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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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073

◆多紀彰斗◆


 その話を聞かされた瞬間、正直に言えば――

 話が勝手に進んでる! だった。


 シャニアさんは、いつもの調子で腕を組み、当然のように言う。


「だから、武器を取りに行くのよ。今から」


「今から!?」


 更に、驚きの上があった。


 内容自体は、もう察していた。

 さっきまでのやり取りを横で聞いていれば、嫌でも分かる。


 これは、善意だ。

 僕の身を案じての提案で、危険を減らす為の選択。


 理解は、出来る。


 でも――


「転移で、ですか?」


「ええ」


 即答だった。


 僕は一瞬、イレーザさんを見る。

 彼女は、すでに諦めたような表情で、小さく頷いていた。


「……ですよね」


 ため息が出る。


 ここで断れる雰囲気じゃないし、断る理由もない。

 むしろ、安全を考えれば、受け入れるべきなんだろう。


「分かりました。お願いします」


 そう答えると、シャニアさんは満足そうに笑った。


「決まりね」


 その直後。


 視界が、反転した。





 転移が終わった瞬間、思わず息を呑む。


 ――凄い。


 天井は、見上げれば首が痛くなるほどの高さ。

 石造りの太い柱が、規則正しく並び、空間全体が人工的な威圧感を放っている。


 まるで、巨人の為に作られた神殿だ。


「……凄い」


 素直な感想が口を突いて出た。


 イレーザさんが、苦笑する。


「気持ちは分かりますが、油断しないでください」


 僕達が立っているのは、巨大な扉の前。

 この先が、ボス部屋。


 イレーザさんは、一度深呼吸してから、僕を見る。


「彰斗、覚えていますか?」


「はい」


「ここに居るのは、原初巨人プロト・ジャイアント。レベル120。

 物理耐久特化。魔法耐性が高く、魔核は深層部です」


 僕は、しっかりと頷いた。


「本来なら、他の者は命を懸けて挑む相手です」


 イレーザさんは、溜息を吐く。


「ですが……」


 そして、はっきりと言った。


「入ったら、速攻で撃ち抜いてください。それで終わります」


「……」


 あまりにも、あっさりしている。


 僕は、自分の顔が変な笑顔になっているのを自覚しながら、


「はい」


 とだけ答えた。


「では、行きましょう」


 目の前の扉が、ゆっくりと開く。





 ――圧倒的だった。


 部屋の中央に佇む、それは「敵」ではなく、「存在」だった。


 石と筋肉が融合したような巨体。

 視界に収まらないほどの大きさ。

 ただ立っているだけで、空気が震える。


 原初巨人が、こちらを認識した瞬間。


 地鳴りのような咆哮が、空間を揺らした。


 だけど。


 僕は、すでに構えていた。


 神器に弾丸は装填済み。

 真眼を開き、『未来予測』を重ねる。


 見える。


 深層。

 胸部奥、ハッキリと見える魔力の光。


 そこに――


 引き金を引いた。


 乾いた発砲音の後に、確かに聞こえた破壊音。


 次の瞬間、原初巨人の動きが止まり、崩れ落ちる。


 討伐、完了。


「……終わり、ですか」


 自分でやっておいて、少し複雑な気分になる。





 部屋の中央に、宝箱が出現した。


 僕は近づき、蓋を開ける。


「……剣だ」


 中にあったのは、細身のレイピア。

 だけど、どこか普通じゃない。


 その時。


 空間が揺れ、シャニアさんが転移してきた。


「おめでとう、彰斗」


 彼女は、楽しそうに言う。


「それが、あなたの新しい武器」


 僕は、目を見開いた。


「名前は、《ヴェインエッジ》」


 シャニアさんが、剣を軽く掲げる。


「可変式《魔力導管武器》よ」


 次の瞬間。


 剣が、変形した。


 刃が分割され、鎖のように連なり、自在にうねる多節刃へと展開する。


「……っ!」


 声にならない声が出た。


「通常はレイピア。展開すれば中距離制圧用の鎖刃」


 シャニアさんは、得意げだ。


「あなたの魔力制御次第で、性能が変わる。余計な補助はないわ」


 僕は、剣から目を離せなかった。


 ――かっこいい。


 理屈じゃない。

 ただ、純粋に。


「ありがとうございます……!」


 思わず、深く頭を下げる。


 シャニアさんは、満足そうに笑った。


 イレーザさんは、横で頭を抱えていたけれど。


 この時の僕は、間違いなく――


 新しい武器を手に入れた少年そのものだった。


◆クラン〈華燐かりん〉巨神遺構2階◆


南原柚月なんばらゆづき「まさか、ミスリルの剣をこんな事に使うなんて」

西条紫苑さいじょうしおん「勝てば良いのよ! 勝てば」

南原柚月「どこかの悪女が言うセリフよね」

西条紫苑「うるさい。魔道隊! ゴーレムに刺さった剣に向けて一斉攻撃! 撃てぇ!」



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