事になる……とおもう。


シャニア「今日みたいに、着いて行く気?」

イレーザ「はい。彰斗は私の眷属ですから」

シャニア「でも、あのダンジョンで彰斗が怪我をする確率なんてゼロよ。過保護過ぎない?」

イレーザ「顔に傷でも付いたらどうするんですか」

シャニア「……あなた、エクストラヒールまで使えるでしょ。というより、そもそも掠り傷すら付かないわよ!」

イレーザ「……いいじゃないですか。彰斗と遊びたいのはシャニアさんだけじゃないんですから」

シャニア「分かったわよ。ところでさ」

イレーザ「はい」

シャニア「彰斗、原初巨人の魔石の事、完全に忘れてるんだけど……部屋に放置したままなんだけど。あなた取りに行く?」

イレーザ「……私もそうですけど、シャニアさんも忘れていたって事ですよね」

シャニア「まあね~。で、どうするの?」

イレーザ「まあ、彰斗が欲しいと言えば、また倒しに行けば事足りる事ですし、放置で良いと思います」

シャニア「そうね。この様子だと、ボスに到達するまでまだまだ時間がかかりそうだしね」




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