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4章開始(1月25日)にあたって、腕時計端末機の詳細を少し修正しました。
『上部のタブレット部分と、ベルト部分を脱着式に変更。
ベルト部分にGPS機能とバイタルサイン発信機能がある。
タブレットは上着のポケットや専用のホルダーに入れて持ち運ぶのが主流』
このように修正しました。
普段と変わらない時間に、僕はキューブガーデンへ入った。
予約していたケーキ屋で受け取ったミニホールケーキを二種類。
それとは別に、駅のコンビニで買ったスナック菓子をいくつか。
紙袋を両手に下げて、神域管理室へ向かう。
扉を開けると、シャニアさんとイレーザさんが、いつものように待っていた。
「来たわね」
その目が、僕の手元を見る。
「……それ、まさか」
「はい。女神リネア様にお供えしたのと、同じケーキです」
その瞬間、シャニアさんの表情がぱっと明るくなった。
「本当に? あれ、すごく美味しそうだったのよ」
――食べたかったんだ。
内心でそう思いながら、ケーキをテーブルに置く。
いつもの流れなら、イレーザさんが自分用のケーキを僕に分けてくれる。
今回はホールケーキだった事もあり、自然にナイフを手に取った。
「では、半分に――」
「待った」
シャニアさんの声が、それを止める。
「今日は、彰斗は私と遊ぶ為に来たんでしょう?」
「え?」
「だから、私のを分けてあげるわ」
驚く僕とイレーザさん。
「……そうですか」
一瞬だけ目を泳がせたイレーザさんは、すぐに頷いた。
「ほら、彰斗。こっち」
いつもは対面で座っていた、少し大きめの円卓。
シャニアさんは、自分の隣の席を指差す。
戸惑う僕を見て、イレーザさんが小さく微笑った。
『……余程、遊び相手が欲しかったんですね』
そんな心の声が聞こえてきそうだった。
って、イレーザさんの念話だった。
僕は促されるまま、シャニアさんの隣に座った。
◆
「さて、遊びましょう」
取り出されたのは、異世界のボードゲーム。
リバーシに似た盤面だけど、マスは10×10。
石の代わりに、紋章付きの駒を使う。
チェスや将棋のようなものもあったけど、ルールが複雑そうなので却下。
次に出てきたのは、カードゲーム。
1から10までの数字。
属性は火・水・風・土・光・闇の6種類。
合計60枚。ジョーカーのようなかードは無かった。
ポーカー、ダウト、神経衰弱。
遊び方は僕の知っているものとほぼ同じだった。
「じゃあ、これで」
最初はカードゲーム。
細かいルールは、その都度イレーザさんに確認する。
時々、念話で『次、こう動きますけど、どうですか?』と作戦も伝える。
二人がかりでも――
「……うーん」
シャニアさんは、やっぱり強かった。
ただ、一方的ではない。
最後まで勝敗が分からない接戦も何度かあった。
「楽しいわ」
満足そうに笑うシャニアさん。
その表情を見て、僕も少し安心する。
◆
ひと通り遊び終えたところで、僕はリュックから別の袋を取り出した。
「それは?」
「僕の世界のお菓子です」
テーブルに並べていく、日本が誇るスナック菓子やチョコ菓子。
シャニアさんは、迷わず一つを手に取って口に入れる。
「……これは」
少し考えてから、隣の部屋へ。
戻ってきた手には、泡立つ琥珀色の飲み物。
「これが合うわね。彰斗もどう?」
「それ、アルコールじゃ――」
「駄目です」
即座にイレーザさんが止めた。
「彰斗にはまだ早いです」
「あら、そうなの?」
「はい。それに、僕達の世界では、二十歳からしか飲めません。
……あれ? 僕って成長止まってるから、どうなるんだろう?」
「アルコールで体を害するという事はありませんが、やはり最初のお酒は特別の日でなければなりません」
「あぁ……そうだったわね」
イレーザさんの言葉に、残念そうに唇を尖らせるシャニアさん。
(特別な日ってなんだろ?)
「仕事中に飲んでいいんですか?」
素朴な疑問を口にすると、イレーザさんが教えてくれた。
「使徒は、『酔い』という状態異常になりません」
「……なるほど」
(じゃあ、アルコールの意味は?)
「それじゃあ今度、僕達の世界の定番ジュースを持ってきます。もちろん炭酸飲料です」
「いいわね、それ」
シャニアさんの満面の笑みに、イレーザさんが苦笑いを浮かべている。
◆
ふと、視線がメインモニターに向く。
映っているのは、東円寺さん達のダンジョン攻略。
やっぱり、気になる。
「彰斗も、戦ってみたい?」
シャニアさんが言う。
「まあ、彰斗なら神器で一撃なんだけど」
「いえ……」
僕は首を振った。
「経験が浅いですし、何が起こるか分かりません」
それに、と付け加える。
「今の武器は、ボルトアクション式で装填に時間が掛かります。弾も今持っているのは12発分だけです」
「イレーザの与えた神器って……遠距離一撃必殺向けよね」
シャニアさんがイレーザさんを見る。
「魔眼との相性は、これ以上ない選択です」
即答だった。
「……仕方ないわね」
シャニアさんが、ふっと笑う。
「じゃあ、近接連戦用の武器。私がリネア様に頼んであげる」
「えっ?」
「私への褒賞。それにする」
驚く僕に、指を向けて言った。
「その代わり条件よ。これからも私に色々なお菓子を持ってくる事。そして――遊ぶ事」
視線をイレーザさんへ向ける。
彼女は、諦めたように頷いた。
「……問題ありません」
「はい。ありがとうございます」
僕は、素直に頭を下げた。
シャニアさんは、とても満足そうだった。
――やっぱり。
この人は、遊び相手が欲しかっただけなんだと思う。
でも、その笑顔を見ていると、
それでいいんだとも思えた。
(玲子)『私、もう今日の夜に桑名に戻る」
(恵美)『なにかあったのか?』
(玲子)『兄がうざい。』
(恵美)『あー。なるほど』
(遥) 『夏休み。最後の週末どうする?』
(恵美)『どうするとは?』
(弥生)『学生らしい事してないね。って遥と話してたところ』
(玲子)『それ! 私も思ってたやつ』
(恵美)『皆でどこかに遊びに行くって話かな? 良いと思う」
(玲子)『プール! ナガシマのプールいかない!』
(恵美)『確かに。遥と弥生はそのままホテル暮らしだし、ナガシマって行った事ないしね』
(玲子)『じゃあ、遥、弥生。日曜は水着を買いに行こうよ』
(弥生)『はい』
(遥) 『おけ~』
(真名)『居ない間に決まってたか。恵美、私達も桑名に戻る時に、名古屋で水着買うか?」
(恵美)『そうしましょう』
(玲子)『じゃあ、明日は名古屋集合でみんなで水着買いにいかない?」
(弥生)『賛成!』
(恵美)『良いと思う』
(遥) 『おけ~』
(真名)『了解』




