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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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◆イレーザ◆


 その話題が出た瞬間。

 私は内心で、「ああ、来た」と思った。


「改めて整理しましょう」


 シャニアさんが、いつになく真面目な顔でモニターに映る彰斗を指す。


「多紀彰斗は――

 魔眼を持ち、

 遠距離では神器による対単体必殺が可能。

 近接はレイピア。機動力は高い」


 そこまでは、私も完全に同意だった。


「でもね」


 シャニアさんは腕を組む。


「彼は、生き残れるけど、戦い続けられない」


 私は、思わず口を挟みそうになって、黙った。


「逃げながら戦うのは上手い。

 判断も早い。

 でも――“場を制圧する武器”がない」


 その言葉は、痛いほど的確だった。


 レイピアは優秀だ。

 だが、対大型・連戦・複数制圧には向かない。

 彰斗自身も、それを理解しているはず。


「欲しいのは」


 シャニアさんの声が、少し弾む。


「広範囲を制圧できて

 魔力効率が良くて

 魔眼と相性がよくて

 近接で“連戦”ができる武器」


 ……嫌な単語が、揃い始めた。


「候補としては――」


 指折り数え始めるシャニアさん。


「槍。

 でも取り回しが重い」


 頷く。


「両刃剣。

 彰斗に似合わない」


 その通り。


「斧。

 論外。重すぎ」


 はい。


「鎖武器……これは、ちょっと面白い」


 ――やめてください。


「最終的には」


 シャニアさんが、にこりと笑う。


「可変式近接武器が理想ね」


 この時点で、私の不安が一気に膨れ上がりました。


「そんな物、こちらには無いと思います」


 私は抵抗を試みる。


「だから」


 シャニアさんが、さらっと言った。


「私の褒賞で用意するのよ!」


「待ってください!」


 私は即座に声を上げた。


「それは神代遺物です!」


 神代遺物。

 私が生まれる以前に栄えた古代文明の遺産。

 再現不可能な能力を持つ武器に、魂へと干渉する宝珠。

 当然、数に限りがある。 


「元々、それは彰斗の褒賞候補に入っていました。

 ですが――」


 私は、きちんと説明する。


「褒賞を“分け合う”という選択をした時点で、

 制度上、除外されています」


『無条件では与えられません』

 

 私の脳に直接響く静かな声。

 リネア様だった。


『公平性の問題。

 そして――魂への影響』


 シャニアさんは、不満そうに頬を膨らませた。


『理屈は分かるわ。

 でも、必要なのよ』


 ……ああ。


 また始まった。


 この人、納得するまで絶対に止まらない。


『じゃあさ』


 シャニアさんが、突然ひらめいたように言う。


『巨神遺構のボス宝箱なら問題ないわよね?』


 ――最悪だ。


 リネア様が、一瞬黙り込む。


『……条件を確認しましょう。何を入れるつもりですか?』


『可変式《魔力導管武器》。

 名前は――』


 そこで一瞬、間を置き。


『《ヴェインエッジ》』


 その名が口にされた瞬間、

 私は、確信した。


(……ああ、これはもう決まった)


『近接連戦対応。

 通常形態は細身の片手剣。

 展開形態は多節鎖刃。

 魔力導管型で、性能は使用者依存。

 自動攻撃なし。

 派手な付与効果なし。

 その代わり』


 シャニアさんが勝ち誇ったように笑みを浮かべる。


『彰斗の魔力制御が、そのまま性能になる』


 リネア様の、笑いが声が少しだけ聞こえた。


『……面白い選択です』


 その一言で、全てが決まった。


 シャニアさんは、満足げに笑った。


 つまり。


(彰斗を、そこへ連れて行くということ……)


『シャニア』


 リネア様が、淡々と言う。


『あなたは――

 直接転移させる権限を持って、彰斗を飛ばすつもりですね』


「……っ!」


 思わず、息を呑んだ。


『ええ』


 シャニアさんは悪びれない。


『安全な位置にね』


 ここで私は、シャニアさんが全てを計算して、この流れに持って行った事を理解しました。


 私は、必死に考える。


 彰斗は、確かにレベルは異常だ。

 だが、経験は浅い。


 巨人系は、事故死率が高い。

 一撃が致命傷になりやすい。


「……本当に、必要ですか?」


 私は、絞り出すように言った。


 シャニアさんは、即答だった。


「必要よ」


 そして、はっきりと言い切る。


「彰斗は、生き延びるだけじゃ足りない」


 その言葉を聞いた瞬間。


 私は理解してしまった。


(……もう、止められない)


「彰斗は私の眷属です。私も同行します」


リネア   「あの子が、誰かの為になんて……変わりましたね」

アステリオン「あちら側を担当させた事が、正しい結果だったという事です」

リネア   「そうですね。とても楽しそうです。ですが……それがイレーザの眷属だというのがなんとも」

アステリオン「シャニアにも、いつかは巡り会う運命が来ます」

リネア   「だと、良いのですが……」




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